寿美菜子インタビュー 念願の「ポジティブな逃避行」を歌ったシングル「save my world」リリース
充電期間中は個々に立ち返る1年だった
── カップリング曲は「Take off with me」。
寿 これを書く少し前に「アイカツ!」のイベントがあって、トライスターというユニットがかけ声で「take off」と言うのがとてもよいワードだと思って、それを歌詞に入れたいと考えていました。そこから「take with me」などと書いていくうちに「Take off with me」というタイトルになりました。考えてみると、私は今まで自分のことを表す言葉はあまり入れてこなかったのですが「save my world」でも“my”と入っていたり、Take off with "me"もそうだったりして、今回はタイミング的に自然と出てきたしそれはそれでありかなと思って。これを私と思ってくれる方がいてもいいし、妖精のような別のマスコットがバケーションに連れて行ってくれる印象でとらえていただいてもいいかなと思います。
── 「Take off with me」の楽曲はどのような印象でしたか?
寿 ミドルテンポでもこういう系って今まで歌ったことがなかったし、シティポップ感もあるし、このジャンルが面白いんじゃないかと思って選ばせていただきました。これも「save my world」と同じく「逃避行」をテーマにしています。「save my world」が思ったよりストイックな印象の曲になったので、ちょっとゆったりと口ずさみつつ内容もリラックスした感じの歌詞が書けたらいいなとは思っていました。「逃避行」というテーマが決まって書いていると、すぐ「逃げればいい」とつい答えを言いたくなってしまいますが、いかにそこで「逃げる」という言葉で片付けないように書くかが今回の目標でした。着地点が決まっているからこそ、どこからスタートするかがどちらの曲も悩みどころでした。さらにこちらは仮歌の歌詞から英語が多かったので、そこでみんなが聴いてわかるにはどんな単語を入れたらいいか、やっぱり思いが通じてこそだと思うので、ネイティブからすると少し違った文法であっても、共感してもらうことを優先して言葉を並べていきました。
── 近いタイミングで似たテーマを書く難しさはありましたか?
寿 確かに難しいことをしている自覚はあったのですが、ありがたいことに楽曲の方向性が違ったので。それに元々「Take off with me」で書いたような、「ポジティブな意味で逃げるところに手を引っ張っていく」という気持ちがあったので、「save my world」のほうが絞り出した感じがありますね。順序としては後になりますが、「Take off with me」のほうが、もともと思い描いていたビジョンに当てはめやすい形ではありました。ただ、このゆるっとしたテンションや話し言葉感を出すには、普段とは違った言葉のチョイスをする必要がありました。「save my world」のほうは書くまでは大変だったけれども、書き始めたら普段使っているワードに近いものから潔く選ぶことができて、「Take off with me」は強さとゆるさのパーセンテージが難しかったです。
── 「fu~ 一息ついてから」なんて、ゆるさが出ている部分ですね。
寿 そうですね(笑)。最初ここは1文字余った感じだったんです(笑)。でも、伸ばすワードもピンとこなかったので、深呼吸につなげるには「fu~」っていうのもいいかなとアイデアとして出してみたらOKが出て、歌っていても新鮮でした。何パターンか録って、「このfuは疲れている」とか「これは明るすぎ」とかいろいろ試してみました。表記方法も、目で見て伝わりやすいほうがいいかなと「fu~」にこだわりましたね。
── こだわりが出るということから、作詞を楽しんでいらっしゃるようすが伝わってきます。
寿 「save my world」を歌ったときに、これは「自分だから歌える」と思いました。「dump」から「逆さまの地図」の箇所は自分で書いておきながら繋がりがけっこう難しくて、これが違う人が歌う歌詞だったら別のアプローチの仕方になるんだろうなと思いましたし、そういう機会があればまた別の言い方を探してたいですね。
── 自分の創るものを客観視することもこういうプロセスを経ることによってあるんですね。
寿 そうですね。「save my world」のレコーディングのときに後輩ちゃんが2人見学に来てくれたのですが、ある後輩ちゃんにとってはハモリが難しいことが、私にとっては元からあまり苦労することではなかったりもするし、逆に私にとって難しいことが後輩ちゃんにとってはなんてことなかったりもして。そういえばほかの方のレコーディングって見たことがなくて、自分のやり方を当たり前だと思っていましたが、今回そういう違いを知ることもできた機会でした。レコーディングでは気持ちの熱さを出すために、常に120%の力で叫ぶようにテンションを高く保つ感じでした。終えてみると、ずっと歌ってみたかった「逃避行」を形作ることができたからこそ、早くいろんな人に聴いていただきたいという気持ちです。
── 5月5日には「One day show up #1」が開催されますが、これは何か新しいライブのシリーズなのでしょうか?
寿 そういうシリーズになったらいいなという願いを込めて(笑)。1日限りのライブするのが初めてなんですよ。2018年はツアーも3年半ぶりぐらいにさせてもらったのですが、そこに向けてダンスレッスンを重ねて、そこで自分の個々を見てもらったり一緒に歌って楽しむ時間が多かったので、この「Show Up」では見て楽しんでもらったりダンサーさんに入ってもらったり、一緒に巻き込んで楽しむような演出だったりを考えています。今回の2曲もダンサブルな可能性を感じる曲なので、そこから広げていったらみんなにどう楽しんでもらえるのかも視野に入れています。ツアーではロックを中心として、「One day show up」ではダンサブルな形にすることもできます。いろいろ分けることでどちらも尊重できるという可能性もあったので、#5くらいまで続いたらクラブで開催するようなことができたら格好いいなと思っています。
── そして、2018年はスフィアの音楽活動が充電期間であった年でした、先ほどもロサンゼルスでの経験などをお話しいただきましたが、寿さんとしてはどのようなものを生み出せたと感じていますか?
寿 やっぱり個々に立ち返る1年だったなと思います。自分にとってはダンスと向き合うことが、なぜこんなに魅了されるのかや、なぜこんなに好きなのかと考える機会でした。今までも好きだと思ってはいましたが、なぜそこまで好きかは、芝居や歌ほどには考えたことがなかったんです。考えてみると、ダンサーさんたちに憧れがあったんですよね。性格的にも明るくて割と大胆な人が多くて(笑)。でも振り付けになった途端にすごくプロ意識が高いんです。ことお仕事において、動いて伝えるタイプのパフォーマンスはライブだけしかなかったので、それをより大事にしたいと思うからこそ、ダンスに惹かれていったのかなと思いました。ほかにも些細なことに対して、自分はなぜ好きなんだろうとか、どういう意識でいるんだろうと考えを巡らせ、その理由に気づきを得た1年でした。またスフィアの活動を再開するときには自分もさらにパワーアップしていたいと思っていたし、だからこそのこの1年間の経験だったと思います。活動も今まで通りに戻るというよりも、さらにブラッシュアップしたい感覚であるので、個人の活動も4人の活動も、決まりごとをするという認識ではなく、よい意味で「それって本当に自分で選んでるもの?」と自分を疑うような感じで、既成概念にとらわれ過ぎないで活動するような1年にしたいですね。
CD情報
■12thシングル「save my world」〈収録曲〉
1. save my world
2. Take off with me
3. save my world (Instrumental)
〈初回生産限定盤DVD収録内容〉
save my world
1.Music Clip
2.TV SPOT 15sec+30sec
画像一覧
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