春アニメ「アトム ザ・ビギニング」、原作漫画家・カサハラテツローが語る「鉄腕アトム」と本作の関係

2017年02月16日 19:000

――天馬とお茶の水の関係についてはどう考えていますか?

カサハラ 天馬はひどい人だと思われていますよね。確かにアトムを「成長しない」とサーカスに売ったのはひどいですが、その後を見ると、ずっとアトムを見守っているんですよ。だから根っからの悪いヤツではないんだろうと思っています。一方、お茶の水は、あの姿形が、いろんな作品に受け継がれて“優しい博士”の典型みたいな印象ですよね。でも原作を読むと、お茶の水のほうがラジカルなんですよ。そもそも「ロボットは人間と同じだ」と主張していることも大胆だし、さらにはアトムにお父さんとお母さんを作っちゃう。アトムに「人間と同じなんだ」といいながら、いざという時は、アトムにヒーローとして行動することを求める。アトムが人間とロボットの間で引き裂かれるのは、お茶の水が原因じゃないかと思うんですよ。そういう意味で2人ともそれぞれ分裂しているんです。だから、どこかで重なり合いながらも、どこかで相容れないところがあって、それがふたりの人生を分けていくのかなと思います。

自分達が開発したA10シリーズに愛称を付けるお茶の水に対して、正式名称で呼ぶ天馬。2人のロボット開発に対する考え方の違いが現れている。


――そのほかのキャラクターはどうやって生まれたのでしょうか。


カサハラ 堤茂理也は、天馬とお茶の水のライバルというところから発想しました。それで、手塚マンガのライバルといえば誰だろうと考えた時に、「ブラックジャック」のドクターキリコだなと。だから、ドクターキリコが若くなったイメージでデザインしています。逆に、妹の茂斗子は、「三つ目がとおる」の和登さんというオーダーがありました。でも、和登さんは「グラマーだけど制服を着た中学生」というところが一番の特徴で、大人になってしまうと、和登さんらしくは見えない。だから最終的には、和登さんから離したイメージでデザインしましたね。

天馬とお茶の水の通う練馬大学の主席研究生の堤茂理也は表向きは穏やかな好青年だが……。

 

茂理也の妹の茂斗子はお茶の水に興味を持ち、第7研究室に近づく。


蘭については、連載第1回がせっかくカラーなんだから女性キャラクターを描いたほうがいいだろう、という意見があって登場させました(笑)。高校生、ショートカット、メガネ、低身長という記号の塊にする方向で考えてみて、「これは妹キャラだな」と思ったので、お茶の水の妹に設定したんです。それが後に、ストーリーを作る時に一番動かしやすいキャラクターになるとは予想だにしませんでした。そういう意味では、蘭は生まれるべくして生まれるキャラだったなと。今はそう思っています。


お茶の水の妹、蘭。ロボット研究を行う兄と同じく機械いじりが得意。A106との関係にも注目。



――アニメの現場にもかなり深く関わったそうですね。

カサハラ そうですね。本読み(脚本打ち合わせ)にほとんど参加させていただいただけでなく、キャラクターとメカの設定には、すごく細かく意見を出させていただきました。制作現場からするとただ迷惑な原作者だったと思うんですけれど、メカ関係は分解図まで描いて説明しました。だからアニメはそれがどういうふうに動くのか楽しみです。原作を描いた後「こうすればもっとよかった」と思った部分もアニメに反映させてもらったりもしています。だから、原作未読の方が楽しめるのはもちろん、原作既読の方でも「あれ、このシーンこうだっけ?」なんていう具合に注視してもらえればうれしいです。

画像一覧

関連作品

アトム ザ・ビギニング

アトム ザ・ビギニング

放送日: 2017年4月15日~   制作会社: OLM/プロダクションI.G/Signal-MD
キャスト: 中村悠一、寺島拓篤、井上雄貴、櫻井孝宏、小松未可子、佐倉綾音、河西健吾、飛田展男、南條愛乃
(C) 手塚プロダクション・ゆうきまさみ・カサハラテツロー・HERO’S/アトム ザ・ビギニング製作委員会

関連シリーズ

ログイン/会員登録をしてこのニュースにコメントしよう!

※記事中に記載の税込価格については記事掲載時のものとなります。税率の変更にともない、変更される場合がありますのでご注意ください。