出口博之×鮫島ヒロミが2018年のアニソンを語りまくる! 年末スペシャル「いいから黙ってアニソン聴け!」ロング対談!!

2018年12月28日 12:490

※本コンテンツはアキバ総研が制作した独自コンテンツです。また本コンテンツでは掲載するECサイト等から購入実績などに基づいて手数料をいただくことがあります。

2018年も残すところあとわずか。今年も数え切れないほどのアニメ、そしてアニメソングが生まれました。

そこで、昨年開催されたイベント「アキバ総研15周年大感謝祭」に続き、今年も出口博之さんと鮫島ヒロミさんがアニメソングについて大放談をかまします!

ベーシストにしてアニソンDJとしても活躍する出口さん、お笑いコンビ・BANBANBANのツッコミ担当にしてアニソンDJイベント「アニソンディスコ」を主催する鮫島さん。日々大量のアニメソングに触れ、深掘りしている2人だからこそ語れる2018年のアニソンシーンに注目だ!

 

なお今回は、2018年冬から秋までの各クールに放送されたアニメ主題歌から、それぞれのシーズンごとにTOP3を決めて、語り合ってもらった。

君のイチオシアニソンは入っているかな?

それでは始まり始まり!

  

出口博之さん

 

鮫島ヒロミさん



出口 ――というわけで、今日は2018年のアニソンを振り返りたいと思います。去年もやったけど……。去年はイベントで11月終わり頃にやったんでしたっけ?

 

鮫島 そうそう。

 

出口 その打ち上げの時で、鮫さんが願をかけてお酒をやめたって話をしてるのを聞いて、「じゃあ俺も」って翌日からタバコをやめたんです。それが今日で丸1年。

 

鮫島 おー! なんてお願いごとしたんですか?

 

出口「一生タバコ吸わないっす。だから仕事ください」「仕事増えますように」って。

 

――とりあえず、生きていけてるってことで、多少は御利益があったってことですよね。

 

出口 まあ……、うん(苦笑)。

 

鮫島 僕が酒をやめた時、「芸人を続けられますように。家族と東京で暮らせますように」ってお願いしたんです。実はその時、離婚もしそうだったんですよ。その時は、特に売れさせてくれとか、は言ってはなかったですね。

 

出口 その謙虚さが俺は足りなかったんですね。何が何でも仕事くれ! って思ってた(笑)。

 

――という枕を挟んで本題に入りたいんですが、その前にまずはお2人の今回の選考基準をうかがいたいと思います。

 

出口 去年はDJっていう視点でいろいろ振り返っていたんですけど、今年は単純に自分が好きなものというか、「この曲かっこいいな」というところで選びました。

 

鮫島 僕もまったく一緒です。全然DJでかけなかった曲とかもあります。

 

出口 よりパーソナルな感じが今年は出るんじゃないかな。

 

2018年冬クール

――では、さっそく2018年冬クールからいきましょう! このクールは「ゆるキャン△」、「宇宙よりも遠い場所」という2大ヒットアニメが生まれました。

 

鮫島 「宇宙よりも遠い場所」はめっちゃおもろかった。いわゆる美少女もの、高校生ものと思いきや、実は骨太な作風だったっていう。あとは「ポプテピピック」と「ゆるキャン△」。冬はこの3本かなと。でも、今回のランキングには入ってません(笑)。ということで、僕からいきます。まず第3位は星野源の「ドラえもん」! やっぱり「ドラえもん」とタイトルを付けた星野源の心意気がすさまじいなと。あと、歌詞の中に「出来すぎあの子」とか「静かなあの子」とかが出てきたりするし、「落ちこぼれた君」はのび太だろうし、「彼の歌も誰かを救うだろう」っていうのがジャイアンのことなんだろうなってやっぱり思いますよね。あと、出だしが「少しだけ不思議な」なんですよ。藤子・F・不二夫先生はSFのことを「少し不思議」っていう解釈で作ってらっしゃったということで、全部「ドラえもん」をしょって書いてるっていうのが、よかったですね。もう「ドラえもん」にしか使えない曲なんです。星野源が好きっていうとだいたいミーハーみたいに思われるんですけど、好きなんですよ。……僕もなりたい!

