【年末特別企画】今年のキーワードは「人力」と「声優すごい」!2年目のコロナ禍の中、出口博之×鮫島一六三が大いに語る、これが2021年の聴くべきアニメソングだ!

2021年12月30日 17:000

※本コンテンツはアキバ総研が制作した独自コンテンツです。また本コンテンツでは掲載するECサイト等から購入実績などに基づいて手数料をいただくことがあります。

2021年夏アニメ

<鮫島>

「START!! True dreams」Liella!(「ラブライブ!スーパースター!!」OP)

「星の旅人」渡辺さらさ(千本木彩花)×奈良田愛(花守ゆみり)(「かげきしょうじょ!!」ED)

「愛のシュプリーム!」fhána(「小林さんちのメイドラゴンS」OP)

 

<出口>

「ピンキーフック」麻倉もも(「カノジョも彼女」ED)

「ビューティフル・ドリーマー」Ezoshika Gourmet Club(「月が導く異世界道中」ED)

「Bloodlines~運命の血統~」JAM Project(「ゲッターロボ アーク」OP)

 

 

鮫島 「ラブライブ!スーパースター!!」は、メンバー構成がシリーズ最小の5人なんですけど、その分1人ひとりの濃さが増して、僕は最終的に全員好きになっちゃいました(笑)。楽曲も、「ラブライブ」はこうだよなという実家のような安心感。アニクラをやってたら、みんな踊ってくれたんじゃないかなという安心感がありました。

アニメとしてもAパートで笑ってBパートで泣くっていうのを、後半6話は全部やっていたんですが、この盛り上がりはOPあってこそだなと思いました。

 

出口 なんで5人なんですかね? 今回。

 

──おそらく「スーパースター」って「ガンダムZZ」なんじゃないかなって思うんですよ。

 

鮫島 わははは(笑)。サンライズつながりで。

 

──ファーストのμ'sがいて、そのカウンターとして「Z」的なAQOURS、虹ヶ咲と9人アイドルが続いてきたけど、そろそろ違う風を入れて変化をつけようとしたんじゃないかなと。合体変形するZZガンダム出すとか、パイロットを全員子供にするとか、その変化球が「スーパースター」なんじゃないかと。完全にガンオタの偏見なんですが(笑)。

 

出口 わははは(笑)。

 

──声優を一般公募で選んだりもしてるんですが、本作のいろいろな実験的要素のおかげで「ラブライブ」シリーズの自由度であったり、さらに今後も続いていく素地が築けたんじゃないかなと思ってます。

 

鮫島 うん。実験的でありながら実家のような安心感があって、すごいよかった。特にペイトン尚未さん演じる「平安名すみれ」は、「サンシャイン!!」の津島善子くらいの勢いを感じるキャラでしたね。第2期も楽しみです。

 

 

出口 「ピンキーフック」は、曲がよかった。ベースがめちゃくちゃかっこよくて、バンドの音もすごくいい。ものすごくていねいに音楽を作っているなっていう印象があって、楽器をやっている人はみんないいなって思う部分がたくさんあると思います。

YouTubeで公開されているMVの概要蘭にミュージシャンのリストがあったんですよ。作詞・作曲とかはよくあるんだけど、YouTubeの概要にミュージシャン情報が入ってるのは珍しい。そのリストを載せるということは、ちゃんと作ってますという意志表示だと思ったんですよね。見せないからちゃんとしてないってわけじゃないんだけど。そこにミュージシャンの気概みたいなものを感じて、かっこいいなって。

さっき言ったみたいに、今は人が弾いてるような音も簡単に打ち込みで作れちゃうけど、そんな時代の中で、あえて人力でやるのってすごいことだなと。

 

鮫島 やっぱり今年のテーマは人力なんですね。

 

出口 今年はバンドものが多いっていう話もそうだけど、その印象も自信の表れだとも思う。そういう時代にどんどん入っていくのかなって。

 

──昨年の対談で、出口さんは希望的観測を含めて2021年はバンドサウンドが増えていくのでは、と予測していましたが、実際にそうなってきてますね。

 

