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「ザブングル」と「マクロス」、鳥足問題
── 1980年代前半は「超時空要塞マクロス」(1982年)が大人気でしたが、美樹本晴彦さんのキャラクターデザインを意識したりはしましたか? 湖川 いえ、ぜんぜん。だけど、(「マクロス」のチーフディレクターの)石黒昇さんとは仲よくしていました。石黒さんのところに遊びに行ったら、美樹本くんが「サインください」と言ってきたんです。「君だってキャラ描いてるんだから、俺にサイン書いてよ」と言ったら、「私は書けません」と断られてしまって。だから当時、美樹本くんと会ってはいるんです。ちょっと気になるんですけど、「ザブングル」のほうが「マクロス」より先に放送スタートしてますよね?
── 「ザブングル」が1982年2月、「マクロス」が10月です。 湖川 いつも、この話になるんですけど……問題は“鳥足”です。
── ああ、「ザブングル」のウォーカーマシンと「マクロス」のガウォークですね? 湖川 そう、ウォーカーマシンのほうが早いはずなんです。最初、お富さんが描いてきたラフスケッチはガニ股のロボットでした。私の実家では、ずっとニワトリを飼っていて、「なんて素晴らしい足の形なんだろう」と小さいころから見とれていたので、「ガニ股ではなく鳥の足にしよう」と思いついた。それが始まりなんです。「マクロス」より先。
── ウォーカーマシンの最初の何体かは、湖川さんのデザインですね。 湖川 ええ、かなりデザインしましたよ。鳥足メカのプロメウス・タイプは「ロボコップ」に真似されましけどね。デジタルで修復した「スター・ウォーズ」にも、鳥足メカが出てきたでしょ? (ホワイトボードに描きながら)2本足の鳥足メカなら、まさにニワトリで素晴らしい。だけど、象さんみたいな4本足のメカまで鳥足にしちゃあ、いけませんね。重量感が出ない。アメリカのSF映画なんて、みんな鳥足メカばかりでしょ? 真似されるのはうれしいけど、もっと新しい発想を出せばいいのに。人間って弱いものですね。
── メカの話になりましたが、「聖戦士ダンバイン」のオーラバトラーもデザインされていますよね。最初に出てきたダンバインやビランビーは宮武一貴さんでしたが……。 湖川 宮武のデザインは、とても出来がよくて、彼の考えた世界観は大好きなんです。私が後から考えたオーラバトラーは彼の世界観とはちょっと違ってしまったかもしれないけど、盾の中にソードをしまったり、いろんなアイデアを出しました。
── バストールという、鳥足のオーラバトラーもいましたね。 湖川 そりゃあ、鳥足は出しますよ。人型のロボットに鳥足は似合わないかと思ったんですけど、「ザブングル」で少し描いてみたら、割といけるとわかりましたからね。
── メカでいうと、「伝説巨神イデオン」の劇場版「THE IDEON 発動篇」(1982年)のザンザ・ルブも、湖川さんのデザインですね。色が真っ白で、鮮烈でした。 湖川 デザインは好きですよ。「イデオン」は色監督も兼ねていたんですけど、色は真っ白にしたくなかったんです。だけど、ソロ側で色を使いすぎてしまって、バッフ・クラン側の色数が足りなくなってしまった。「ごめんね」という気持ちで、仕方なくベースを白にしました。
── 富野監督に申しわけない気持ちだったんですね? 湖川 いいえ、出版業界と創作業界に対してです。お富さんは、本当に絵が好きな人なんです。自分でも描きますし。
── 富野監督自ら、原画を描いていると聞いたことがあります。本当ですか? 湖川 はい、描いてますよ。「イデオン」のオープニングも描いてます。メカが変形するカットですけど、それらしく描いてました。だって、お富さんは私のところに趣味で描いた絵を見せに来るんです。私のところに持ってこられても……ねえ? あまり悪く言うのもかわいそうだから、1回だけ誉めてあげたんです。とてもよろこんでました。だから、お富さんは絵が上手いってことにしておきましょう。
安彦(良和)さんは、きれいにかわいくイラストを描くでしょう? 私はきれいに描くのがイヤで、思うようにズバッと描きたいタイプなんです。それで、お富さんから「湖川の画は汚い」とか「湖川の画は売れない」と言われたこともあります。彼とは、あと1本でよいから、一緒にやりたいんですけどね。