【アニメコラム】ときめき☆タイムトリップ第8回「ヒカルの碁」ふたりの出会いは運命! ドラマチック囲碁アニメ

アキバ総研 | 2016年11月20日 12:00
【アニメコラム】ときめき☆タイムトリップ第8回「ヒカルの碁」ふたりの出会いは運命! ドラマチック囲碁アニメ

「今見ても、やっぱりいいわー!」
「なんでそんなに女性に受けたの?」
おもしろいものには理由(ワケ)がある! 女性アニメファンの心をつかんでヒットした懐かしの作品を、女性アニメライターが振り返ります。

将棋の若手棋士が主人公のアニメ「3月のライオン」が放送中ということで、思い出すのが、空前の囲碁ブームを巻き起こした「ヒカルの碁」(2001年~2003年放送、全75話)です。

「週刊少年ジャンプ」に連載された原作コミックをほぼ忠実にアニメ化した、史上初の囲碁アニメ。平安時代の天才棋士の魂が現代の子どもに取り憑くというファンタジーな設定でありながら、人物描写や囲碁の勝負展開は、実にリアルで繊細です。

中でも、主人公の進藤(しんどう)ヒカルと、ライバルの塔矢(とうや)アキラ、2人の関係とドラマ性は、女性ファンを強くひきつけました。


アニメで魅せる! ドラマチック囲碁


平安時代の天才棋士・藤原佐為(ふじわらのさい)は、「神の一手を極めたい」という熱い思いから、魂のみとなって生き続け、江戸時代の本因坊秀策を経て現代によみがえり、小学6年生のヒカルに取り憑きます。

身体を持たない佐為は碁石に触れず、1人では碁が打てません。最初はまったく碁に興味のなかったヒカルですが、佐為が「打ちたい」とうるさいので、近所の碁会所にいき、佐為に身体を貸して、同年代の子どもを相手に打ってみます。

ところがこの相手が、ただの子どもじゃなかった。囲碁界の頂点に君臨する名人・塔矢行洋の息子で、めったな大人でも勝てないという囲碁の天才少年、塔矢アキラだったわけです。そんなサラブレッドのアキラが、ヒカル(佐為)にあっさり負かされて大ショック。そしてアキラの影響を受けて、ヒカルも碁の魅力を知り、自ら碁を打つようになっていきます。

というわけでこの作品、「1000年前の天才棋士の亡霊」というファンタジーな設定でスタートしていながら、実に王道のスポ根ものでもありました。すぐれた指導者、そして運命のライバルとの出会いで物語はスタート。ズブの素人のヒカルを通して、囲碁とはどういうゲームなのかを順々に説明しつつ、そのおもしろさを見る人にも伝えるという構造です。

細かいルールを知る人も少ない、一見地味に見える囲碁の勝負をどう描くかは、コミックでもアニメでも大きな課題だったでしょう。なにせ見せ場の大半は、碁盤をはさんで正座の差し向かいで、絵面としては盤面に白黒の石を置いていくだけなんですから。

原作コミックは、黒と白の美しさが映えるペン画のモノクロ印刷と、コマ割りを駆使した画面構成で、囲碁の勝負をドラマチックに見せました。いっぽうでアニメの武器は音と間合い、そして動きです。石を置く音を響かせたり、勝負を決める重要な一手で石を光らせたり、ネット碁の対局でイメージ世界で両者を対決させたりと、独自の演出が勝負を盛り上げ、囲碁の勝負がはらむ緊迫感を見事に描き出しました。



運命のライバル! ヒカルとアキラ


ヒカルとアキラは、最初から運命的なライバルとして描かれています。

アキラは、自分が優秀すぎて同年代にライバルはいなかったところに、ヒカルが登場。強烈にライバルとして意識するようになり、奮い立ちます。

いっぽう、現代っ子らしく囲碁に何の知識も興味もなかったヒカルも、アキラに刺激されてプロを目指して日本棋院の院生になります。

アキラにライバルと認められたい。しかしアキラが追い、対局を望む自分は、佐為であって自分ではない。そのジレンマ。

こうして2人は、互いに思い思われ、追い追われながら、壁に苦しみ、すれ違い、葛藤し、時には激しい言葉をぶつけ、時には絶望して冷たい態度をとることになります。アキラが追うときヒカルは相手にせず、ヒカルが追うときアキラはもう振り向きません。

さながら、古典的恋愛ドラマのような構図! これは気になって続きを見てしまう最強のパターンです。

さまざまな棋士たちのドラマが描かれますが、物語の主軸は、この2人でブレません。

囲碁の世界では、棋力と年齢が必ずしも比例せず、子どもが大の大人に勝つのも当たり前です。それでいて、ヒカルたちの精神は子ども以外の何物でもありません。ヒカルの根拠のない自信に強気なわがまま、アキラの純粋すぎる情熱や一途さは、怖いもの知らずで、もろさや危うさと紙一重。見ていてドキドキします。


2人で1人、師弟にして友達のようなヒカルと佐為


もうひとつの物語の主軸が、ヒカルと佐為です。

「神の一手を極めたい」という願いのために、碁盤に宿り、自分の声が聞こえる相手をさがしていた佐為。碁をこよなく愛する一途な天才で、中性的な美しい風貌を持ち、大人でありながら浮世ばなれしていて、無邪気でかわいらしい一面を見せます。