鮫島 あまり人と関わらない時代になってしまったからこそ、なのかな。

 

出口 生の質感を求められているのかな。だから「ピンキーフック」はいいのかなって。いわゆる弾いてみた系の動画をアップしている人も、この曲をやってる人は多いですよ。海外の人も弾いてたりします。だから楽器を弾いてる人は、やっぱりこの曲はすごいと感じのかな。

 

鮫島 次は「かげきしょうじょ!!」ED「星の旅人」。宝塚系のアニメで、この音を作ってらっしゃる方も宝塚で実際に曲を書いてらっしゃる斉藤常芳さんで、曲を聴いてみたらまさに本物でした。毎回スポットのあたるキャラがEDの歌唱を担当するということで、まんべんなくキャラにスポットが当たる作りになっていて、いいアニソンだなと思いました。いいアニメでしたし。もう語ることはないです!

 

 

──声優さんがみんなうまい人を用意していましたよね。あと登場する先輩たちの声優が、元タカラジェンヌっていうところもよかったですよね。

 

出口 元タカラジェンヌの声優さんって最近多いんですか?

 

──今に始まったわけではなく、古くは太田叔子さんとかもそうなんですが、ここ最近は森ななこさんとか七海ひろきさんとかが声優として活躍の場を広げられてますね。ビジュアルがよくて歌が歌えて芝居ももちろんできる、ステージに立っても映える。ということで即戦力になりえる強みがあると思います。

 

出口 今は女の子アイドルものが多いんですが、それが頭打ちになってきてるし、話の定型もできつつある。「ラブライブ!スーパースター!!」では、公募で未知の才能を集めてもきた。そういう風に新しい血を求めていたところに、本物がやってきたわけじゃないですか。

 

鮫島 そういう意味では、自分は「スーパースター!!」と「かげきしょうじょ!!」のどちらも入れてるんですが、それぞれが今の最先端をいってる作品じゃないかなと思います。

 

──物語もリアルで面白かった。

 

鮫島 なかなかエグいところも描いてますし、EDも明るくないじゃないですか。そこがよくて、みんなで舞台を目指すという厳しい世界の空気が出ていると思います。歌が下手な子がだんだん上手になっていく過程も見事に演じられて、声優さんってすごいなと思いましたね。だから今日のもうひとつのテーマは「声優すごい」!

 

 

出口 次は「月が導く異世界道中」EDの「ビューティフル・ドリーマー」。これは曲がよかったというか、すごくなじみがあるというか。自分がやっていたバンド直系のサウンドなので、「ここにもいた!」って思いました。俺たちの、と言ったらアレかもしれないけど、モノブライトがデビューしたのが2007年で、同期に9mm Parabellum BulletとかDOESとかがいて、それらが対バンしているのを見て音楽を始めたりした世代がEzoshika Gourmet Clubなんですよ。彼らは我々がやっていたことを再構成してやっているから親近感を覚えるんですよね。

この曲のことを夏の記事で書いたら、本人たちから連絡が来て、すごい喜んでくれてて。それで、今みたいに親近感を覚えるって伝えたら、「僕たち、ど真ん中世代です」って。だからありがたいですよね。

 

──そんなエピソードがあったとは! 次にアニソンタイアップが決まりましたら、ぜひアキバ総研でインタビューさせてください! それにしても彼らのように、自分の影響を受けた世代がシーンに上がってくるのってどういう感覚ですか?

 

出口 不思議な感覚ですよね。

 

──かつて自分たちが憧れたミュージシャンたちの位置に、自身がいるわけじゃないですか。

 

出口 そういうことなんですよね。そこが面白くて、自分たちがデビューして15年くらい経つわけだから、当時5歳だった子が20歳になってるわけじゃないですか。でも自分としてはデビューしてまだ5年くらいの感覚だから、彼らからモノブライトのコピーしてました! 影響を受けました!って言われても、俺たちの影響だよねって意識はなくて、どっちかというと「じゃあ同じものが好きなんだね!」っていう感覚なんですよ。だから「ワシが育てた!」っていう感覚はなくて、一緒の物が好きなバンドって感覚なんですよ。だから、いつか一緒のステージでやったりしたいですよね。バンドマンとして。

