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-----次に、登場キャラクターについてお聞きしたいと思います。今作には、物語の鍵を握る人物としてエイダ・ウォンが登場しますが、先日発売されたゲームソフト「バイオハザード6」でも主人公のひとりとして登場します。映画とゲームの間でキャラクターがブレないように、設定やストーリーなどにオーダーはあったのでしょうか?
神谷監督:かなり細かくありましたね。ただ、製作中は一切「バイオハザード6」のストーリーを知らなかった、というか教えてもらえなかったんです(笑)。ストーリーの製作中に、「前作ではクレアが登場したせいでエイダを登場させられなかったので、今回はエイダをぜひ登場させたい。できれば、危機的な状況の中でレオンとエイダのラブストーリーをやるのはどうでしょうか」と提案したんです。その時点では「バイオハザード6」で、エイダがどういう役割を担うかが決まってなかったようで、数ヵ月後にカプコンの小林プロデューサーから「レオンとエイダは、そこまでの関係にしないでほしい」と言われました(笑)。ただ、エイダを登場させることは最初から決めていましたので、今回のような扱いになっています。
-----ふたりが親密な関係になってもおかしくないと思うんですけどね(笑)。続いて、反政府側のバディ(アレクサンドル・コザチェンコ)についてお聞きします。バディは、レオンと並んでもうひとりの主人公とも言える、存在感のあるキャラクターになっています。彼を物語の主軸に置くことは最初から決まっていたのでしょうか?
神谷監督:誰が言い出したかは忘れてしまいましたが、打ち合わせのときに「今回はバディムービー(主人公が二人一組で活躍する映画)っぽくしたい」という話が出たんです。前作は女性キャラクターといっしょに行動していたので、今回は男同士にしたいなと。そういう意味では、最初からバディムービーにしようと意識して製作しました。
-----なるほど。バディのパートナーであるJDが、バディとは対極的な陽気で気のいいキャラクターでいい味を出していました。彼はなぜアメリカかぶれなんでしょう?(笑)
神谷監督:うーん、そのほうが面白かなと(笑)。バディがどうしてもカッコいいキャラクターになるので、その正反対なキャラクターをと考えていました。そういう雰囲気のキャラクターがひとりいると安心できるし、作っていて一番面白いんです。その結果、すごくいい味のキャラクターになったと思います。
-----東スラブ共和国の大統領・スベトラーナも強烈な個性の持ち主ですね。
神谷監督:そうですね、ストーリーを作っていくうえで、脚本の菅さんに東欧についてさまざまなリサーチをしてもらったところ、旧ソ連が共産主義から資本主義に切り替わる時期に誕生した新興財閥の人たちが、かなり政治の世界に食い込んでいることがわかりました。そんな中、菅さんから「こういう大統領がいますけど」とウクライナのユーリヤ・ティモシェンコという、ものすごい美人の女性大統領を教えてもらったところ、イメージにピッタリだったのでスベトラーナのモデルにしました。
-----実在の女性大統領がモデルになっているんですね。次に、敵対するB.O.W.(生体兵器)についてお聞きしたいと思います。本作にはB.O.W.同士が戦うという、原作ゲームにはなかったシーンが描かれていますが、このアイデアはどのように生まれたのでしょうか?
神谷監督:ゲーム版「バイオハザード4」から、これまでのt-ウィルスに感染した人たちがゾンビのようになって襲ってくるというものから、寄生生物に寄生された人間がゾンビのような振る舞いをして襲ってくるという設定に変更されましたよね。プロデューサーからも、今回の映画は「バイオハザード4」の設定を使ってほしいというオーダーがありました。
今回の映画は戦場が舞台なので、「実際に兵器として利用するにはどうしたらいいのか」と考えたときに、映画「機動警察パトレイバー 2 the Movie」の「(スタンドアローンで)制御不能な兵器などナンセンスだからな」というセリフを思い出しまして、「たしかに制御不能だと兵器じゃないよな」と(笑)。そんな時に、「“B.O.W.使い”が登場するのはどうだろう?」というアイデアが出たんです。B.O.W.に寄生生物を寄生させて、ボスとなる人間にコントロールさせれば兵器として使えるし、B.O.W.同士を戦わせることができますしね。
それに私自身が怪獣映画の製作に携わっていたこともあって、ヒーローと怪獣が戦うよりも、怪獣や怪物同士が戦っているさまが好きなんです(笑)。なので、B.O.W.同士の戦いのほうが燃えるんですよね。
-----たしかに燃えますよね(笑)。B.O.W.といえば、タイラントがゲーム版よりもかなり大きなサイズで登場しますが、この大きさになったのには何か理由があるんでしょうか?
