【年末特別企画】今年のキーワードは「人力」と「声優すごい」!2年目のコロナ禍の中、出口博之×鮫島一六三が大いに語る、これが2021年の聴くべきアニメソングだ!

2021年12月30日 17:000

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2021年も残すこと数日。ということで、アキバ総研の年末恒例企画、出口博之さんと鮫島一六三さんによる、アニソン語りが今年も開催されました!

昨年に引き続き新型コロナウイルスに振り回されつつも、徐々にアフターコロナの日常にシフトし始めた感のある年末。そんな2021年のアニメソングシーンを、ミュージシャンにしてさまざまな媒体でライターとしても活躍する出口博之さんと、お笑いコンビ「BANBANBAN」鮫島一六三さんが斬りまくる! アニソンDJとしても名をはせる2人は、2021年のアニソンシーンをどう見たのでしょうか?

 

例年通り、2021年冬クールから秋クールまでの各シーズンに放送されたアニメからセレクトしたBEST3に加え、アニメ映画使用曲からイチオシの1曲をチョイスし、思う存分アニメソングについて語っていただきました。

 

──1年ぶりの対談ですね。おふたりとも、この1年どうでしたか?

 

出口 昨年と変わらずなところもあったけど、秋口から世の中が変わってきたのにあわせて、個人的にはライブなどが増えてきたかなって印象です。とはいえ、完全に前と同じ状況に戻ったかというとそういうわけでもなく、といったところですね。

アニメについては昨年後半くらいから制作体制も整ってきて、一時期はがくんとテレビでの放送本数が減っていたのが、今年は例年通りになりアニメソングも増えてきたけれども、DJとしてはかける場所がなかったという状況です。

だからイベントに出演してほかの人がかけているのを聞いて「何これ、めっちゃいい曲」という、観ているアニメ以外の曲との出会いというのがめちゃくちゃ減ったかな。

 

鮫島 僕は今年に入ってから意識的にしゃべる機会を増やそうと思っていて、誕生日から毎朝、「REC」というアプリで音声配信を10分間やってました。そうやってしゃべる機会を増やしたことによってなのか、人前でしゃべる仕事が増えた気がしますね。

あとは4月から声優学校の非常勤講師を始めました。落語も毎月やってますし、後半にいくにつれてそういう仕事が増えた気がします。きっと来年には元通りな状況になっていくんじゃないかなと思ってるんですが、それに向けて腕をなまらせておきたくないので、能動的に動いていました。

アニメに関しては出口さんと同じで、アニソンDJとして現場に立つことが減りましたね。

 

出口博之さん

──2021年のアニクラ事情はどんな感じだったんでしょうか。

 

鮫島 やってるところやってるんですけど、自分主催の「アニソンディスコ」に関してはほぼやってないですね。先月と今月に1回ずつやってますけど、小規模で入場制限して細々といったところです。

アニソンディスコというイベントって、テクニックで魅せるタイプのDJプレイじゃなくて、みんなで盛り上がってっていうタイプなので、着席でおとなしくやると魅力が半減するんです。それならやらないほうがいいかなっていう判断です。

 

──今も予断を許さない状況ではあるんですが、それでも1年前の絶望的な空気とは少し違う感じですか?

 

鮫島 そうですね。夜明け前な感じもあります!

 

──そんな2021年のアニメソングを振り返りたいと思います。よろしくお願いいたします!

 

鮫島一六三さん


2021年冬アニメ

<出口>

・「Undulation」崎山蒼志(「2.43 清陰高校男子バレー部」ED)

・「上を向いて運ぼう with 赤血球&白血球」POLYSICS(「はたらく細胞BLACK」ED)

・「がんばれ!蜘蛛子さんのテーマ」私(悠木碧)(「蜘蛛ですが、なにか?」前期ED)

 

<鮫島>

・「楽園」フジファブリック(「Dr.STONE」2期OP)

・「旅人の唄」大原ゆい子(「無職転生~異世界行ったら本気だす~」第1クール3~9話OP)

・「keep weaving your spider way」安月名莉子(「蜘蛛ですが、なにか?」前期OP)

 


