※本コンテンツはアキバ総研が制作した独自コンテンツです。また本コンテンツでは掲載するECサイト等から購入実績などに基づいて手数料をいただくことがあります。
新曲「スウィンギングシティ」は、渋谷系の精神性がこめられた曲です
──アルバム全体を通して聴くと、曲の並びにも物語性を感じました。
佐藤 1曲目が「Outside of Melancholy ~憂鬱の向こう側~」で、ラストが「white light」。これだけが最初に決まっていて、あとは音楽的に気持ちよく聴ける流れで並べていったという感じですね。2曲目の「tiny lamp」はコーラスから入るイントロが物語の始まりを感じさせるし、続く3曲目も勢いのある曲で盛り上げたいから、ここは「divine intervention」で行っちゃうかと。
──最初の3曲はどれもアップテンポで、気分が上がるんですよね。
佐藤 4曲目からは新曲をまじえて、ガラリと世界観を変えて。7曲目にシングル曲の「いつかの、いくつかのきみとのせかい」を置くことでひとつのヤマを作り、その後は落ち着いた曲を並べ、「君という特異点[singular you]」、「星屑のインターリュード」でクライマックスを迎え、「white light」で大団円。音楽的な快感原則に基づいて、アップダウンを作っていきました。
──4曲目「lyrical sentence」と5曲目「スウィンギングシティ」は、新曲が2曲並んでいるんですよね。
kevin ここは、アルバムのおしゃれゾーンです(笑)。
佐藤 「lyrical sentence」はデビュー前に作った曲です。でも、ずっとショートバージョンしかなくて、今回のタイミングでフルサイズを完成させました。ファンの間では人気が高くて、フル音源を聴きたいという要望が多かったので、それに応えることができたと思います。Bメロがない、自由度が高い構成の曲で、ベースをクラムボンのmitoさんに弾いていただき、サウンド面でも面白い曲になったと思います。
──5曲目の「スウィンギングシティ」はシャッフルですね。
佐藤 90年代の渋谷系をやってみたいという、僕の趣味全開の曲です。歌詞はアルバム全体のテーマに関わるものになっています。CDのブックレットに、アルバム全体のテーマを示した「序」と「終」の2つの文章を載せているんですが、僕が書いた「序」の中にある〈そんな世界で、僕は君に出会った。〉の「そんな世界」が、「スウィンギングシティ」では描かれているんじゃないかなと。
──歌詞の中に〈透明な表情(かお)をした街で〉という一節があって、印象に残りました。
佐藤 その一節と、〈どこにでもあるけれど どこにもない気まぐれな場所さ〉という個所ですね。いわゆる「ファスト風土」と言われるもので、ショッピングモールがあってチェーンの飲食店があってという街の風景は、あらゆる場所で見られて、日本の都市部でも地方でも海外でも、どこも同じような風景になっている。そんな透明な街を駆け抜ける「僕ら」を描いたのが、「スウィンギングシティ」の歌詞なんです。
──この曲の主人公たちは、透明な街に、ネガティブな感情は持っていないんですね。
佐藤 そうですね。それが渋谷系の軽快さ、軽さに通じているんです。渋谷系の楽曲は、洋楽の元ネタとなるマニアックな楽曲があったりして、リスナーもその元ネタ探しも含めて楽しんでいたじゃないですか創作活動の中にある虚実を、そのまま受け止めて、それを楽しむという態度が彼らにはあって。それは、僕らが現実で、例えばクリスマスやハロウィンという、そもそも日本の文化にはなくて、商業的、人工的に盛り上げられているイベントに、何も考えずに載せられるのでもなく、斜に構えてバカにするのでもなく、虚実を分かった上で敢えて楽しむことと一緒だと思うんです。そういう渋谷系の精神性が「スウィンギングシティ」の歌詞にもサウンドにもこめられているんです。
──ここでは、fhánaも軽快におしゃれに行ってみようと。
kevin 今までのfhánaの曲にはなかった曲で、新鮮でした。サウンド的には、渋谷系の中にfhánaの感じをどうやって含ませようかと考えた結果、ストリングスの音を細かく切って配置するサンプリングの手法を取り入れてみました。それもうまくハマって、個人的には楽しかったですね。
towana 私は渋谷系をあまり聴いたことなかったのですが、こういう曲調は好きなんだなという発見がありました。
yuxuki 最近はスウィングの曲って珍しいですよね。佐藤さんが最初に聴かせてくれたデモに比べて、完成版はよりスウィング感が強くなって、アルバムの中で目立つ曲になりました。