それは露崎まひるの見た夢か──「少女☆歌劇 レヴュースタァライト3rdスタァライブ“Starry Diamond”」ライブレポート

2019年11月19日 16:420

第二部 「少女☆歌劇 レヴュースタァライト -Re LIVE-(スタリラ)」ライブ

出演者:聖翔音楽学園(スタァライト九九組)/愛城華恋役・小山百代、天堂真矢役・富田麻帆、星見純那役・佐藤日向、露崎まひる役・岩田陽葵、大場なな役・小泉萌香、西條クロディーヌ役・相羽あいな、石動双葉役・生田輝、花柳香子役・伊藤彩沙、神楽ひかり役・三森すずこ

シークフェルト音楽学院/雪代晶役・野本ほたる、鳳ミチル役・尾崎由香、鶴姫やちよ役・工藤晴香、夢大路栞役・遠野ひかる

凛明館女学校/巴珠緒役・楠木ともり、音無いちえ役・和氣あず未、夢大路文役・倉知玲鳳、秋風塁役・紡木吏佐、田中ゆゆ子役・佐伯伊織

フロンティア芸術学校/大月あるる役・潘めぐみ、野々宮ララフィン役・富田美憂、胡蝶静羽役・佐々木未来

 

2部はスマホアプリ「スタリラ」のライブということで、華恋たち聖翔音楽学園以外にシークフェルト、凛明館、フロンティアという3つのライバル校のキャスト陣が登場。

昨年末にパシフィコ横浜で開催された「2ndスタァライブ "Starry Desert"」でオープニングアクトを務めたシークフェルト以外は、「スタァライト」ライブ初参戦となる。第二部の前半は各校がそれぞれの魅力を見せるライブ、後半は学校の枠を超えた組み合わせのライブとして構成された。

 

九九組の9人が「スタリラ」テーマソング「ディスカバリー!」を歌っていると、会場後方や両サイドから各校の舞台少女が次々に登場。観客の意識が各方向に散りかけたところで、会場奥から手前に向けての三連側転などの大技で意識を引き戻すのが流石だ。「よろしく九九組」は聖翔の舞台少女たちの自己紹介ソング。各舞台少女のキャラクター性がよく出たパフォーマンスで、やっぱりクロディーヌ(相羽さん)は真矢(富田さん)にライバル意識バリバリな姿が一番かわいい。ステージ各所でペアムーブを見せるくだりは、ステージで喧嘩→澄ましてバレエのポーズ→再びわちゃわちゃ、を無言で繰り広げるふたかお(伊藤さんと生田さん)の独壇場だった。

 

 

ライバル校のトップバッターはフロンティア芸術学校の「ショウタイム フロンティア!」。黄色、ピンク、緑のイメージカラーの3人が、サビでは行進したり、未踏の大地を踏みしめ歩くようなステップワークが楽しい。センターの潘めぐみさんは、歌声にはっとするほど印象的な瞬間がある。ポジションチェンジで佐々木未来さんがセンターに入ると堂々たる存在感がこれまたしっくりハマるのがこれぞフロンティアという感じ。最後は肩を組んでの楽しげなラインダンスから、戦隊ヒーローのようなキメポーズで締めくくった。

 

フロンティアのデュオ曲「キミも私もアリス」は原曲メンバーの潘めぐみさんが歌唱、今回出演していない竹達さんのパートは佐々木未来さんが担当した。トロッコに分乗した2人が後方に向かうと、客席がイメージカラーの黄色と緑に染まる。トロッコの周りの観客が捧げるサイリウムが、近くに来た演者のイメージカラーにさっと変わっていくチームワークのよさは「ミルキィホームズ」より連綿と続くブシロードコンテンツの伝統だろうか。

 

凛明館女学校は、倉知玲鳳さんと紡木吏佐さんのデュオで「鬼紅忍絵巻 -おにくれないにんえまき-」を披露。鬼影と紅影を宿した2人のパフォーマンスは鬼気迫る感じで、ゲーム内の舞台上の物語を色濃く感じさせた。2人が片膝をついて舞台が暗転、再び光が灯るとそこにはみやびなたたずまいの凛明館舞台少女が5人揃い踏み。楠木さんと紡木さんの一騎打ちを軸に、和の装束の5人が華やかなパフォーマンスを繰り広げた。

 

 

強く印象に残ったのは珠緒を宿した楠木さんの動きや表情の鮮烈さと鋭さ。珠緒といえば日常のやわらかでやさしい姿の印象が強いが、舞台での珠緒はこんな風に凛としたかっこいい女の子なんだろうな、と作品世界のイメージが拡張されたような不思議な感覚だった。5人が並び立ったキメポーズをステージ下から煽りで撮った映像からは、これぞ千両役者という華があった。

 

ライバル校のトリはシークフェルト音楽学院。ステージの中心は雪代晶役の野本ほたるさんで、長身がもたらすダイナミックさと、サビで力強い歌声を響かせる存在感は王者のそれ。隣に立つ尾崎さんのかわいらしさとの対比がお互いを際立たせている感じは、晶とミチルそのままだ。工藤さんは伏せた眼差しの中で時おり見せる鋭い眼光がとても印象的。そして3人がまさに王者、という雰囲気だからこそ、その中でふわりとおだやかに笑う遠野さんの存在が際立った。