──「がんばれ!蜘蛛子さんのテーマ」のインパクトはすごかったですね。悠木碧さんの声優としてのスキルがさく裂しているといました。

 

出口 今年って全体的にこのタイプの、いわゆるバカバカしい曲──ライブとかイベント、アニクラでかけると絶対に盛り上がる系の曲が少なかった気がする。いい曲っていうんじゃなくて、「すごい曲」。

 

鮫島 すごかったですね。なんかひとりマキシマム ザ ホルモンみたいでしたよね。全部ひとりでやっててすごいなって。

 

出口 この面白さっていうのが、歌を一生懸命練習して表現力を上げる、というのとは全然別角度の「うまさ」に満ちていて、声優ってすごいなって思いました。

 

鮫島 ちゃんと声優として感情も表現されているのがすごいですよね。(音源を聞きながら)これ、ライブでできるんですかね?

 

出口 できるんじゃない(笑)?

 

──ただ、おそらくコロナ禍真っただ中の放送だったこともあり、いわゆるファン向けのステージイベントなどが開催されていないので、まだライブ披露とかされていないように思います。

 

鮫島 確かに、1月9日からまた緊急事態宣言が出てましたからね。自分のイベントの前日に発令したので、日付もよく覚えています。「終わったー」って。時期が時期なら、今年の大きなトピックスになっていたイベントもあったのかもしれない。

 

 

──たとえばカラオケに集まって、みんなでアニソンを歌いまくるという行為も今年はほとんどできていないはずなので、アニメファンが集まってアニソンで盛り上がるという機会が、アニサマ以外はほぼない1年でしたね。

 

鮫島 言い方は難しいんですけど、もしかしたら機会損失しちゃってる曲なのかもしれません。僕は「蜘蛛ですが、なにか?」の前期OP「keep weaving your spider way」を推します。もちろんアニメの映像に合わせて歌っているのもいいんですが、この曲を安月名さんがアコギ1本で歌っているのを見たことがあって、「この曲をアコギで歌うんか!」と一発でやられちゃいましたね。安月名さんってアコギがめっちゃうまいんですよ。指が8本くらいあるんじゃないかってくらい。リズム感とかもすごいです。

MVもシンプルで、歌詞が蜘蛛の糸みたいに出てくるのがかっこいいです。アニメのOP映像でも音が、バチバチっとはまるのが気持ちよくて、OP映像大好きっ子としてはもうたまらないですね。

 

出口 「蜘蛛」はOPもEDもよかったですね。サメさんと作品がかぶっててよかった(笑)。自分の感じ方は間違ってなかったなって。

 

鮫島 あははは(笑)。で、僕の次の曲が「無職転生」なんですけど、OP映像大好きっ子の僕としては完全に裏切られました。全話、歌が本編の中で流れてたんです。アニメのファンなら、90秒多く本編が観れて嬉しいところですよね。こんな演出はほかでは見たことないです。

曲自体も好きで、スローバラードな感じで本編をじゃましないんだけど作品にすごくあっているところが素敵なんですよね。

 

 

──ゆったりしたOPテーマのファンタジーアニメって「ロードス島戦記」とか「天空のエスカフローネ」とかあの系譜ですよね。正統なファンタジーアニメの後継者だと思います。

 

出口 確かにそうですね。

 

鮫島 そしてフジファブリックの「楽園」。「Dr.STONE」2期のOPなんですけど、1期のOPがBURNOUT SYNDROMESの「Good Morning World!」とか、PELICAN FANCLUBの「三原色」みたいにジャキジャキしたロックなのに、フジファブリックの曲はBPMが遅くてちょっとOPっぽくない感じなんですよ。

 

アニメの2期OPというと、だいたい1期の路線を継承していくスタイルかあえて裏切るスタイルの2種類で、今回は後者だと思うんですが、日本のロックという方向性は継承しつつも曲調は裏切るという、2期を待っていた者としては、これはこれでいい楽曲だと思いました。

 

出口 今年の傾向として、楽曲のBPMが落ちているというか、ゆっくりになっている傾向があるような気がします。速い曲もあるし、バンドがアニメソングをやるというと鮫島さんが言ったようなパワーのある曲を歌うイメージがあるけど、みんなそこにいかずに洋楽っぽいというか横ノリというか。そういう曲にシフトしているような気がします。

