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レコーディングは凝りに凝っています
──作曲・編曲は3人の方が手がけていますが、作詞はすべて藤林聖子さんですね。 悠木 1stアルバムの「イシュメル」では、全曲の作詞をしていただきました。私の世界観を理解してくださっていて、かわいらしすぎず、怖すぎない、いい感じのところで歌詞を書いてくださるんです。
──具体的には、どのようなミーティングをしたのですか? 悠木 6曲くらいの構成で、全体的にどういうストーリーにしていくかを話し合いました。私が世界観を説明する中で、藤林さんから出てきたアイデアを取り入れて、設定を作り直すということもあって。「この場所はどういう匂いがするの?」とか、「どのくらいの温度なの?」とか、「この物体はどんな質感なの?」とか、いろいろな質問があって、それにお答えしたものが歌詞になってでき上がってくるという感じでした。心地よい音感と、雰囲気を醸し出す抽象的な表現と、世界観の説明の配分が絶妙で、すばらしい歌詞を作ってくださいました。
──1曲目「アイオイアオオイ」はとても短い、プロローグ的な楽曲です。歌詞も日本語には聞こえなくて。 悠木 「トコワカノクニ」への導入、呼び声的な曲ですね。不思議な質感を加えるために、テープで録音して、それをいったん傷つけ、さらに録音し直すという方法を取っているんです。
──めちゃくちゃ手間がかかってますね! 悠木 ディレクターさんのこだわりがすごくて。変なことをたくさんやっているアルバムなんです(笑)。全曲をトラックダウンした後にレコード盤に落として、それをさらに録音してデータ化するみたいなこともやっていて。音の感触は、かなり特殊なものになっているんです。
──2曲目の「サンクチュアリ」はいかがですか? 悠木 タイトルから察することができると思いますが、白の世界に入りこんだ直後の、少女の視点から描いた曲です。「聖域」ではあるんですが、そこにあるものは気持ちが悪いというか。そもそも、最初に声だけのアルバムを作りたいと思った時、私がイメージしたのは、蝶がびっしりと留まっている木だったんです。蝶の羽はきれいだし、それがたくさん留まっている様子は、遠くから見ると花が咲いているみたいじゃないですか。でも、近づいてみると、わらわらと寄り集まっているのが気持ち悪くて。そういう雰囲気を、声だけのアルバムとして表現したいなと思いました。「聖域」は、その最初の発想が一番濃く出ている曲ですね。
──声だけで作る音楽のイメージが、蝶がびっしり留まっている木というのは、すごく変じゃないですか? 悠木 そうですか? 人間の口って、顔の一部としてみたらなんてことはないんですけど、単体で見たらけっこう特殊な形をしているじゃないですか。そんなふうに、きれいなものと気持ち悪いものの狭間を、声だけの音楽で表現したいと思ったんです。
──ああ、なるほど。後で解説していただきますが、そのイメージが「レゼトワール」のミュージックビデオにも繋がっていくんですね。3曲目の「マシュバルーン」は、どのような曲ですか? 悠木 女の子と白のキメラ以外のキャラクターをたくさん登場させて、合唱みたいにしたいと思って作りました。女の子と出会う前のキメラは、ひとりぼっちだったわけじゃなく、キノコだったり蝶々だったり、いろいろなものに囲まれて生きていたという。キメラのいる森を、第三者の視点で描いた曲になっています。
──それで、この曲だけ、明らかに声色を変えた、男の子風の声が入っているんですね。 悠木 おしゃべりキノコです。完成したCDでは、いいバランスになっていますが、レコーディングしたものを聴いた時は、キノコのおしゃべりがあまりにもにぎやかで。自分で演じたんですけど、「うるさいよ」って思いました(笑)。逆に4曲目の「鍵穴ラボ」は、キメラから見た女の子を描いて、2人だけの曲になっています。