 

鮫島 次は、「小林さんちのメイドラゴンS」の「愛のシュプリーム!」ですね。

 

 

──これは自分も何回も聴きました。名曲ですね。

 

鮫島 これは曲を聴いて泣いちゃいました。シンプルに泣けますよね。

 

──泣けますね。

 

鮫島 僕の泣けるポイントなんですが、アニメには流れない「さぁ歌おう!讃美歌を」のところです。本作は、京都アニメーションの放火事件以降、最初のテレビシリーズになるんですが、よく再び立ち上がってくれたという気持ちになるんですよ。(第1期OPの)「青空のラプソディー」がからっとした快晴の曲なんですが、今回は雨が降るんです。そこからまた晴れに向かっていこうという曲になっていて、泣いちゃうんですよね。

 

──今回ゴスペルもフィーチャーしてて、そこにメッセージが秘められていると深読みはできるんだけど、作りはあくまでパーティチューンというのが素晴らしいですよね。

 

鮫島 背景を知れば知るほど涙が流れる曲で、当時、BTSが「Permission To Dance」という曲を出してて、そのMVがいろんな人種の人がマスクをしていて、最後に集まってマスクを外して踊りだすんですよ。どちらのMVも集まってみんなで踊るという内容で、なんだか自分の中でこの2曲がシンクロしたんです。いつかまたみんなで一緒に集まって踊りたいねというメッセージを感じて、また泣けましたね。

曲自体は1990年代の小沢健二とかスチャダラパーの要素がふんだんに入っている曲ですね。作曲された佐藤純一さんに僕のラジオに出てもらった時にお話したんですが、やっぱ佐藤さんも当時の音が好きで、kevin mitsunagaさんにそういうノリでラップをやってくれと言ったとおっしゃってました。

OP映像のキャラクターのリップシンクも気持ちいいし、ラップのリズムからサビのメロディで解放されていく感じもいい。そしてfhánaさんのMVもめちゃくちゃ凝ってて、何度も撮り直したみたいです。映像とかストーリーも、佐藤さんが全部自分で考えられたそうです。でもダンスが一番下手で(笑)、俺はこんなに踊りが下手なのかと思われたそうですが、それでも一生懸命踊ってらっしゃるところがいとおしいんですよね。いい曲でした。

 

──そして「ゲッターロボアーク」OP「Bloodlines~運命の血統~」ですね。

 

出口 この曲も泣けるんです。

 

鮫島 わははは(笑)。合わせなくてもいいですよ! 涙じゃなくて汗じゃないんですか?

 

出口 めちゃくちゃ涙が出ますよ!

 

 

鮫島 タイトル出るところでシャキーン!って言ってるじゃないですか! いいですねー、最近のアニメでタイトルがシャキーンって入ってくるのなんてないですよ。

 

出口 このロゴの出し方はもう「ゲッターロボ」の伝統ですから。それはそうと、JAMの曲はAメロ、Bメロ、サビじゃないんですよ。

 

鮫島 ほう、では何なんでしょう。

 

出口 かっこいいメロがあって、さらにかっこいいメロがあって、もっとかっこいいのが来るんです。で、最後に優勝クラスのカッコイイのがくる。A、B、サビじゃないんです。

 

(一同爆笑)

 

鮫島 そうなんだ(笑)! 全部かっこいい! それをどんどん足していくんだ。

 

出口 それぞれソロで主役を張れる人が集まっているということは、つまりみんなそれぞれ必殺技を持っているってことなんです。その必殺技を曲の中でリレーしてつないでいって、最後にサビで全員の合体技ですよ。

 

──わははは(笑)。だから「スーパーロボット大戦」の歌も歌えるんだ。

 

出口 涙が出るっていうのも、もう気持ちがインフレして感情があふれ出てくるんですよ。最後のサビあたりなんか特に。これも不思議なんですけど、すごすぎるものとかかっこよすぎるものを見たり聞いたりした時って、感情のキャパシティがオーバーするせいか泣くしかない。だからJAMのライブを観た後って、もう普通のカッコイイじゃ満足できない体になっちゃう。

