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何もないところから、何かを発見するよろこび
── ちょっと話が富野監督から離れますが、「超時空騎団サザンクロス」(1984年)はどういうキッカケでデザインすることになったのですか? 湖川 「サザンクロス」は確か、「エルガイム」と時期が重なっていました。監督の長谷川(康雄)さんが、キャラクターデザインを頼みに来たんですけど、「とても引き受けられる状態ではないから」と断ったんです。だけど「なんとかやってくれないか」と、長谷川さんがまた来たので、デザインだけ引き受けました。
── 「こんなキャラにしてほしい」というオーダーはありましたか? 湖川 いえ、特にありませんでした。今にして思うと、「エルガイム」は自分のキャラクターではないし、「サザンクロス」の作画監督をやっていればよかった。そうすれば、ビジュアル的には良いものになったはずだから……と、今になって長谷川さんと話しています。
── ご自分でデザインした以上は、作監もやりたいわけですね? 湖川 アニメの世界では宿命といってもいいでしょう。デザインのイメージを、作画で体現させるのは難解ですから。
── 湖川さんといえば、アオリの角度の顔が特徴ですよね。あれが難しいのではありませんか? 湖川 いえ、理解力とデッサン力があれば簡単なんです。ピカチュウだって何だって、アオリのアングルで描けますよ。たまたま、アオリの理論を発見したのが私だったというだけの話であって。「(科学忍者隊)ガッチャマン」(1972年)で原画を描いているとき、気がついたんですよ。(ホワイトボードに描きながら)まず、横顔を描くんです。鼻のてっぺんから線を引くでしょ?
── えっ、そうやって描くんですか? 湖川 まさか、いちいちこんな描き方はしませんよ(笑)。過去にこういう理屈も考えた、という説明のために描いてるんです。自分で納得できないと、画は描けませんから。下唇のくぼみ、眉、首の付け根と線を引っ張っていくと、理屈としてはアオリの絵として間違ってはいないわけです。こういう苦痛から、アオリの描き方を見つけたんです。つまり、まだ誰も見つけてないものを見つけていかないと。すでにあるものだったら、私の理論など無用の長物です。
発見をすることは、とても面白いです。毎日感じていても、気がつかないことがある。若いころは「気がつこう、気がつこう」としていたから、細胞のシナプスが伸びてきたと思うんです。何もないところから何かを見つけないといけないし、いつも自分の見ているところから違うものを引き出せなければ、新しい発想は浮かんでこないんです。発見すること、発想することは楽しい。やっぱり、人生は楽しいほうが良いのですから。もちろん、ヘマもするし失敗もありますよ? しかし、失敗しなければ、良いこともわからないわけだから、失敗を怖れてはいけないんです。
(取材・文/廣田恵介)