 

出口 うん。みんななりたいと思ってるからね。

 


鮫島 第2位が「劇場版マクロスΔ 激情のワルキューレ」。ワルキューレの「Dancing in the Moonlight」ですね。最初「ワルキューレは裏切らない」っていうシングルで発売されて、表題曲の「ワルキューレは裏切らない」目当てで購入したんですけど、この「Dancing in the Moonlight」が一番いいなと思ったんですよ。

 

――ワルキューレって、ディスコというかソウルミュージック的なアプローチの曲が多いですよね。

 

鮫島 これはまさにそういう曲ですよね。あとは曲の構成がよくて、A・B・サビと来て、A´・C・A・Bっていうね。まずサビに行かないっていうのがよかったですね。映画ではエンドロールで流れてくるんですけど、構成の妙もあって最後まで飽きずにずっと観てられたのもよかったですね。

 

――途中、キャラクターがセリフっぽくかけ合うところも気持ちいいですよね。

 

鮫島 あそこもいいですね。すごくいい曲でしたね。で、1位は「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」のオープニング「Sincerely」……TRUEさんの曲ですね。

 

出口 あれはよかったですね。

 

 

鮫島 これもうアニメが泣けた。1話から、最初から毎回泣けましたね。主人公のヴァイオレット・エヴァーガーデンの成長に即した歌詞になっていて、サビの前の「書きかけてはやめた」のところで一気に気持ちが燃え上がります。この曲はDJでどうしてもかけたいという思いがあって、スクリーンに歌詞を流してお客さんと一緒に歌えるようにしましたね。

 

――会場は合唱ですか?

 

鮫島 合唱ですね、大合唱! クイーンみたいな、劇場型な感じの曲でよかったと思うので、1位にしてます。

 

――では出口さん、お願いします。

 

出口 はい。3位はMIYAVI vs Kenkenの「Flashback」。「刻刻」のエンディングです。2018年を振り返るにあたって、ひとつ印象に残っているのが「洋楽っぽい曲」というのがあります。今年は、わりとオーソドックスでわかりやすいアニソンと、それと対になっている「洋楽っぽい曲」が多かった気がします。去年はどっちかっていうと90年代の渋谷系みたいな音が多かったので、今年はそれの流れがくるかなと思いきや、わりと英語の歌詞だとか、まんま洋楽使ったりしていましたね。この「Flashback」はリズムがすごく強い……というか、リズムしかない。MIYAVIさんとKenkenさん両名ともメロディックというよりは、パーカッシブなプレイが特徴な人たちだから、そういう人たちの曲がアニメのオープニングテーマになるっていうのは面白いなって。

 

 

鮫島 サビとかないんですもんね。ずっと「ウォウウォウウォー」っつって、最初は聴き方がわからなかった。DJでも切りどころがわからなくて、最後までかけてしまった。

 

出口 切りどころがないっていうのは、どこで切ってもいいってことだし、どこでループしてもいいということ。KenkenさんもDJをよくやっていて、わりとその辺の文脈というか、気持ちいい部分がどこなのかっていうのをすごくわかりやすく落とし込んでる感じがあります。

 

――ちなみにエンディングは、天才こと「ぼくのりりっくのぼうよみ」さんなんですよね。

 

鮫島 オープニングもエンディングもとんがってますよね。

 

出口 アニメっぽくないっていうのが、すごく印象的でした。で、2位は「伊藤潤二コレクション」の「互いの宇宙」(JYOCHO)。これはもう……優勝! リズムというか拍子がずれていく曲で、……なんて言ったらいいんだろう。めちゃくちゃ旋律がきれいですごく細かいんだけれども、どっか、ネジが外れてる感じがして、そこが好き。

 

鮫島 アニメ自体もネジ外れてる感じですもんね。

 

 

出口 怖かったですね、夜中に伊藤潤二さんの絵は見たくないって(笑)。マンガとして読んでれば半分ギャグになるから、ちょっと笑っちゃったり、「おお~!?」 みたいな感じで楽しく読めるんだけど、アニメというか、また違ったフィルターを通すと「なんかいやな感じだな~」って。ちゃんと怖かった。

このジトーッと湿った怖さみたいなところに、この曲がすごくハマっていたと思う。きれいで、ドリーミーな感じというか……悪夢的な感じ、みたいな。そこがアニメソングっぽくない感じではあって、2位にしました。で1位は、「DEVILMAN crybaby」の第9話エンディング「今夜だけ」。

 

