さとうけいいち監督が放つ新たな衝撃作! 映画「アシュラ」インタビュー

2012年10月05日 16:300
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―どのような答えなのでしょうか。

まず、映画としてのエンターテイメントは、お客様を入れないといけない。昨今の映画事情は、原作物を映画にするというときに、女性のお客様にも見てもらわないとビジネスとして成り立たない部分があるので、アシュラは「美女と野獣」みたいな分かりやすい方向性にシフトされていたんですね。原作がかなり硬派なのでその方が分かりやすかったんですよ。私も「美女と野獣」ですよねというようなことは言っていたんですが、作品が出来上がれば出来あがるほど、おかしなものになっている気がしました。

震災があったときに、メディアから目にするものが原作の飢餓であったりとか、状況が似てると思ったのもあり、なんで人を食べたんだろとか、なんで人は争っちゃってるんだとか、根本的なことだけが見えてきて、恋愛どうこうは見えなくなりました。映画として、その恋愛の方向性にアレンジしていくのは、最近のやり方としては、よくあるのですが、この作品で求められているのは、そこでは無いんだと感じて自分の犯した罪も含めて、少年ながらも受け入れて成長していくようにした方がいいという形がなんとなく見えてきました。

ある時、プロデューサーがこの写真どうですかと見せてくれたのが、吹雪の中でお経を唱える若い僧侶が映っているスチールで、結果的に野良犬みたいな人間がこのような方になっていく方向性だというところが見えたんですよ。そこから、9割完成していたものを辞めようと言わせていただき、彼女には母親の影が見えて、法師には父親の背中のようなものが見えるようにする、ということで全体の構成を変えようと提案して納得していただいたので、そこからは早かったです。


―9割出来たもの捨てるのは勇気いりますよね。

いえいえ、映画としてお客様からお金をいただいて、満足して帰ってもらうのが我々の使命です。メガヒットと呼ばれなくとも、後世に残る作品を作るべきだという考えもあり、有害図書とか昔も今も様々な肩書きが付いてまわりますが、原作者は、あの時代に何を言いたかったのかなど、今の時代に封印されたものを引っ張り出して、こういう時代にリリースするときに「生きるっていうことは、綺麗事だけでは済まない」ことを描こうと。醜い部分もあったり、いろんな結果を受け入れながらも、いびつなものが最終的には、人になっていくという作品を作るべきだと思いました。

最初、どう作るのかは自分の役目ではなかったんですが、自分の中でもテーマとして「生きる」というのが作品から見えるものにした方がいいということが震災以降思えたのが大きかったですね。また、震災があったばかりの時期なので洪水のシーンであったり、残酷的に見えるシーンは通常外しますよね。


―センシティブなところは外しますね。

この作品に関して言うと、そういう部分を外さずに入れた方がいいだろう。生死を扱っている作品なので入れることによって、それも受け入れていくという表現があった方がいいと思いましたね。

一番私の中で強かったのは、震災でネガティブになっているような状況を海外のクリエイターがドキュメントで撮るのではないかと思い、そのような作品を海外から録られるのではなく、我々日本人が目を背けずに「生きる」というテーマの中でこのようなことが当然あるんだということを出したかった。

アニメーションなので、今の小さい子たちもいつかどこかで目に触れるかもしれないと思ったのもありました。だから、そういった部分もアニメーションだからといって避けるのではなく、この後このようになっていくんだよとか、こうやって生きていくっていうのが人間なんだよねを語ってほしいなというのがあり、思い切ってそういう部分もやった方がいい。やらせてもらえないかと進めました。

作品では、それでも生き残った人間は、瓦礫の下から這い上がってでも前を向いて、遠回りしてでも生きるんだみたいなことを言いたかった。人間は生きるためには、貪欲になるんだっていう部分を入れたかったですね。だから、映画の中では表裏が結構出ていると思うんですよ。昨日までの友だったやつが急に人相変わって悪くなっちゃう部分もあります。それを70分という尺の中で、そういったところも人間だよねっていうのを表現したかった。

作品の中で一番ピュアなのはアシュラです。それは人というものを客観的に見ているというのかな。役者含めて周りの女性のスタッフはアシュラが愛おしくなってくるようで、これは母性本能なんだろうと。男性がアシュラを見ても、あまりカワイイとは思えないんですが、女性が男性と違うところを見るのはそういうものを持っているからと思っています。海外でも同じ反応でした。男性が見ているところは、硬派なところなんですが、女性はそこではないところを見ています。これは万国共通でしたね。

それとカニバリズムやネガティブな要素もあるのに、人間として生きる部分のテーマは、宗教や人種の壁を超えるんだなと思いました。私は映画はまずエンターテイメントであるべきだと思っていますが、この作品はストレートなテーマで、がむしゃらに生きなきゃというのが前面に出ている映画だと思います。

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