 

しかし、おだやかでやさしいだけではエーデル(気高き君)は務まらないのだな、と感じたのが、野本さんと遠野さんによる「Rose Poems」だった。野本さんの少しハスキーな低音にオリジナルな力強さがあるのは認識していたが、遠野さんの高音にも特有のしなやかな強さがあって、2人の歌唱が気持ちよく噛みあう。野本さんが遠野さんの肩を抱き、手を取り合い、見つめ合いながら歌う歌劇のようなステージだった。

 

後半の「追って追われてシリウス」「ゼウスの仲裁」「御してぎょしゃ座」「裏切りのクレタ」「1等星のプロキオン」「逆境のオリオン」は、星と神話になぞらえた6つのレヴュー“Starry Diamond”に、舞台少女たちが学校の枠を越えて挑むコンセプト。それぞれの舞台を演じながらも、舞台少女たちがポジションゼロの主を競うせめぎあいが描かれる。このパートは物語性が強いこともあり、基本舞台少女としての役柄で表記する。

 

「追って追われてシリウス」は双葉と香子が、凛明館女学校の舞台少女たちと和の共演を果たした。和ロックなサウンドに乗せて、ダイナミックな足取りで剣をふるう動きをダンスに取り込んでいくリズムはロックミュージカルのよう。孤立した珠緒が双葉と香子を相手に一歩も引かぬ立ち回りで見得を切り、その姿を見た塁が再び立ち上がる様は後輩を背中で導いているようだった。ポジションゼロを奪い取ったのは双葉と香子!

 

「ゼウスの仲裁」では倉知さん演じる夢大路文と、遠野さん演じる夢大路栞の夢大路姉妹が並び立った。ふたご座の神話をモチーフにした舞台の上で、感情のすれ違いを見せる姉妹を、ゼウスたるクロディーヌはうまく取りなすことができるのか?という多重構成が面白い。興味深かったのは“殺陣”で物語を表現していたことで、剣を戦わせる姉妹の形勢が片方に傾くと、自然に第三勢力としてクロディーヌが割って入ることで決定的な決裂を防ぐ。やがてわだかまりが解けた姉妹が共にダンスを踊ると、姉妹の仲直りという難題を成し遂げたクロディーヌがポジションゼロに立った。

 

少し毛色が違ったのが、純那、ゆゆ子、ララフィンによる「御してぎょしゃ座」だった。3人は和の味つけのコミカルな楽曲の中で、ラップバトルっぽいフレーズを織り交ぜた多彩な表現を見せた。曲の冒頭にはそれぞれが名乗りを上げ、ゆゆ子は落語、ララフィンはヒーローと、それぞれの個性を見せる。ララフィン役の富田さんが舞台少女としての名乗りを叫んだ途端に、“ララフィンらしさ”が吹き上がるように横アリに立ちのぼり、そこからはもう彼女がララフィンにしか見えなくなってしまった。ララフィンがハンマーを叩きつけると重い手ごたえのエフェクトと効果音が起こり、ゆゆ子は苦無を振るう。キャラクター性と結びついた武装による殺陣も、彼女たちのキャラクター表現を後押ししていた。最後にポジションゼロを勝ち取ったのは純那。優等生がコミカルに、ちょっとバカになって見せることで殻を破ったように思えた。

 

演者の存在感と殺陣が、舞台少女の苛烈な一面を感じさせたのが「裏切りのクレタ」だった。天堂真矢と大場ななという聖翔最強の個人戦力が並び立つ姿には圧倒的な説得力がある。そこに、シークフェルトはミチルとやちよという曲者コンビが対峙するのが面白い。両校のタッグと、巨大なサイズを手に単騎で伍する静羽という組み合わせはまさに役者がそろった感じがある。

 

三校三つ巴の激闘の中で、隙あらば味方同士でも切り結ぶ姿はまさに「裏切りのクレタ」の名にふさわしい。天堂真矢vs魔王モードのばななというマッチアップの中で、好敵手を得た喜びに真矢が獰猛でつややかな笑みを見せる。この日の富田麻帆さんは幾つもの繊細なニュアンスの笑顔をステージで見せていたのが印象的だった。

 

激闘から一転、「1等星のプロキオン」はまひる、いちえ、あるるがナンバーワンアイドル犬を目指して(?)かわいさとキラめきを競い合うステージになった。いちえ役の和氣あずみさんも名乗りをきっかけに一気にいちえらしさ、陽性のキラめきと天性のアイドル感が届いてくるように感じたので、楽しいタイプのレヴューは初めてリアルライブに立つ舞台少女たちの魅力を伝えようという意図があったのかもしれない。いずれ劣らぬアイドルぶりの3人の中で、まひる=岩田さんの楽しくて仕方ない様子のとびっきりの笑顔が印象に残った。3人でキラめいて一緒にポジションゼロに立つ結末もまた、露崎まひるという少女らしかった。

 