鮫島 美樹ちゃんが死んだときの話かあ……。

 

出口 (石野)卓球さんと七尾旅人さんの曲で、最初はギターと歌だけなんです。歌もすごく短いメロディで、それがどんどん繋がっていって、リズムが足されていって。まったく派手な曲じゃなくて、すごいやさしい曲。いい曲ですよ。

 

――たぶん地上波アニメじゃ出てこない曲ですよね。

 

出口 うん。出てこないですね。この曲の流れた9話が一番のクライマックスというか、ピークだった。

 

鮫島 この回は怖かったですよね。

 

出口 それをちゃんとやるからNetflixでやるんだ、みたいな触れ込みでやってたので、どこまでやるんだろうっていうところにひとつ注目してたんだけど、それを本当にきちんとやっていた。ちゃんと「地獄へおちろ、人間ども」って言ったなって。

 

鮫島 ちゃんと永井豪の原作のまんまでしたよね。

 

出口 うん。で、あれがあっての曲がエンディングに流れるっていう……「ああ、これを見越して、逆算で作ってたのかな」って思うくらい、すごくマッチしていた。そこに、ここ最近のアニメの象徴的なものを感じましたね。便宜上順位はつけましたけど、どれも1位だと思います。

 

鮫島 僕も、本音はどれも1位です。

 

――2018年は最初から結構濃いですね。

 

鮫島 冬は濃かったですね。

 

出口「ポプテピ」なんかは曲もそうだし作品的にも、話題にはなってたよね。ああいうお遊びというか振れ幅というか……それをみんなで面白がれるみたいなのも印象的だった。アレを観て怒る人なんていないですよね。

 

――「洋楽っぽい」っていう話でいくと「ゆるキャン△」のオープニング「SHINY DAYS」(亜咲花)もそうですよね。

 

出口 そういえば。

 

鮫島 「Jackson5」の「I Want You Back」まんま。アニクラでも「I Want You Back」をかける人が結構いましたよ。

 

 

――実際に本人がのちにイベントで「I Want You Back」をカバーしたりもしていましたし、ある程度は意図的にやってるんでしょうね。

 

出口 それはすごく健全なことですよね。堂々と元ネタがあることを公言している。それこそ「ポプテピ」でもパロったりなんだりよくしてるけど、そういうリテラシーというか、ものの楽しみ方みたいなのが、アニソンの世界にも浸透したのかなって。そういうものが冬クールは多かった気がする。それがきちんといろんなところに繋がってた感じはしたかなあ。

 

2018年春クール

出口 春はいろいろあって楽しかったですね。作品としては、「メガロボクス」が一番よかった。そんな中で3位は「ベイブレードバースト超ゼツ」のオープニング「超ゼツ無敵ブレーダー!」です。

 

鮫島 あはははは! ノーチェックでした、すみません。夕方5時半の、ちゃんと子供が観るアニメだ。

 

出口 そう。これを歌ってるのが佐々木亮介さん、「a flood of circle」のボーカリストなんです。ロックなボーカリスト。これには俺もたまげたし、「あれ、佐々木さんじゃないですか? こんなところで出会えるとは……」みたいな(笑)。曲自体はもう、完全な男子向け。正しい夕方のアニメソングです。

 

鮫島「Butter-fly」的な。

 

出口 そうそう。それをあのハスキーでかっこいいロックな声で歌っとるわぁ~! って。

 

鮫島 15年くらい後のアニクラでこれをかけたら、「うわ懐かし~!」って、今の我々にとっての「Butter-fly」的な存在になってるかもしれないですね。

 

出口 この枠ってなかなか観る機会がないから、あんまり気づいてる人はいないんですよ。深夜だと家帰ってきて観られたりするけど、夕方は確実に家にいない時間だからね。

すごくいいなって思うのが、これを聴いて「この曲かっこいいな~」って思ったちびっ子が、中学生とか高校生になって音楽を聴くようになった時に「あれ!? あの時観てたアニメで歌ってた人だ!」っていう風に繋がったりすることも考えられること。

 

――我々世代(30代後半)でいうと、影山ヒロノブさんがレイジーやってた、みたいなもんですよね。あとはルーツの洋楽のほうに手を出したりとか。アニソンの役割のひとつって、子どもたちにとって音楽の世界への扉を開くことっていうのがあるように思います。

 

鮫島 うんうん、入口になるよね。

 

出口 だからこの枠は、積極的にもっともっと観ていかなきゃと思う。いろいろ面白い曲があるから。続いて第2位が「メガロボクス」ですね。「Bite」(LEO 今井)。これはもう文句なしで優勝!