自分もこの曲をパッと聴いた時に、正直地味な曲だとは思ったけど、それが逆に今っぽいというか、めちゃくちゃカッコいいなと思った。

 

鮫島 最後の転調するあたりとかすごくいいですよね。

 

 

出口 「はたらく細胞BLACK」は、OPもEDもPOLYSICSだったんだよね。OPは「キュウソネコカミ」ボーカルのヤマサキセイヤさんがやってて、あの曲もすごいよかったんだけど、POLYSICS色はEDのほうが強かったなと思う。完全に70年代、80年代のニューウェーブの音で、P-MODELとかヒカシューとかあのあたりのイメージ。

すごくナンセンスなんですよね。ちょっとへんてこりんだし、かっこいいのかと言われれば、かっこいいのかな?ととまどっちゃうんだけど、パンキッシュだしブレてないですね。サウンド的には、やっぱり体の中の細胞の話じゃない。それが律動しているというか、同じ動きをしているというのと、ニューウェーブ特有の等間隔で刻まれるビートがマッチしている。

 

──本編がすごくハードなのに、EDのこのノリでズコーってなるのがいいですよね。

 

出口 そのギャップもうまい。体内で起こっていることをものすごくドラマチックに描くと本作みたいなことになるわけだし、コミカルに描こうと思えば「はたらく細胞」本編のようにもっとコミカルになるわけで、このギャップみたいなものをアニメ本編と楽曲で、裏と表、陰と陽のように表現していて楽しいですね。これがもっとシリアスな楽曲だったら、よりハードな作品になっていたと思うんだけど、POLYSICSがやったというところがすごくマッチしていた気がします。

そして、「Undulation」崎山蒼志です。「2.43 清陰高校男子バレー部」はOPもよかった。

 

 

鮫島 これは僕もギリギリまで候補に入れてました。

 

出口 ちょっとずるいというか。アニメソングとしてはOPもEDも正統派じゃないんだけど、難しいんだよな。「いい曲だから、いい」という感じなんだけど。崎山さんはもともとオーディションとか閃光ライオットとか出てて、おそらく世間が最初に気づいたのが「バラエティ開拓バラエティ 日村がゆく」(AbemaTV)ですよね。あれでみんなびっくりして、その時点でオリジナルが数百曲あるとかで、とんでもないのが出てきたなと。そこからすぐにメジャーにいったんですよね。

歌がすごくうまいタイプじゃないけど、独特なんだよな。個性がめちゃくちゃ強いから、こういうタイアップものって合わない時は全然合わなかったりもするんだけど、むしろここまで尖ったアニメだからこそはまったのかなという気もする。

 

鮫島 確か崎山さんは、今年「僕のヒーローアカデミア(第5期)」のEDもやっていましたね。もしかしたらオタク層にはまる方なのかも。

 

──「2.43」は高校の部活ものというところで、ビビッドな感覚がはまったのかもしれないですね。

 

出口 こういう作品のタイアップだと、わりと爽やかというかエバーグリーンな感じが求められる場合が多いけど、その中においても異常な立ち位置なのが「Undulation」。ほかと比べて明らかにおかしい立ち位置の声ですが、それが生々しく等身大な感じがある。なんとなく「いいよね」っていう聴かれ方じゃなくて、「俺たちの歌だ」「私たちの歌だ」っていう聴かれ方をするというか。

 

鮫島 (崎山さんって)いい意味で童貞感があるじゃないですか。彼には、僕らみたいな童貞ノリを忘れられない人をも許してくれる感じがあるから、そんな人たちから支持されるだろうし、だからこそアニメの世界に来てくれて嬉しいという気持ちはあります。「2.43」自体がスポーツアニメだけど暗い話も多かったから、ちょうど崎山さんの世界観とも相性がよかったんでしょうね。

 

出口 ネガティブな印象なんだけど、ポジに変換するというか希望につながるところが崎山蒼志の稀有なアーティスト性だと思いました。なんか、ちょうどバランスのいい3曲同士になったかな。

