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マンガと映像での媒体の違いを意識させないアニメ化の方法とは
──シリーズ構成はどのように組んでいきましたか? 鈴木 制作がスタートしたときは原作が4巻までしか出ていなかったので、どこまでを12本のアニメで作るかを考えて、そこからブレイクダウンして1話あたりの分量を決めていきました。12話の間での抑揚と、1話あたりの抑揚の2つを考えていきました。
──場合によっては原作のある1話の途中で切って、アニメは次の話数に続くということもありました。 鈴木 そうですね。フィルムとして1話ごとに盛り上がるように作らなくてはいけないので、朝ドラのように前の話数の風呂敷をたたみ、後半で事件が起こって次の話数に続くみたいな作りですね。マンガのテンポと映像のテンポは違うので、単に原作の4話分をアニメの1話にしますという作り方では見ている方は面白く感じられないものなんです。その意味ではフィルムに還元して考えて構成しました。あと、日付変更についてはアニメで見ていると気になるところなので、昼なら昼にシーンをまとめていったりもしました。原作とシーンの順番をところどころ入れ替えているのもそのためです。
上田 自分で読むマンガと、流れてくる映像とでは媒体の違いもあり、そこで情報がとっ散らかると結局、お話のトリガーになるドラマに来た時も「なんだっけ?」となって、感動できなくなってしまう。それを脚本やコンテの段階で押さえておく必要があります。
鈴木 その意味で、大丈夫かなという不安は常にありました。あまりに見すぎてあまりに考えすぎたため、第3話ができたときに、たしかに迫力があってスゴいんだけど、「何の話だっけ?」ってなるよねって(笑)。
上田 一気にキャラが増えるので、「これ、そのままやってお客さんは付いてこられる? 俺らはスゲェ面白いんだけどさ!」って(笑)。
──ターゲットについてはどう考えましたか? 上田 原作ファンから「お前らよく頑張ったな、余は満足じゃ!」と思ってもらえればいいんです(笑)。でもプロデューサーとしては、原作を知らない人がアニメを見て、単行本を手に取ってくれて「なるほど」ってなってくれるのがうれしいといえばうれしいよね。映像屋としては、本編の話をきちんとやりたいというのが一番で、その導入に役立つものとして、いろんな異文化が混在しているところにサムライが行くというスタイルをオープニングとエンディングで組んでいて、単行本の巻末ノリの予告を含めてこの振れ幅の中で作っていますよというのが見えればいいかなと。
──残酷な描写についてはプロデューサーとしてはどのように考えましたか? 上田 基本的には放送局に絵コンテの段階でチェックを受けて、さまざまな交渉を経てあの形になりました。残酷さを見せたいとか、それを煽るような作品ではないということは承知していただいていると思います。とはいえ、放送時間帯がけっこう早めだからドキドキする部分ではありましたが。
鈴木 そうですね。お客さんによってはあれで十分グロいと感じる人もいますし、感じない人もいます。そしてそれがよいという人も、嫌だという人もいます。とはいえ、首を斬る場面がなければ「ドリフターズ」ではないと思うので、その意味では恐れずにやりました。
──今回のアニメならではの大胆な演出として、オルテ語を表現するためにラテン語をベースに架空言語を作って、日本語字幕(副音声)で放送するというものがありました。 鈴木 シナリオ打ち合わせの段階で、エルフ語を日本語のままやったら繋がらないよね、という話が出て、設定考証の白土晴一さんにオルテ語を作ってもらいました。日本語とオルテ語で2つ作っているので音響も声優も編集も2倍とは言わないまでもかなりの手間がかかるんです。第4話で翻訳のお札が出てくるので、音響チームには「すいません、4話までがんばってください」とお願いしてやってもらいました。
上田 妙にオルテ語がうまい役者さんっていたよね。
鈴木 マルク(CV:続木友子)とマーシャ(CV:石塚さより)の2人とか。
上田 言語感って出るよね。カタカナになるので、そこでのクオリティはそれほど求めていないのですが、妙にうまかったりして(笑)
鈴木 家中宏さん(スキピオ役)のラテン語がうまかったなぁ。
──音響について、第1話で豊久が紫の部屋から異世界に吸い込まれるときに「ゾっ」というマンガの効果音を音で表現するところが独特の演出だなと思いました。 鈴木 当初は賛否両論でしたが、後半はみんな慣れたのか言われなくなりましたね。結局、使いどころかなと思って。オノマトペ(擬音語)が全部ダメというわけじゃなくて、ハマる時はハマるし、視聴者が気になるところは結局、演出としてハマってなかったという結論に至りましたよね。
上田 平野擬音を音に出してやりましょうというルールだったけど、違和感を与えて止まってしまうのは本意ではない。我々が決め事に縛られてもしょうがないですから。監督が言ったように違和感があればやめればいいし、ハマったらどんどん使えばいいというわけです。
──今作において監督がご自身のオリジナリティを入れたと思う要素はどこだと考えますか? 鈴木 この作品については、オリジナリティというよりも、どうやって映像として見やすくするか職人技を出すのが正解だと思います。
上田 なかにはマンガを改変してWIN-WINになる形に着地する作品もありますし、マンガと映像とは根本的に違うので、そういうメソッドを入れるのが基本スタンスなんだけど、一般的にバランスをとるのがなかなか難しいですよね。
鈴木 アニメオリジナルの要素ももちろん入っているんですけど、そこが目立っていいというのでもなくて、「これこそ平野耕太の『ドリフターズ』だよね」というところを目的地にしているので、そういう意味ではみんな職人として頑張ったというわけです。こういう作品はお客さんがどんなところを見たいかを探して、うまく補完してあげればいい。もちろん、そこにクリエイティビティは必要だと思いますが。
──上田さんは過去にアニメオリジナル企画も手がけられていますが、こうした原作のエッセンスを引き出す作品においてはプロデューサーとしての考え方は変えていますか? 上田 それは日々、勉強ですね。この作品についていえば、面白いから(原作に忠実な方向で)やっているということもあります。映像としてつまらなくなりそうなら変えたりしますがドリフはその必要がないかなぁ。それこそ鈴木監督がいてくれたからこそこのやり方で作れているので、違う監督だったらまた違うし、その判断は原作から預かっているという立場ですね。
鈴木 ホント、お預かりしているという感じですね。僕もオリジナルをやりたいという意欲はあります。ただこの原作を最適な形でアニメ化にするには、やり方が違うんですよね。
上田 頑張れるのは結局、原作が面白いからというところかな。
鈴木 そうですね。やっぱり原作が面白いので、楽しんでできたというのはあります。原作モノだからといって自由度が狭いということはこのアニメ作りにおいてはなかったと思います。
──最終回の最後で、原作の続きの部分もアニメ化されることが発表されました。まずは今シリーズの放送を終えてファンの反応はいかがですか? 鈴木 この取材のタイミングでは、まだすべての放送が終わっていないので、裁判待ちみたいなところはあります(笑)。やっぱり最後まで終えてこそなので。ただ、これまでの放送でファンの方の声も届いてはいますので、それを採り入れつつ、続きに関してはよしなに作っていくと思います。ただ、完結まで長い戦いになると思うので、最後までお付き合いいただければと思います。
上田 放送の予定はまだまったく立っていませんが、1クール分たまるのを待ってからだとさすがに間が空くので、どこかのタイミングで単発でも見せられる機会がないかなとは考えています。どうか首を長くしてお待ちいただければと思います。
(取材/日詰明嘉・奥村ひとみ、構成/日詰明嘉)
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