 

鮫島 また優勝出ましたね。

 

出口 この曲はLEO 今井さんらしい言葉遊びもあるし、リズムも結構生っぽいというか、男くさい感じがある。なんなんだろこの感じって思ったら、「これは尾藤イサオだ!」っていう。

 

 

――「あしたのジョー」つながりですね。

 

出口 ああ、ここに繋がるんだって。意図的に制作しているかどうかはわからないけども、確実に歌い方だったり、ニュアンスだったり……向かおうとしてる先は尾藤さんなんだなっていう感じは見えました。

 

鮫島 「メガロボクス」という作品自体が、21世紀版の「あしたのジョー」ですもんね。

 

出口 うん。かつての名作を今のスタイルでアップデートしますよ、というのを音楽でもやっているのかなと。たぶんこれ、連載では書いてないですよね。なんであの時、それに気づかなかったんだろう。

 

鮫島 記事を書かれる時って、アニメを観る前に書くんですか?

 

出口 そうですね。最初にさらっと観たり、なんならまずは曲だけ聴いて、そこから気になったら今度はきちんと1話を観たり、という感じなので当時は気づかなかったんですよね。だから、ようやくこの曲の本質を見抜けたなっていう感じはしましたね。……これで全然違ってたら笑えますけどね。そんなつもりないです、とか言われちゃって。

そして1位が「ガンダムビルドダイバーズ」のオープニング、「Diver's High」(SKY-HI)。UNISON SQUARE GARDENの斎藤宏介さんが参加している曲です。今年、SKY-HIさんは多くの方とコラボしたりして、いろんな作品で見る機会が多かった印象があります。ラップがアニメソングにきちんと取り入れられた感があるのかな。しかも、それを「ガンダム」という大きな作品の中でやるっていうのは、なかなか面白いと思います。トラックもすごくかっこいいし。

 

 

――ラップというと、今年は「ヒプノシスマイク」の人気がすごかったですね。

 

鮫島 そうですね。下手したら紅白出場もあるんじゃないかと思ってました(笑)。アニメもゲームもないのに、あんだけ火が付くってすごいですよね。

 

出口 「ヒプノシスマイク」のラップバトルっていうのは、ラップ文脈におけるBEEF(ビーフ。アーティスト間の喧嘩や揉めごと)だからすごく音楽的だし、音楽の歴史に基づいていると思う。そういうものを題材にして、洋楽を聴かない世代に「こういう風に見れば楽しいよ」とわかりやすく紹介しているんですけど、今年は洋楽をそういう風に取り込んだ作品が多かったかも。

 

 

鮫島 なるほど。じゃあ私の春のトップスリーを。ギャングスタラップからギャングつながりで、「ヒナまつり」エンディング「鮭とイクラと893と娘」(新田義史/中島ヨシキ)。中島ヨシキさんがアニメに出てくる新田という893のキャラで歌ってるんです。ちょっと下手な感じというか、いなたい感じで歌ってるところが好きです。朴訥とした感じが、アニメのギャグの雰囲気とあいまってよかったですね。「天才バカボン」のエンディングとかも、なんか寂しげなところあるじゃないですか、さんざんギャグをやった後になんか寂しげな感じの曲をやるっていうのも、王道のアニソンだなと思いまして3位にしました。

 

 

――昔のアニメってエンディング曲がやたら寂しかったですよね。

 

鮫島 むちゃくちゃ寂しかった。「ガンバの冒険」とか、寂しいし怖いし暗いし。で、2位が「ひそねとまそたん」のエンディング「Le temps de la rentrée ~恋の家路(新学期)~」。これも洋楽っちゃ洋楽か。エピソードごとにフィーチャーされるキャラクターの声で歌っています。メインキャラたちがそれぞれ歌うのも面白かったですし独特のダンスがよかった。あれもアニクラでみんなマネするんです。でもなんでこの曲が選ばれたんだろう。

 

――イベントで聞いたと思うんですが、樋口真嗣監督が持ち込んだ曲らしいです。しかも、元曲を歌うフランス・ギャルの曲の中でも特にメジャーな曲というわけでもないそうです。

 