 

鮫島 そうですね。僕、最後まで「ワンダーエッグ・プライオリティ」と悩んだんですよ。このクールは、ほかにも「ウマ娘」もありましたよね。「やくならマグカップも」もこのクールでしたね。

 

2021年春アニメ

<出口>

「ODDTAXI」スカートとPUNPEE(「オッドタクシー」OP)

「#ボクノユビサキ」林原めぐみ(「SHARMAN KING」第1期ED)

「ぶつかれ!ダイナマイトバトル」NORISTRY(「ベイブレードバーストDB」OP)

 

<鮫島>

「REVENGE」フランシュシュ(「ゾンビランドサガ リベンジ」1話、12話挿入歌)

「EVERYBODY! EVERYBODY!」芹澤優with DJ KOO & MOTSU(「異世界魔王と召喚少女の奴隷魔術」第2期OP)

「壁の向こうに笑い声を聞きましたか」トニーフランク(「オッドタクシー」6話ED)

 

出口 なるほど!

 

鮫島 このクールはけっこう悩んだんですよ。「東京リベンジャーズ」のOfficial髭男dismもあるから。ほかにも「スーパーカブ」、「ヒロアカ」、「ゴジラS.P」もありましたし。

 

出口 「SSSS.DYNAZENON」もあったんだよな。

 

鮫島 「灼熱カバディ」もバカバカしくて好きでした(笑)。では出口さんからどうぞ。

 

 

出口 やっぱり「オッドタクシー」かなあ。連載でも触れたんですよね。もうこれだろうと。新しさもあるし、映像もよかった。アニメ自体にも合ってる。1990年代っぽいと言ったらそれまでなんだけど、ビートがガツガツしていないというか。ヒップホップがゆるい時代の匂いがあるんだけどグルーヴもあってメロもいいし、この組み合わせもすごくよかった。今年で一番よかったのかもしれない。

 

 

鮫島 僕も「オッドタクシー」よりトニーフランクの「壁の向こうに笑い声を聞きましたか」。トニーフランクって吉本の芸人なんですが、吉本の中で一番のシンガーソングライターなんじゃないかと思ってるんですよね。「オッドタクシー」って吉本の芸人がたくさん出てて、正直、最初は「どうかな」と思っていたんですけど、全然違和感がありませんでした。

ダイアンさんが演じてるホモサピエンスっていうお笑いコンビが出てくるんですけど、このコンビが6話でコンビ格差がドドンと出てしまうんです。もともとネタを作ってコンビを引っ張ってたほうじゃなくて、相方のツッコミが売れてしまって「これからどうすんねん」って言ってる後ろでこれが流れてるんです。だから令和の「浅草キッド」みたいな曲なのかなって思ってます。私も同じような境遇にある物として(笑)、人一倍刺さりました。一時期こればっかり聴いてましたから。

 

──すごく生々しいアニメでしたよね。

 

出口 その裏側の描き方も含めてひとつのエンタメになっているのが、今のお笑いの方たちだと思うんですよね。そのひとつが「M-1」で、M-1本番までのドキュメンタリーとかやるじゃないですか。あれを見ると感動せざるを得ない。

 

鮫島 そう。バイトしてればしてるほどいい。

 

(一同笑)

 

出口 周りが親身になって応援してたりとか、そこに一番ドラマがある気がする。本番ももちろんドラマなんだけど、ひと昔前だったらそこは絶対に出しちゃいけない部分じゃないですか。裏でがんばってて当然だし。

 

鮫島 中川家さんとかますだおかださんが優勝された時は、そんなドキュメンタリーチックな演出はなかったですね。

 

出口 「最後の!」とか「ラストイヤー!」とか。たとえば笑い飯の「いよいよ最後の挑戦!」とか、番組の中で積み立てたドラマを我々は観ていたわけだけど、最近はもう全部最初から用意していますという。

 

鮫島 面白いのは当然として、そこにどんな付加価値を付けられるかはあると思います。人生全てを見せないといけない時代なんでしょうね。

 

出口 役者の方も、わりとそういう見られ方をする気がする。下積みがあって、みたいな。ミュージシャンってそこが意外となくて、苦労していた時代とか下積みがあまりドラマにならない。売れる、と言っても「何をもって売れるの?」みたいなところがあって。