ヒカルと佐為もまた、運命の出会いです。

佐為はまず、ヒカルを通して自分の「碁を打ちたい」という欲求をかなえますが、囲碁を愛するものとしてヒカルの碁への興味の芽生えを素直によろこび、よき導き手として、また常に隣にいる囲碁を愛する友として相談相手として、高みを目指していくヒカルによりそいます。

千年の時を超えて存在する佐為と、つい先日囲碁を始めた子どものヒカル。ふたりの力差は歴然ですが、ヒカルは子どもらしいがむしゃらさで1つひとつ階段をのぼっていきます。めざましいスピードで。

いくら佐為が常に見て鍛えているといっても、ヒカルの成長は早すぎます。実はそれこそが、ヒカル自身の囲碁のセンスと可能性を示すものでした。そのことに最初に佐為が気づき、そして塔矢行洋をはじめとするプロ棋士たちも注目していきます。

いつのまにか、導き手の佐為と初心者だったヒカルの立場は逆転しています。ヒカルには若さと生きた体と未来がある。佐為は宿願かなって、塔矢行洋とネット碁で対局を果たしますが、同時に1000年の時を越えて生き長らえた自分の役割を知り、もう残された時がないことを悟ります。

やがて2人に別れのときが訪れます。



佐為はいたのか? 最後に示される答え


佐為を失ったヒカルは、悲しみ、後悔、ショックに心が乱れ、「もう碁は打たない」と決意して、周囲を驚かせます。アキラの叱咤も、ヒカルには届きません。

アキラが対戦を望んでいるのは佐為なのに、佐為はもういない。佐為も強い相手と打ちたがっていたのに、もう打たせてやれない。こんなことになるなら、もっともっと打たせてやればよかった。自分が碁を打つことにいまやどんな意味があるのか……?

ヒカルの慟哭は胸に刺さります。このあたり、ちょっと見ているのが辛くなる重さです。

ともに囲碁の道を歩んできた半身を失う苦しみの中で、これまで丸っこく子どもっぽい面立ちだったヒカルの顔は、より深い表情が繊細に描かれて絵が変わり、短い間にヒカルはとても大人びた表情を見せるようになります。

ヒカルにしか見えなかった佐為は実在したのでしょうか? ひとつ間違えば、佐為はヒカルの脳裏にだけ現れた、幻だったかのようにさえ思えます。外から見れば、ヒカルという少年が囲碁と出会い、上達して成長した。それだけの話になりかねません。

けれど、そうではありませんでした。

佐為が確かに存在したこと。そして、佐為が果たした役割が確認される最後のエピソードは、とても感動的です。

そしてその確認をするのは、佐為がいなくても碁を打ち続けることを選んだヒカルと、ついにヒカルとの対局がかなったアキラの2人。長くヒカルを追ってきたアキラの願いもここに成就し、3人の物語が完成します。

原作はこのあと、ヒカルやアキラが韓国の棋士と戦う「北斗杯編」に続きますが、アニメのテレビシリーズは、ここで終了します。

ヒカルと佐為、そしてヒカルとアキラの出会いから始まった物語としては、それもひとつの正解だったのではないかと思います。見終わったときに、ひとつの物語を描き切った爽快感があります。



最終回のスペシャルエンディングにしみじみ


このほかの登場人物にも、魅力的なメンツがたくさんいましたよね。

ヒカルが通っている葉瀬中学校の囲碁部の仲間、真面目な筒井公宏に、ちょっとひねくれものの三谷祐輝。
囲碁が強い将棋部部長の、自由闊達な加賀鉄男。
院生の仲間で、面倒見のいい気さくな和谷義高。
なかでも、誠実で後輩に慕われているのに、メンタルが弱くてプロ試験をクリアできずにいる伊角慎一郎は、どんどんイケメン化が進んで、大人気キャラになりました!

囲碁は、真剣勝負。
囲碁は、人生。
そして、囲碁は盤面を通したコミュニケーションでもあることが、作中ではくりかえし語られます。

アニメの第1話から第30話まで流れたオープニング主題歌が「Get Over」という曲ですが、この歌詞のサビが、二人三脚で成長の階段を一歩ずつ上っていったヒカルと佐為の関係に通じるものがあり、とてもハマっています。

この曲が、最終回でロングバージョンで流れるんですね。

ヒカルが打つ碁の中に、佐為はいる。ヒカルがアキラや仲間たちと高みを目指して碁を打ち続けることで、佐為もまた、生きる。

囲碁を通してヒカルと出会った人たちも、それぞれのかたちで未来へと歩んでいる。

そんなことを、しみじみと感じさせてくれるいい演出でした。

この原稿のために久々に見ましたが、クラシックな囲碁の世界の人間ドラマを描いているので、意外に内容が古びていません。

「懐かしいなあ~」なんて、つい第1話を見たら、止まらなくなるかもしれませんよ。



(文・やまゆー)

(C) ほったゆみ・HMC・小畑健・ノエル/集英社・テレビ東京・電通・ぴえろ

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