「逆境のオリオン」はゲームの「スタリラ」内イベントとライブが連動しており、ゲーム内イベントのボスとして雪代晶が登場する。6つの星座のレヴューのトリで、聖翔音楽学園の運命のふたりを相手に晶が“ラスボス”としての存在を示すことが求められるステージだ。適度に力の抜けた立ち姿勢で、片手の大剣を無造作に構える姿は、これから斬って斬りまくる出入りに向かうような風情。貫きに特化した槍のような異形の大剣を、振り回すように振るう殺陣は晶のオリジナルだ。

 

そんな晶とひかり&華恋の戦いを象徴していたのが、双方の歌声だ。晶のパワーボイスにふたりが美しいハーモニーを重ねることで、異質な歌声がきわどいバランスで均衡する。やがて、ラストのかけ合いでは3人のボーカルが高く崇高な歌声に調和していく。打ち倒すのではなく、溶け合うような結末。剣と剣を重ねた華恋とひかりがポジションゼロに立つが、その奥で2人に背を向けた晶の姿はなお誇り高く。エピローグの映像の「ぶつかりあうことでわかることがある」というフレーズが印象的だった。

 

6つの星座のレヴューが終わり、本編のラストは九九組による「Star Diamond」。ステージの上段にはともにレヴューを作り上げた3校の舞台少女たちが現れ、一緒にステージを締めくくったのだった。

 

 

アンコールではさまざまな発表が行なわれたが、その中でも特級の発表が「少女☆歌劇 レヴュースタァライト」劇場映画として、「再生産総集編」と「完全新作劇場版」の2作品の制作が告知された。「再生産総集編」は2020年初夏の公開を予定しているとのことだ。劇場版発表を受けての九九組最後の挨拶では、三森さんが第一部に出られなかったこと、応援してくれるファンのためにも「願いは光になって」を一緒に歌いたいとメンバーが望んだことが語られた。三森さんが「この9人で、九九組でいられてよかったと思う瞬間がたくさんあった」と話すと、9人は抱き合って涙を流しながら想いをひとつにしていた。

 

2020年7月に舞浜アンフィシアターで開催される舞台新作公演、そして劇場版の公開。熱い夏に向けて、舞台少女たちは再び走り出す。

 

(取材・文/中里キリ)

 
【セットリスト】

■第一部 スタァライト九九組ライブ

M01:舞台少女心得

M02:舞台プレパレイション

M03:キラめきのありか

M04:ロマンティッククルージン

M05:恋は太陽 ~CIRCUS!~

M06:Circle of the Revue

M07:GANG☆STAR

M08:You are a ghost, I am a ghost~劇場のゴースト~

M09:My friend ~Arrie~

M10:情熱の目覚めるとき

M11:約束タワー

M12:スタァライトシアター

M13:Fly Me to the Star

M14:Fancy you

M15:願いは光になって

M16:星のダイアローグ

 

■第二部 「少女☆歌劇 レヴュースタァライト -Re LIVE-(スタリラ)」ライブ

M17:ディスカバリー!(スタァライト九九組)

M18:よろしく九九組(聖翔音楽学園)

M19:ショウタイム フロンティア!(フロンティア芸術学校)

M20:キミも私もアリス(潘めぐみ、佐々木美来)

M21:鬼紅忍絵巻 -おにくれないにんえまき-(紡木吏佐、倉知玲鳳)

M22:蝶になってみませんか(凛明館女学校)

M23:プラチナ・フォルテ(シークフェルト音楽学院)

M24:Rose Poems(野本ほたる、遠野ひかる)

M25:追って追われてシリウス(生田輝、伊藤彩沙、楠木ともり、紡木吏佐)

M26:ゼウスの仲裁(相羽あいな、遠野ひかる、倉知玲鳳)

M27:御してぎょしゃ座(佐藤日向、竹内夢、佐伯伊織、富田美憂)

M28:裏切りのクレタ(富田麻帆、小泉萌香、尾崎由香、工藤晴香、佐々木未来)

M29:1等星のプロキオン(岩田陽葵、和氣あず未、潘めぐみ)

M30:逆境のオリオン(小山百代、三森すずこ、野本ほたる)

M31:Star Diamond(スタァライト九九組)

-encore-

EN1:舞台少女体操(ALL CAST)

EN2:Star Divine(ALL CAST)

関連作品

少女☆歌劇 レヴュースタァライト

少女☆歌劇 レヴュースタァライト

放送日: 2018年7月12日~2018年9月27日   制作会社: キネマシトラス
キャスト: 小山百代、三森すずこ、富田麻帆、佐藤日向、岩田陽葵、小泉萌香、相羽あいな、生田輝、伊藤彩沙
(C) Project Revue Starlight

少女☆歌劇 レヴュースタァライト ロンド・ロンド・ロンド(再生産総集編)

少女☆歌劇 レヴュースタァライト ロンド・ロンド・ロンド(再生産総集編)

上映開始日: 2020年8月7日   制作会社: キネマシトラス
キャスト: 小山百代、三森すずこ、富田麻帆、佐藤日向、岩田陽葵、小泉萌香、相羽あいな、生田輝、伊藤彩沙
(C) Project Revue Starlight

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