 

──芸人さんとかだと、テレビに出まくるみたいなところがひとつの目標みたいところがあるけど、確かにミュージシャンだと、もう少し多様性があるように思います。単純にCDが売れるだったり、メディアに出る以外に、自分の世界観を追求するとか、ライブでものすごく評価されるとか。評価軸がいくつもある。だからバンドものアニメだと、なかなか明確な対立のドラマを作りにくいというのがあるのかもしれませんね。

 

出口 だからバンドを題材にしたアニメって、バンドの活動であったり音楽自体がテーマになりにくく、全体的に内容が希薄な感じがあって。

 

──だ、大丈夫ですか?

 

出口 大丈夫です(笑)。現実のバンド活動や運営、楽曲制作は本当に地道な作業の積み重ねで、曲が完成したとかライブとかそういった瞬間にドラマが生まれる。1クールのアニメに置き換えると、13話中12話は画面の変化がほとんどないリハーサル風景、あるいは作曲作業が続き、13話の最後に一瞬だけドラマが生まれる。そう考えると、アニメでバンドものを扱うのは難しいんです(笑)。

 

鮫島 「オッドタクシー」に話を戻すと、登場人物がそれぞれ違う人生を歩んでいて違う立場なんですけど、それが最後に集結していく流れがよくできているなあと思いながら観ていました。普段アニメを観ない人も観ていましたね。

 

出口 芸人さんたちが声を当てているというのが呼び水になったとは思うんだけど、それがちゃんと意味があるキャスティングでしたね。

 

鮫島 主演が花江夏樹さんだったんですけど、「鬼滅の刃」の炭治郎とは全然違うのも驚きました。というわけで次の曲なんですが、自分は「EVERYBODY! EVERYBODY!」です。これは今年一番アホな曲だったと思います。以上です!

 

 

出口 わははは(笑)。

 

──DJ KOOとMOTSUと芹澤優の陽キャ3人が集まると、まあこんなにも能天気になるんだと。

 

鮫島 今のこの世界に一番必要な曲かもしれません(笑)。

 

出口 1990年代の音楽バブルの時代の、制作費がものすごい出ていた時代のサウンド感。100万枚とか普通に売れていた時代の空気がそのまま出ているというか。

 

──1980年代、1990年代からずっと現役のレジェンド2人が、最先端でバカバカしいことやってるのもすごいし、そんなレジェンドに対して堂々としている芹澤優の胆力もすごいですよね。

 

出口 そんなすごい人たちが、今も当時の最先端のノリをやっていて、それが非常に滑稽なんだけどかっこよく見えるっていうのもすごい。

 

鮫島 そうそう。アー写もバカバカしすぎるんですよ(笑)。

 

出口 時期的にもふさぎがちな時期だったし、世の中全体にもういい加減にしてくれという空気が蔓延している中で、いい加減にしてない人たちが皆に元気を分けてくれたのかなって。

 

鮫島 何度か行ったアニクラでも流れてて、しっかりフロアは盛り上がってました。やっぱりみんなこういうのが好きなんだなって感じました。

 

出口 次は「ベイブレードDB」の「ぶつかれ!ダイナマイトバトル」ですね。これはサメさんと一緒で曲がかっこいい、以上! ベースがすごいカッコいいんです。

 

 

──Aメロ、サビ!みたいなシンプルさですよね。Bメロすらないという。

 

出口 構成としては1コードのリフものの、ダンスロックみたいな感じなんですが、これがいわゆる男子ものアニメの主題歌というのが、正しくアニメソングだったなと。「オッドタクシー」は完全に大人向けというか、対象年齢が作っている側と同じ世代だからそういうところでマッチした感じなんだけど、男子向けアニメってやっぱり男子を盛り上げてなんぼだよねって、元男子だった自分としては思うわけです。きちんと楽器もカッコいいし、フレーズもカッコいい。もう語ることはないですね(笑)。

 

鮫島 自分のもうひとつの曲は「ゾンビランドサガ リベンジ」第12話に流れた「REVENGE」です。佐賀ライブの最後のシーンに流れた曲です。

 