 

──JAMってライブの終盤に必ず「SKILL」を歌って、きただにひろしさんが何分もかけて「motto motto」って繰り返すじゃないですか。あれは限界までカッコイイをドンブリし続けてる状態なんですね。

 

出口 あれは観客も巻き込んで、究極のかっこいいを目指して突き進む登山です。この山を登るぞっていう。このコールアンドレスポンスもライブ中盤とかにやったら、たぶんダレるんですよね。早く次に行ってくれよってなってしまう。でも終盤、そこまでカッコイイを散々積み立てて早くその頂に登り詰めたいんだけど、登り切っちゃうとライブが終わっちゃうわけじゃないですか。だからまだまだカッコよくなりきりたくないけど、早く最高にカッコよくなりたい。っていう登山です。そのうまさというか、必殺技の見せ方ですよね。

 

鮫島 小パンチとかないですもんね。全部超必殺技。

 

出口 しかもゲージがMAXになった状態の超必殺技。

 

鮫島 その視点で改めてJAMのライブを観てみたいですね。こんなに必殺技を持っていたんだって。

 

出口 とまあ、ネタ的に語る部分はあるんだけど、ネタ的に語れるっていうのは似顔絵が描きやすいということでもあるから、そこはほかのアーティストでは真似できない、真似を許さない要素ですね。

 

──この話を今日の話に繋げるなら、やはり生の強さ、説得力ですよね。

 

鮫島 ですね。見えてきましたね。

 

出口 うん。偶然にも繋がりができてきた。

 

2021年秋アニメ

<出口>

「ラビリンス」ORANGE RANGE(「MUTEKING THE Dancing HERO」OP)

「サイカ」フレデリック(「さんかく窓の外側は夜」OP)

「Fever Dreamer」Mia REGINA(「逆転世界ノ電池少女」OP)

 

<鮫島>

「EVERBLUE」Omoinotake(「ブルーピリオド」OP)

「アノーイング! さんさんウィーク!」五十嵐双葉(楠木ともり)、桜井桃子(早見沙織)、黒部夏美(青山玲菜)、月城モナ(古賀葵)(先輩がうざい後輩の話)OP)

「残響散歌」Aimer(「鬼滅の刃 遊廓編」OP)

 

 

出口 やっぱり「MUTEKING」ですね。豪華すぎていいです。「MUTEKING」にここまで力を入れるのかと(笑)。

 

鮫島 もともと昔のアニメなんですよね。キャッチコピーがいいですよね。「お前は敵か?じゃあ踊ろう!」って、よくわからない(笑)。

 

出口 だいたいそれでストーリーが語れます。

 

鮫島 熱気バサラみたいなものですよね。

 

出口 よく言えばね(笑)。ちょっと時代遅れのギャグっぽい古きよきアニメみたいな部分もあるんだけど、そのセンスが今っぽいというか。今のシティポップブーム、それも海外で受けている部分、海外の人がかっこいいと言っているもので構成されている気がする。それでリビルドされているのが今の「MUTEKING」で、そこに見事にORANGE RANGEがはまっている感があります。ORENGE RANGEって、もともとミクスチャーバンドから始まってラップとかハードめな曲をやりつつ、タイアップでポップな曲もやったりしていたんだけど、ある時期から急にハードなテクノのほうにハンドルを切り出して、わかりやすいのが2015年にリリースした「SUSHI食べたい feat.ソイソース」。

実はORANGE RANGEにはテクノの素地が、メインライターのNAOKIさんをはじめメンバーの中にあって、しかも「ウェーイ」って騒ぐ系じゃなくて、ミニマルテクノやハードフロアのように硬派でマニアックな、その音楽を理解していないと楽しめないような文脈がある。そこが今回の曲にフィードバックされている部分もあるんだけど、やっぱり多くの人の印象として「あのORANGE RANGE」っていうのがありますよね。

 

鮫島 「上海ハニー」の印象が強いですよね。

 

