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第5話のエンディング「My Sunset」には、過去と決別して紅華に来た彼女たちの想いを込めました
── 音楽集のDISC1には全44曲の劇伴が収録されていて、それが使われていたシーンを思い浮かべながら聴くことができました。DISC2は、「発声練習」とか「校歌斉唱」など音楽がからむシーンのための曲や、「レビュー眩し恋せよ乙女」 「紅華版『風と共に去りぬ』」といったまさに舞台のための音楽が序盤にあって、9曲目の「校歌『桜吹雪舞うなかに』」以降はボーカル曲がたっぷり収録されています。印象に残った曲として、まずは、さらさと愛のデュエットバージョンとそれぞれのソロバージョンの合わせて3曲が収録されている「彼の地へ」があります。 斉藤 この曲は紅華歌劇団が始まった大正時代から歌われてきたという設定で、紅華の伝統を表現した曲になっています。だから歌詞が古風なんですね。それを今でも予科生は歌わされているという(笑)。第5話で少しだけ使われました。
── この曲が流れるシーンでみんなが持っていた楽譜に、作詞・作曲者として斉藤さんの名前が書かれていたのに気づきました。 斉藤 100年前の斉藤恒芳です。大正時代にもいたんですね(笑)。
── そして第5話では山田彩子(CV:佐々木李子)の「My Sunset」がなんと言っても印象に残りました。劇中で流れて、そのままエンディングになっていくという使われ方をしていましたし、この話数の山田さんはすごくよかったです。 斉藤 彼女のセリフにもあったように「My Sunset」は山田彩子が紅華の入学試験のときに歌った曲なんですね。受験という勝負の場で歌うためにみずから選んだ曲ということで、彼女が心を込めて歌いたいのはどんな歌詞なのかなというところから考えて、詞先で作っていきました。
── 山田さんの想いを、どのように表現しようと思ったのでしょうか? 斉藤 山田だけではなく、さらさも愛も薫も紗和もみんな、自分の元の生活と決別して、紅華歌劇音楽学校というまったく違う世界に飛び込んできました。それは普通の中学生や高校生だった自分にけじめをつけ、友だちともお別れをしてきたということで、紅華に入ってからは夏休みで地元に戻っても、自分から進んで友だちに会おうとはしないように思うんです。でも昔の友だちはずっと大切なままで、今も心の支えになっているという想いを、きっと彼女たちは持っているんじゃないかなと。それで、子どものころに忘れられない別れがあって、今の自分があるという歌詞を、「ぼく」という一人称で男の子を主人公に書いていきました。
── 思い出を描いた歌であり、決意の歌であるということですね。 斉藤 山田彩子なら、きっとこの曲に共感して自分を投影するんじゃないかと。第5話は悩みのあまり摂食障害になってしまった彼女が、小野寺先生の助けもあって自分を取り戻していく話で、最後に小野寺先生の教室で「My Sunset」を独唱するんですが、そのときに受験のときの気持ちや、今までの自分を思いだして歌うというのがドラマチックでいいなと。
── 本編で描かれていないバックボーンが、劇中歌で補完されたシーンだったということですね。みんなが山田さんの見事な独唱に驚く中で、受験で同じ組だった薫が「私は知ってた」と心の中で言ったのにも感動を誘われました。 斉藤 彼女たちの誰もが自分の事情を抱えつつ、今までの生活とはまったく切り離された紅華歌劇音楽学校にいるというのが、「かげきしょうじょ!!」の面白いところ、心惹かれるところだと思います。芸の道に入るということは、何かを捨て去るということなんですね。芸事をしながら、自分の生活に戻れば彼氏がいるというような人よりも、何かを引き換えにその道を選んだ人が最終的に残ると思うんです。さらさたち予科生というのは、何かを捨ててきた人たちの集まりなんですね。メインの7人だけでなく本科生の野島聖も中山リサも、それから安道先生や里美星といった人たちも、みんないろいろな思いを抱えていて、ストーリーが進む中でそれが少しずつ明かされていくのが、この作品の面白さだと思います。