【アニメコラム】ときめき☆タイムトリップ第9回「コードギアス 反逆のルルーシュ」ダークな主人公ルルーシュの鮮やかな魅力

2016年12月18日 12:000
(C) SUNRISE/PROJECT GEASS  Character Design (C) 2006 CLAMP・ST

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「今見ても、やっぱりいいわー!」
「なんでそんなに女性に受けたの?」
おもしろいものには理由(ワケ)がある! 女性アニメファンの心をつかんでヒットした懐かしの作品を、女性アニメライターが振り返ります。

今回取り上げるのは、「コードギアス 反逆のルルーシュ」(2006年)(後編の「コードギアス 反逆のルルーシュ R2」(2008年)を含む)です。

2016年11月27日(日)、本作の放送10周年を記念するイベント「キセキのアニバーサリー」で、新作「復活のルルーシュ」の企画始動と、新録音によるTVシリーズ50話の劇場総集編全3章の制作が発表されました。

TVシリーズを原作として、OVA、ゲーム、コミック、小説、外伝劇場版など数々の派生作品を生み出し、今また新作につながろうとしている人気シリーズ。男女の支持を得た作品ですが、女性ファンを惹きつけたのは、やはりなんといってもキャラクター、とりわけ主人公ルルーシュ・ランペルージでした。総集編に向けて、放送当時に女性ファンを惹きつけた魅力を振り返ります。


祖国に反旗をひるがえす、捨てられた皇子


物語の舞台は、私たちの世界とは違う歴史を歩んだ、絶対君主国家・神聖ブリタニア帝国が世界の3分の1を支配する世界。極東の日本と呼ばれた島国は、地下資源サクラダイトをねらったブリタニアの侵攻を受け、属領となって支配され、「エリア11(イレヴン)」と呼ばれています。

エリア11に暮らす、主人公の高校生ルルーシュ・ランペルージは、実はブリタニア帝国の第11皇子。母親の皇妃を暗殺されて、目と足が不自由な妹ナナリーとともに日本に人質として送られた過去を持ち、現在は皇族であることを秘密にして生きています。

かつて自分たちは、父親と祖国に見捨てられた。もし生きていることがわかれば、また人質として利用されるだけ。ブリタニアが支配する世界に、自分たちが穏やかに生きられる場所はない。皇子の生まれでありながら、ルルーシュはブリタニア帝国と父親に、憎しみと復讐心を持っていました。

そんなルルーシュが、謎の少女C.C.(シーツー)と出会い、どんな人間も従わせることができる絶対遵守の力「ギアス」を手に入れ、ブリタニア帝国に反逆の戦いを挑みます。

ルルーシュの武器は、冷徹で知略にすぐれた頭脳と、ギアスの力。ルルーシュは仮面で素顔を隠して「ゼロ」と名乗り、レジスタンスを束ねて「黒の騎士団」と命名。彼らを手駒として、ブリタニア軍に戦いを挑み、奇跡的な勝利を重ねていきます。

しかし、ブリタニアの皇子がレジスタンスのトップという事実が明るみに出れば、不信から組織は瓦解します。ルルーシュは、仮面と嘘をたくみに使い分けて、革命の仲間たちには「ルルーシュ」であることを、学園の友達や妹には「ゼロ」であることを隠しつづけます。両方の顔を知る同志は、C.C.のみ。

ギアスの力は強力ですが、使用に関する制限があって、万能ではありません。また、話が進むにつれて、「ギアスの力は次第に強くなり、暴走する」ことがわかり、これによってもルルーシュは苦境に立たされます。


悪役ぶりつつなりきれない? 甘さが魅力のルルーシュ


自分の目的のために人を利用し、駒として扱うと宣言し、犠牲者が出るような非情な判断をしていますが、そもそもルルーシュの根本には情にもろい部分があり、本当に冷徹にはなりきれません。

ルルーシュの魅力、特に女性ファンをきゅんとさせる魅力は、その「甘さ」にこそあるといえます。

自分が嘘つきの策略家である反動か、ルルーシュは一途でやさしい心を持った相手を信頼し、大切に思っています。妹のナナリー・ランペルージ、腹ちがいの妹ユーフェミア・リ・ブリタニア、学友のシャーリー・フェネット、革命の同志・紅月カレン、そして親友の枢木(くるるぎ)スザク。

そしてそのほとんどがルルーシュの足をからめとり、辛い思いをする展開になります。自分では、冷酷な悪役のペルソナをつけ、汚いことも平気でやる「魔王」と自称しているけれど、しばしばそれに自分の心が追いついていません。

プライドの高い自信家でありながら、弱点がたくさんあるのもカワイイところです。ルルーシュは持久力がなく、学園の日常から戦場にいたるまで、頭脳戦ならともかく、体力勝負となるとかなわない相手がたくさんいます。