出口 確かにそれもバンドの音ではあるんだけど、実は彼らの本質としては「ラビリンス」のようなサウンドにあるんじゃないかな。

 

──アニメソング的には、水木一郎さんが歌っていた旧作の主題歌「ローラーヒーロー・ムテキング」のフレーズを取り込んでるのがポイント高いですね。

 

出口 それも「これを入れとけばいいんでしょ」的な感じじゃなくて、きちんとマッシュアップというかリビルドしているところは、うまいなと思いますね。

 

 

鮫島 自分は「鬼滅」を出します。「紅蓮華」「焔」「明け星」というLiSAさんの楽曲があったうえで「こう来たか!」と思いました。これいいね!って感じ。宇髄天元が出てくる「遊廓編」の主題歌としては、このビッグバンド風の曲が大正解だと思います。彼の決め台詞が「ド派手に行くぜ」なので、曲も派手でいいと思います。

LiSAさんが積み上げてきた主題歌を引き継ぐのって、Aimerさんとしてもすごいプレッシャーもあったんじゃないでしょうか。それを完全に払しょくして、自身の色を出せているのはすごいです。妖艶さもあるしカッコいい。これで「遊廓編」の期待値が上がりましたね。

 

──「さんかく窓の外側は夜」の「サイカ」はいかがでしょうか。

 

出口 歌ってるのはフレデリックですね。最初のほうで話した、全体的にBPMが落ちているというのが顕著に表れているのがこの曲で、フレデリックってわりとダンスビートとしては速い曲を日本的なメロディで畳みかけるっていうバンドなんだけど、この曲はそれがない。

 

これが今の時代って言い方じゃないけど、バンドのモードが変わってきてて面白いなと。これも表現が難しくて間違えるとdisになってしまうし、こういう時にほかのバンドの名前を出すのはよくないと思うんだけど、その裏には思い切りofficial髭男dismがいるっていう。やっぱりトップランカーだから、そこは揺るぎがない。ただそれを真似るというわけではなく、同じところで戦うバンドの気概みたいなものがあるのかなって。もちろん髭男がいるからこの曲が生まれたというわけではなく、トレンドを踏まえた結果としてね。

最近は和田アキ子と一緒にやってる「YONA YONA DANCE」が流行ったりもしたけど、あの曲は和田アキ子とフレデリックのグルーヴの違いが如実に出ているところが面白いですよね。和田アキ子はやっぱりブラックで横に揺れるリズムで、フレデリックはどんどん前に行く縦ノリなんですよね。

つんのめるように前のめる感覚はほかのバンドにはない音なのに、今回、グッと横にレイドバックするような曲になっているのは、作家性というか柔軟性というかバンドとしての懐の広さというか。俺たち、これしかできないんで、というわけじゃない。ある意味、腹のくくり方というか、バンドの強さを見た感はあります。

 

 

鮫島 ではバンド繋がりで「ブルーピリオド」OP「EVERBLUE」を。ピアノによるエモロックといいますか。Omoinotakeってギターがいなくて、ピアノとベースとドラムだけ。今回はホーンも入ってますけど。

アニメ第1話で主人公が絵に目覚めて青色で渋谷の街を描くんですけど、この曲を目を閉じて聴くと、それを知らずとも目の前に「青い風景」が広がってくると思うんですよ。

そういう意味で、よく楽曲に原作漫画、アニメの雰囲気を落とし込んだなと感心しました。これは音楽的にどういうジャンルになるんでしょう。すごく好きです。

 

出口 ジャンルで言うとAORの雰囲気はあるかな。AORはもう少しテンポがゆったりしているのかな。シティポップっぽさがあるというか。それをバンドの持ってるビート感に落とし込むとこうなるという点で、ものすごくオリジナリティがありますね。サメさんがおっしゃったように青が見えるというのは、そこがバンドのオリジナリティなのかなとも思います。

 

鮫島 渋谷の雰囲気も出ていて、素敵なアニメソングだなと思います。

 

──「逆転世界ノ電池少女」OP「Fever Dreamer」はどうでしょう。

 

出口 これは言葉を選ばずに言うと……古きよきアニメソング。僕ら世代的に言うと、1990年代のテレビ東京夕方6時ですね。

 