劇中で佐賀県が水害にあうんですけど、同時期に実際に佐賀県が水害にあってたんです。そこから立ち上がっていこうという物語の意志もあったり、以前、佐賀スタジアムで大恥をかいたフランシュシュが同じ会場を満員にして、ここからリベンジしようという思いが乗っていたりして、本当に素晴らしいシーンでした。ライブシーンのカメラワークとか演出も100点だし、そこにいくまでのドラマもいいし、ここから私たちはまた立ち上がるんだという意志が込められた歌詞もいいし、何度観ても泣けるんですよ。

いつか本当にコロナが落ち着いて、またこういう満席のライブが見れるだろうという希望も感じるんですよね。この回であと2曲、ライブ曲があるんですよね、コールアンドレスポンスもあって希望を感じさせてくれる作品でしたね。

 

──最終話は盛り込みすぎて尺が足らなかったので、CMを入れずに27分間ノンストップで放送されたんですよね。作品のために放送フォーマットを変更したのはすごいと思いました。

 

鮫島 本当にこの作品に関わって努力してくださった皆さんに感謝ですよね。そしてフランシュシュは全員歌がうまい! 本当にすごいです。毎回泣いてしまう。

 

──そして「SHARMAN KING」の「#ボクノユビサキ」です。

 

出口 皆大好き「SHARMAN KING」ですよ。OPは正直ピンとこなかったというか、俺たちの知っている「Over Soul」が強すぎたので、どうしてもそれを求めてしまうんですが、EDはびっくりしちゃった。人力でボカロをやっているんです。ボーカルの処理は当然機械でいじって声質もボーカロイドっぽく寄せてはいるんだけど。

 

 

鮫島 これ、林原めぐみさんですか? すごい!

 

出口 さっきの「がんばれ!蜘蛛子さんのテーマ」と、すごいと思ったポイントが一緒で、こんなこともできるの?っていう。

面白いのが、人間の声を合成して作ったのがボーカロイドで、人間が歌えないようなものを歌わせてみるいっぽうで、どんどん技術が蓄積されて人間に限りなく近い歌い方もできるようになってきている。そうなると、だったら最終的には人間がやったらいいじゃん。やっぱり人間ってすごいよね、っていう逆転現象が起こったのがこの曲です。人間もスキルが上がっていくと、最終的に人間っぽくないことまでできてしまうというのはすごいと思った。

この曲もいい曲というか声優さんってすごいなーっていう曲です。

 

──最後に人間らしい歌声に戻るところもエモいですよね。

 

出口 うん、めちゃくちゃエモい。そういう意図はないだろうけれど、人間をなめんなっていう感じが出てる。

 

鮫島 よみがえるというイメージなんですかね。

 

出口 そう! それを言いたかった(笑)。加工してない声だと思うんだけど、そのディレクションもすごくいいし、だったらボカロに歌わせればいいじゃんっていう人もいるかもしれないけど、そういうことでもないし、かっこいい曲ですよね。やっぱり人力ってすごいなって思いました。

 

──人力という話でいうと、冒頭で出口さんが語られたように、今年のアニソンはバンドものが多かったですよね。やはり生の演奏、人力の熱みたいなものが求められたのかなと。

 

出口 「がんばれ!蜘蛛子さんのテーマ」も、言ってしまえばボカロ曲のような歌詞の詰め方をしてたし、人間が歌うことを想定していない譜割りをしていたじゃないですか。それを人間が機械よりも完璧に歌うことで、不揃いな人間の呼吸とかが浮かび上がってきて、それがいい方向に作用しているのが「人力の妙」だなって。

打ち込みの音楽って、譜面に音符を置いていってしかるべきタイミングで音が鳴るようにセットしていくんですけど、そうすると全ての音が100%ぴったりのタイミングで鳴るので、そこからわざと少しずつずらし発音をガタガタにするんです。そうすると、より生っぽく鳴る。今は何でもできる技術があるけど、それを誰がどう使うのか。改めて音楽って人間がやると面白いよねって思いました。

話はそれちゃいましたけど、声優すごい!です。

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