神谷監督:ゲーム版のタイラントは、せいぜい3メートルなんですが、今回の映画に登場するのは5メートルくらいあります。(映画の)後半に戦闘車両とタイラントが戦うシーンがあるんですが、これくらいの大きさでないと成立しないんですよ。絵コンテを書くときに、(戦闘車両の)1/35サイズのプラモデルと、いろんな大きさの人形を「ガーン!」とぶつけて「小さい!」、「ガーン!」「大きい」、「ガーン!」「あ、ちょうどいい!」という感じでサイズを測り、ちょうどいいサイズの人形を定規で測って、その数値に35をかけて「5メートルだな」と(笑)。
こんな感じでタイラントのサイズを決めて、カプコンのプロデューサーに「5メートルです」とお伝えしたところ、「そんなにデカいのはタイラントじゃない」と言われまして(笑)。こちらとしても「こういう展開になるので、タイラントはこの大きさじゃないと困るんです」というやり取りの末、「わかりました、タイラントでもいいです」と了承をいただきました(笑)。
-----なるほど(笑)。映画ではリッカーの集団対タイラントの戦いも描かれていますが、5メートルくらいないと数で押されてしまいそうですね。
神谷監督:リッカーも直立すると2メートルくらいあるので、複数のリッカーに飛びかかってこられたら、3メートルのタイラントだとちょっと分が悪い。やっぱり5メートルくらいはないと、雰囲気が出ないかなと思います。ゲーム版のように、ロケットランチャーでやられちゃうのも悔しいですし(笑)。
-----次に技術的なことについてお聞きしたいと思います。登場キャラクターの動きはモーションキャプチャーで製作されているとのことですが、リッカーなどのB.O.W.の動きはどうやってキャプチャーしているのでしょうか?
神谷監督:製作に入る前は、全部手付けにするしかないなと思っていたのですが、特報(映像)を製作するときに一応アクター(役者)のモーションをキャプチャーしておいたんです。製作に入ってからもアニメーションチームから「できるモーションはキャプチャーしておいてください」と言われましたので、日本人のアクションチームに四つんばいになってもらって、できる限りの動きをキャプチャーしました。昔の怪獣映画も四つんばいになって撮影することがあったんですが、膝をついているので、それほどツラくないんです。ただ、今作の場合は膝をついてしまうとリッカーの動きにならないので、膝をつかないで四つんばいになって全力で走ってもらいました(笑)。
-----それはツラそうですね(笑)。
神谷監督:モーションキャプチャーの収録を行ったスタジオはかなり広いので、端から端まで走るのは大変そうでしたね(笑)。さらに、製作スケジュールの関係でモーションキャプチャーの収録をまとめて行ったので、午前中をまるまる使ってリッカーの走るモーションを収録したんです。そうしたら、みんな腕がパンパンになってしまって「いい加減にしてください! ほかのアクションを挟みつつやらせてください」と言われました(笑)。
ただ、リッカーの動きは明らかに人間のものとは違うので、最終的には、モーションキャプチャーで収録したモーションにアニメーターがさまざまな動きを加えたものを使用しています。四つ足の生物にマーカーを付けてキャプチャーできればいいんですが、まず言うことを聞かないでしょうし…(笑)。
-----リッカーのモーション製作には、とても手間がかかっているんですね。監督ご自身もモーションキャプチャーの収録にアクターとして参加されたとお聞きしました。
神谷監督:ちょっとだけですけどね(笑)。モーションキャプチャー収録の最終日に、収録し切れなかったゾンビなどのモブキャラのモーションをスタッフでやりましょうという話になったんです。私は「怪物のような動きや声なら、自分がやるほうが上手なんじゃないか」と思っていたので、今回は「よし、やろう!」と(笑)。
-----監督ご自身も役者さんとしてデビューされているんですね(笑)。最後に「アキバ総研」読者にメッセージをお願いいたします。
神谷監督:今年の後半は“バイオ祭り”になっています。実写映画の「バイオハザードV リトリビューション」から始まり、先日発売になったゲーム版の最新作「バイオハザード6」、そして“バイオ祭り”のトリを務めさせていただくのがCG映画の「バイオハザード ダムネーション」です。先に「バイオハザード6」をプレイされた方は前日譚として楽しめますし、「バイオハザード ダムネーション」を最初に観た方は、後日譚として楽しめますので、ぜひ劇場に足を運んでいただければと思います。よろしくお願いします。
-----本日はお忙しいなか、ありがとうございました。