 

鮫島 わはははは(笑)! 確かに懐かしい感じはある。1990年代のロボットアニメっぽいですよね。

 

──この曲はアニクラで流したら盛り上がりそうですね。

 

鮫島 確実に上がると思います。

 

出口 この曲と「EVERYBODY! EVERYBODY!」の組み合わせは最強だと思うし、そこから「サバイバルダンス」とかいったらもうたまらないですね。

 

鮫島 いや~たまらないですね(笑)。

 

出口 今年は楽曲の許容範囲がすごい広がっているというか、この曲に限らず音圧、音の派手さみたいなものがバラバラで、「これ大丈夫?」みたいなスカスカなものもあれば、やたらお金がかかっている曲もありましたね。その中で「なんだこれ」という突出したものを感じるのは、こういう曲です。歌メロとアレンジ、パッと聞いてアニソンだよねって感じるような。

我々のような30~40代が持っている原体験に、そういう曲が多かったからなのかもしれないけど、今の10代がこれを聞いたらどう思うのかな。

 

 

鮫島 すごく新鮮だとも思いますよ。そして、次の曲は「先輩がうざい後輩の話」OP「アノーイング! さんさんウィーク!」。OP映像大好きっ子としては、これはよかったですね。歌詞がところどころ絵に入ってくる演出もかわいかったですし、主人公の女の子が歌に合わせて表情をコロコロ変えていくのもかわいい。ちゃんと絵に合ってるんですよ。しっかりアニメもていねいにつくられてますしね。

そして最後にちょっとダンスを入れてみたりね。全部大好物。全部入ってる(笑)。ずっと見てられますね。最後のダンスも、これくらいのダンスでいいんです。

でね、メインの2人が付き合うか付き合わないかくらいの距離感でね。今が一番楽しい時期なんですよね。最後の三三七拍子っていうのも、みんなの恋を応援しているのかなっていう感じでね。

 

出口 景気がいいですね。

 

鮫島 そう、すごくいいです! よだれが出ちゃう。もう毎回見ちゃう。誰も付き合わないし、好きだとも言わないんです。それがいい! ザ・アニソン!

 

出口 それがリアルですよね。寝る前にこれを観たら、明日も仕事とか学校をがんばろうって思えるよね。さっきの30~40代がって話じゃないけど、今アニメを見ている層ってそういう人たちが多いのかなって感じたりもする。

 

──確かに20年前くらいまでアニメって学園ものがめちゃくちゃ多かったけど、最近は社会人もののほうが印象に残っている気がします。

 

出口 そこで辛い話がないっていうのが、まさにそういうことなのかなって。

 

鮫島 中年でもがんばっていいんだ、っていうメッセージが増えているようにも思います。お笑い業界も錦鯉がブレイクしたおかげで、中年芸人がやめられなくなってるんですよ(笑)。「俺たちもがんばればまだいける!」って。私もまだいけると信じてますから!

 

映画

<鮫島>

「唇の凍傷」ワルキューレ(「劇場版マクロスΔ絶対LIVE!!!!!!」挿入歌)

「ルンに花咲く恋もある-movie edition-」(「劇場版マクロスΔ絶対LIVE!!!!!!」ED)

 

<出口>

「エンパシー」ASIAN KUNG-FU GENERATION(「僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ワールド ヒーローズ ミッション」ED)

 

──映画は1曲ずつ発表でお願いします。

 

鮫島 「唇の凍傷」は見たことのないほどのライブ映像でした。「マクロス」シリーズ屈指の映像で、どう発注したらこんな映像になるんだろうって思いました。そしてもう1曲すみません!