鮫島 あ、これそんなにメジャーな曲ではないんですね。「ひそまそ」は、なんか妙なエロさもありますよね。キャラクターのボディラインとか、特にエンディングのダンスでの、腰のラインとかめっちゃいいんですよ。エロい画ではないのに、エロくさせてる。

 

出口 性癖が見えるというか。

 

鮫島 ドラゴンに乗る時も、Dパイが四つん這いになるじゃないですか。あれもいいですし、ドラゴンからぬるっと出てくるのもよかった。そういうエロスを感じるアニメの、エロスを感じるエンディングでした。

 

――フレンチ・ポップスってそういったコケティッシュな魅力もありますよね。

 

出口 あると思います。フレンチ・ポップスはアンニュイだし、どこか耽美的というか。パカーッと明るいエロではないというか。

 

鮫島 うん。人に言えないエロさがありますよね。「俺、これ好きなんだけど、言うと変態と思われちゃうな」みたいなのが、「ひそまそ」には全部含まれてた感じがします。

 

出口 樋口さんだもんね。ぬらっとしているという要素も、ある意味特撮の目覚め方と似ている気がする。

 

鮫島 ボディスーツでぴたっとしてるところとか?

 

出口 そうそう。たとえば「ウルトラセブン」でアンヌ隊員役のひし美ゆり子さん。ひし美さんが着ていた隊員服、小さなサイズのものしかなかったんです。その理由は、最初に別の女優さんが決まってたんだけど、降板しちゃったことでひし美さんが代役として入るんだけれども、衣装を直す時間がない。それで、着るしかない!って着たら、もうムッチムチになってボディラインが完全に出ちゃったんです。それでやたらエロくなっちゃった。それが回り回って、「ひそまそ」のエロスにつながっているのかもしれない。

 

鮫島 特撮っぽいエロさ。いいですね。で、1位が「キャプテン翼」の「スタートダッシュ!」(ジャニーズWEST)。アニメの力と曲の力が見事にハマった作品だと思います。PV映像として素晴らしかった。ボールの視点になったり、翼の視点になったりと、とんでもない演出をしているのに、アングルの切り替えがスムーズで自然に観られたんです。幼少期の翼から小学生の翼にパスが行くシーンとか、すごいですよ。カットごとに見たら違和感だらけなんですけど、それを全部キレイに繋げて最後まで引っ張って、そして爽快感があるというのがよかったですね。

 

出口 イベントとかでもよくかける?

 

鮫島 えーとね、かけてもあんましウケない(苦笑)。僕は好きでかけるんですけど、僕しか喜んでない。まあ「燃えてヒーロー」(「キャプテン翼」旧作のオープニング曲)のほうがわかりやすいというのはありますよね。

 

――じゃあ、ここは文字を太くしておきます。「もっと聴け! お前ら!」って。

 

鮫島 そうだ、聴け! 観ろ!

 

2018年夏クール

出口 さあ! 続いて、夏です。

 

鮫島 じゃあ僕からいきます。第3位は「進撃の巨人」のエンディング「暁の鎮魂歌」(Linked Horizon)。「進撃」は今シーズンからNHKの放送になったんですよね。この曲はアニメで観てると、映像表現の中で急に「キョキョキョキョキョ!」って巻き戻ししたりして過去のストーリーにいったりするんです。そういうのを、エンディングでも表現してるのがよかったですね。「進撃」シリーズの中で、僕はこのシーズン3が一番好きですね。どんどん対人間のドラマにフォーカスしていって、それがアニメ表現として面白かったので、そこも含めて第3位にしました。時間が止まったりする演出でいうと、「ジョジョ」の3部の「STAND PROUD」(橋本仁)を思い出したりして、そこも面白いですね。ちゃんとアニメとリンクしてるのが好きなんです。

 

――「Linked Horizon」だけに?

