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「レゼトワール」のレコーディングには2日かかりました
──5曲目「レゼトワール」は、このアルバムのクライマックスとも言える曲です。 悠木 女の子とキメラが、一生懸命にコミュニケーションを取っている曲です。言葉が通じなくて、会話は噛み合っていないんですけど、すごく楽しいし、この時間は2人にとって貴重なんだという。他の曲は1日まるまる使って録ったんですが、この曲だけはトラック数が多くて、2日かけて録りました。
──1曲のボーカルレコーディングにまるまる1日使うというのもすごいですが、それが2日とは!? 悠木 私がアドリブで入れた声がたくさん入っていて、トラック数は100を越えています。アドリブはダミーヘッドマイクを使って録っていて、頭の上から言ってみたり、顔の下から叫んでみたり、耳もとでくすくす笑ってみたり、フンフンって鼻歌してみたり、とにかくたくさんの声が入っています。録音してはチェックするという繰り返しで、自分の声をえんえん聴くのは、とにかくしんどかったです。
──自分の声をえんえん聴くというのは、どの曲のレコーディングにも共通していますよね。 悠木 そうですね。「トコワカノクニ」のレコーディングは、本当に地道な作業の連続でした。声を録って、それを合成しては確認し、さらに声を録って重ねていって。どの曲も作曲家さんに立ち合っていただいて、「ここにもうちょっと声を入れてもらってですか?」とか、「何語だかわからない言葉をしゃべってください」とか、「ここで笑い声を」とか、相談したり試したりしながら、録っていきました。さらに、主となるメロディにはボーカル用のマイク、楽器のような声には楽器用のマイクと、録るたびにマイクも換えて。
──手間と時間が、ものすごくかかっているんですね。 悠木 集中力が必要で、精神的にも体力的にもくるな、と思いました(笑)。スタジオのエンジニアさんも、いろいろなアイデアを出してくださって、音作りのプロというか、アーティストが集まってできた作品だと思います。たとえば、「レゼトワール」の間奏には、フフフフッて笑うアドリブが入っているんですが、それは別の箇所で録った素材を、エンジニアさんがここに使うべきだと思って持ってきてくれたんですね。それが最高の効果を発揮していました。
──レコーディングをしている最中は、どんな完成形になるか、悠木さんにも想像がつかなかったのでは? 悠木 もちろん、完成形のイメージはありましたが、でき上がった楽曲はどれも、私の想像をこえるパワーを持っていました。「ビクタースタジオのエンジニアさんと録音機材、めちゃめちゃ、すごいな!」って思いました。
──ラストの「マシロキマボロシ」のレコーディングはいかがでしたか? 悠木 この曲は、メロディの歌のレコーディングが一番難しかったです。白い世界の生き物がかわいそうだなと思っている女の子の心境を、子守唄みたいな感じで歌わせていただきました。
──この曲のメロディが一番悲しい気がします。 悠木 この曲を作曲した方の白の世界のイメージは、無垢であるがゆえの閉塞感だったんです。それを聞いて、私もなるほどなと思いました。
──最初に、それぞれの作曲家さんによって、イメージの違いがあるとおっしゃっていましたね。 悠木 たとえばキメラについても、怖い生き物を想像する方もいれば、キュートな生き物を想像する方もいて。とらえ方の違いは、面白かったです。