また、機を見るに敏で、口先三寸とギアスの力でピンチから逆転するのが得意ないっぽうで、妹ナナリーに危機がせまるとパニックになり、何もかも放り出してしまいます。

そして、色ごとにはとてもウブです。思いを寄せる女子の心理に鈍感で、好意を寄せてくれる女性には冷酷になりきれません。心が折れそうになったときに、C.C.から、「どれだけ偉そうなことを言っても、しょせんは口先だけの頭でっかちな童貞ボウヤか」とあえて悪態めいて叱咤(しった)されたシーンもありました(話題になりましたね)。

徹頭徹尾悪役ぶるのに、見れば見るほど憎めない。かわいそうにすらなる。激情家の分だけ、よく怒り、絶望し、涙も流しました。

情に足をとられながら、ルルーシュは歩みを止めません。ナナリーと離れ離れになり、母親の死の真実を知り、仲間である黒の騎士団に裏切られても、ルルーシュは先へと進み続けます。

最大の武器であるギアスの力は、ルルーシュをどんどん孤独にしていきます。本人の意志に反して、その人が絶対やらないようなことさえさせてしまうギアスの力は、確かに残酷なもので、途中から、「ここまでやったら、ルルーシュに絶対ハッピーエンドはないな」という予感はありました。

勝利を重ね、世界を手中に収めるほど、ルルーシュは大切なものを失っていく。でも、どんなに泣き叫んでも、過去は戻らない。起こってしまったことは変えられない。戦うための根拠が崩壊して自分自身がボロボロになっても、たくさんの人を失ってきたからこそ、前へ進むことを選ぶ。

その覚悟・生き方は、善悪を超えていさぎよく、とても魅力的でした。


信頼と裏切りの親友・枢木スザク


この物語でルルーシュと対照的で対になる存在が、親友の枢木スザクです。日本国最後の首相の息子で、イレヴン出身の「名誉ブリタニア人」としてブリタニア帝国の軍人となり、差別を受けつつもブリタニア帝国を中から変えようとしています。

ルルーシュとスザクは8年前に、子供時代をともに過ごして友情を結びました。その絆は終始互いの力となり、同時に互いを苦しめることになります。

ルルーシュは「ゼロ」としてスザクを味方に抱き込もうとしますが、自分のやり方を貫くスザクに拒絶されます。それでもスザクにギアスをかけようとは思わなかったルルーシュですが、理不尽な命令を受けて死に直面したスザクに、「生きろ」というギアスをかけることに。その結果が、呪いのようにスザクを苦しめます。

2人の亀裂は、スザクを騎士に選任した皇女ユーフェミアを、「ゼロ」が殺害したことで決定的になります。ゼロの正体がルルーシュだと知ったスザクの憎悪は激しいものでした。

ルルーシュのほうは、友情などとっくに捨てたつもりでした。でも状況が変わり、どん底の危機に落ちたとき、「助けを求められる本当に信頼できる相手」として思い浮かべたのは、敵であるスザクだったのです。

2人の友情と憎しみの物語はとても劇的です。互いに相手のやりかたを拒絶し、自分の手を汚して目指すものを追い求め、苦しんで変わっていった2人が、最後にあることを決意する。このクライマックスで、作品の評価は定まったといってもいいでしょう。


多彩な魅力全部盛りは、アニメオリジナルならでは


物語の骨子は、底辺から主人公が手段を選ばず成り上がって世界を変えていく「ピカレスクロマン」です。

同時に、「ギアス」という異能力による戦いを描く「バトルもの」でもあり、ルルーシュの母の死の謎にせまる「ミステリー」の側面も持ちます。仮想の歴史における戦争を描いた「仮想戦記もの」でもあり、機動兵器「ナイトメアフレーム」による「SFメカアクションもの」でもあります。明るくコミカルな「学園コメディ」のエピソードもあり、「青春・恋愛もの」としての見方もできます。

そして何より、「神聖ブリタニア帝国」の皇族・貴族、「黒の騎士団」のレジスタンス、全寮制の私立校「アッシュフォード学園」に通う学生たちなどなど、メインキャラクター30名以上が入り混じる「群像劇」です。ひとりひとりに背景と生き方、ドラマがあります。

これらの要素が第1話の幕開けから、1秒たりとも無駄にせず、ジェットコースターのように疾走していきます。展開によって、思いもしなかった登場人物が顔を合わせ、結びつき、状況にともない味方が敵に、敵が味方になったりもします。

けれん味のある印象的なセリフまわしに、歌舞伎の見得にも似た目線づかいとポージング。話のトーンはシリアスで、戦争を描きたくさんの人が死ぬ話ではありますが、描写はどこか乾いていて、絵的に陰惨な残虐描写はありません。CLAMP原案・木村貴宏デザインのキャラクターには、美しさとかわいらしさとツヤがあり、実に華やかです。

やはり、アニメで見て一番おもしろいのは、アニメ用に作られたアニメオリジナルの作品だなあと思わせてくれます。

総集編三部作によって、新たなファンが増えるであろうことは、当時からのファンとしてもうれしいものです。そして新作「復活のルルーシュ」とは一体!? まずは、総集編三部作を楽しみに待ちましょう。



(文・やまゆー)
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