 

鮫島 うまい!……のか?(笑)そして第2位は「はたらく細胞」のオープンニング「ミッション! 健・康・第・イチ」(花澤香菜、前野智昭、小野大輔、井上喜久子 )。これはもう、この作品にしか使えない曲っていう潔い曲ですね。これをチョイスするあたりが、出口さんとちょっと違うところかなと。出口さんはここで洋楽っぽいのをあげると思うんですが、今回、僕は「This is アニソン!」っていうのが多くて、この曲はまさにそれだと思う。簡単にコスプレできるっていうことで、今年のアニクラには血小板ちゃんたちが多発していました。この曲をかけるとみんな、ステージにわらわら上がってくるのが面白かったですね。

 

 

――作品としてもかなりヒットした作品でした。

 

鮫島 ガンの話は勉強になりましたね。実はわりと医療・教育機関でも素材提供されたりしてるんですよね。

 

――学研の学習漫画「○○のひみつ」的な見方もできますよね。

 

鮫島 そうそう。自分は昔あった手塚治虫の「ワンダービートS」を思い出しました。そして1位は1位で、これも本当に潔い。「中間管理録トネガワ」のオープニング「颯爽と走るトネガワ君」(ゲスの極み乙女)です。曲をフルでかけても2分しかないんです。2番にもいかず、1番で終わるんですよ。その潔さもよかったですね。

 
――アニメのための曲、という意味ではまさしくアニソンですよね。

 

鮫島 ゲスの極みや星野源が、しっかりアニメソングを作ったみたいなことってすごく今っぽい流れだと思います。作品をしっかり理解してアニソンを作ってくれてるクリエイターが増えたんだなあって。それもちゃんと、J-POPで知られている方がね。だからもう、アニメが好きということが普通になってきちゃってるんでしょうね。夏のトップ3はこれでございました。

 

出口 こちらの夏アニソンの第3位は「はねバド!」のオープニング「ふたりの羽根」(YURiKA)。これは、さっき鮫さんが言ってた「キャプ翼」と一緒の理由です。曲とアニメーションがものすごくシンクロしてるんです。面白いのがサビ始まりの曲で、サビの後に平歌があって、もう1回サビがあるんですね。で、2回流れるサビでまったく同じアニメーションが流れるんです。ド頭のサビと、その後に出てくるサビで、全く同じ絵が出るから、「あれ? 俺、夢でも見てんのかな?」って変な気分になる(笑)。1話を見た時に「あれ?」と思いました。ただメロディの展開に合わせて絵がきちんと動いて、スローになって、と映像の緩急がサウンドとシンクロしてるから、観ててめちゃくちゃ気持ちいい。そこの作画だけ異常にクオリティが高くて、ほかの部分は普通のアニメなんだよね。そこだけ突出してかっこいいから。何かあったのかな⁉って思わざるをえない。

 

で、2位は「殺戮の天使」のオープニング「Vital」(遠藤正明)。…これは、夏のコラムの時は入れてなかったよね。

 

──そうですね、書いてませんでした。

 

出口 その時は「いい意味で遠藤さんは遠藤さんだよね」って。で、改めて聴いたらもう、最高だね! めちゃくちゃかっこいい!って。遠藤さん全開のバッキバキな曲。ここまでやってくれて清々しいよねってくらい遠藤正明節だった。声にハリもあって高いっていうのも、すごくかっこいいというか、ほかのアーティストにはないところなので2位に入れました。そして、1位は「闇芝居」のエンディング「まやかし横丁」(奥村愛子)です。

 

鮫島 かぶんないなー。

 

 

──でもなんとなく、出口さんの好きな曲だってわかりますね。ちょっとジャジーな感じで。

 

出口 ジャジーな感じでね。「わ、いいな!」と思うのは、わりとそういう曲。

 

鮫島 モノブライトと全然違うじゃないですか。

 

出口 モノブライトの時はスコーンと明るい曲もあれば、結構じとっとした曲もあったんですよ、実は。で、この「闇芝居」はなんと第6期!ですからね。

 

──深夜アニメで、ここまで長く続く作品はほかにはないと思います。次が5期まで続いてる「夏目友人帳」かな。

 

鮫島 そうなんだ! 人気あるんですね。

 

出口 歌ってるのが奥村愛子さん。「プリキュア」とかの曲を手がけています。

 

──本当だ。「ドリフェス」「ハピネスチャージプリキュア」「魔法使いプリキュア」なんかの楽曲を書いています。

 

鮫島 すごい!

 

出口 でも「まやかし横丁」は、それらの曲は全然雰囲気が違うんです。まさに職業作家さん……プロです。この曲はちょっとレトロな感じの匂いのする、歌謡曲みたいなところがいいですね。メロディもすごくいい。うまい! 優勝!って感じです。

 

鮫島 また優勝出た! もう3人くらい優勝してる(笑)。

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