そして、すみません! もう1曲あるんですが、「ルンに花咲く恋もある-movie edition-」。これは曲自体は前からあったもので、もともとかわいらしいR&Bな曲だなと思っていたんですが、映画を観終えた後に聴くと歌詞が全部暗くなっちゃうんです。最後のオチを観た後にこれを聴くと、こんなに悲しい曲になるんだって思えて、めちゃくちゃ泣けます。伏線を回収してくれる歌詞だったんだなと、観る前と後で印象がガラッと変わるいい曲でした。

 

出口 自分は今も悩んでますが……。とりあえず候補を出しますと、「竜とそばかすの姫」「名探偵コナン」「ヒロアカ」で悩んでます。

 

鮫島 うーん、個人的には「ヒロアカ」かな。

 

 

出口 やっぱりそれかなあ。歌ってるのはアジカンですね。前情報なしに観に行ったら「あれ? アジカン?」って最初は誰の曲か気づかなくて。それくらいアジカンっぽくないっていうか、洋楽っぽいというかガツガツしてないというか。

一時期、後藤正文さんがヒップホップとか、バンドサウンドじゃない方向に向かっていたんですよ。それまでのギターがギャーンって鳴るような曲でなく、音像がきっちり広がった洋楽っぽい方向にシフトしている感があったんですが、今回の曲ではそれがギューッと収束していって、音数は少ないんだけどめちゃくちゃ音が立体的になるというか。

表現が難しいんだけど、鳴らされるべきところできちんと音が鳴っている。盛って盛って、いろんな音が鳴っているという、足し算的にゴージャスなのとは真逆の方向。それだけ選び抜かれた音によるシンプルだけど強い曲という印象です。対称的なのが「竜とそばかすの姫」におけるmillennium paradeのビルドアップしていく方向性なのかな。

結果的に、今日のテーマになっているような「人力」「バンドの強さ」みたいなものが、「エンパシー」には表れているのかなと思いました。ひいてはそれが「ヒロアカ」の世界観、劇中でがんばっているヒーローたちの姿に重なるような気がする。

 

鮫島 劇中で流れる「フラワーズ」っていう曲も、ロードムービーっぽい映像もあってすごくよかったです。これまでの「ヒロアカ」にはない演出で。

 

出口 観る人によっては、あそこで覚めたみたいな意見もあるんだけど、でもそこはサメさんおっしゃったように場面に必要な音だったと思う。今回の映画自体、アクションが多くて楽しいというのとは少し毛色が違っていたと思うし。

 

鮫島 心情がうまく描かれた作品だと思います。面白かったです。

 

出口 そういう作風ともばっちりハマっていたと思いました。この曲自体もどんどん広がっていくというか、すごくタイトでふわっと始まるんだけど、サビではガツンとアジカンの曲になるのですごくいい曲だと思います。時点で「コナン」の東京事変っていうのもありましたけど。

 

──今年はメジャー系からコアな作品まで、本当にアニメ映画が豊作でしたよね。

 

鮫島 大小問わずいい作品が多かった。

 

総括

 

出口 2021年のアニメソングをまとめるとどうなるんでしょう。

 

鮫島 生の力ですよね。

 

出口 ライブとかできなかった分ね。意図してないところも含めて、そういうところをみんな欲してたのかなって。聴く側もライブっぽいものを自然と求めていたところはあるのかなと。

 

鮫島 今年に限らずなんですが、アニメを通じて登場人物と同じ感情になれる曲、アニメを見た感想と同じ感情になれる曲がよかったのかなと思います。そのいっぽうで、今年は1年を象徴するような曲はなかったような気がします。

 

出口 それこそ、それぞれの胸に刺さった曲というのが全部バラバラだった気がする。

 

鮫島 そうですよね。この企画も、例年だといくつか楽曲が被る気がするんですが、今年は基本的にかぶることはなかったですよね。「蜘蛛ですが、なにか?」くらいですよね。あれも、OPとEDで分かれてましたが。

 

出口 そこは面白いところで、イベントが少なかったから共有する体験がなかったからというのも理由の一つかもしれないです。まあ、そういうのも時代性が表れているのかな。10年後に読み返してみたら、そういう時代だったなって思うのかもしれない。

 

──今年もお疲れ様でした! 来年もよろしくお願いします。

画像一覧

ログイン/会員登録をしてこのニュースにコメントしよう!

※記事中に記載の税込価格については記事掲載時のものとなります。税率の変更にともない、変更される場合がありますのでご注意ください。