押切蓮介が次に描きたい漫画のジャンルは……? アニメ作家募集プロジェクト「Project ANIMA」第三弾締め切り目前、スペシャルインタビュー!(後編)

2018年11月10日 12:000

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DeNA、文化放送、創通、MBSが共同でTVアニメシリーズを制作する大規模プロジェクト。それが「Project ANIMA」だ。

本プロジェクトは、プロ/アマ、個人/ユニット・企業問わず、マンガ・小説・脚本から企画書まで、あらゆるチームが、あらゆる形式で参加することが可能。大賞受賞作品は100万円の賞金に加え、さらにアニメ化も決定。そのほか、書籍、漫画、ゲームなどさまざまなメディアでの展開も検討されるという夢のプロジェクトである。

 

これまでに第1弾「SF・ロボットアニメ部門」、第2弾「異世界・ファンタジー部門」の大賞が発表され、すでに企画が動き始めている作品もある中、第3弾「キッズ・ゲームアニメ部門」の締め切りが2018年11月15日(木)に迫っている。

回を追うごとに応募本数やクオリティが向上しているが、どうすればより高い評価を得られるような作品が生み出せるのか?

そんな疑問に、総合プロデューサー・上町裕介さん、宣伝プロデューサー・有田真代さんに答えてもらった前編に続き、この後編では先日、漫画「ハイスコアガール」が完結し、アニメ版の続編も楽しみな押切蓮介先生にも登場していただき、何をインプットし、何を考えつつ作品作りに臨んでいるのかを聞いてみた!

このインタビューに大賞受賞のヒントがあるはず⁉

前編はこちらから! 

「びっくりさせたくて」がモチベーションのひとつ

――今までにやったことのないジャンルの作品に取り組む時は、どんな心境で臨むんですか?

 

押切 まず、びっくりさせたいというのがあるんです。人って多分「この人はここまでだろう」って見極めてるつもりなんです。こいつはこの程度しかできないな。絵もこのくらいしか描けないだろうって。

僕は「ぼのぼの」のいがらしみきお先生が好きで、ほんわかした絵柄なのにサスペンス・スリラーを描く時、すごく面白いんですよ。そのギャップがすごくて、「俺はこれだけじゃないぞ」って見せつけられるんですよ。読む側からしたらこういう作品も描くんだというとらえ方だけかもしれないけど、同じ作家としては尊敬するんです。僕もこうなりたいなって。ずっと「でろでろ」みたいなショートギャグを描いていたんですけど、そこで「ミスミソウ」みたいなのを描いたらびっくりされるだろうなって。じゃあ次にラブコメを描いたらびっくりするだろうなって気持ちが強いんです。まず周りからそう意識して、お父さん、お母さんが見たらびっくりするだろうなって。

で、「押切くん、こんな作品を描くんだ」って同業者をびっくりさせる。そうやってどんどん周りがびっくりしていけばおもしろいなって思いますね。

けっこう言葉は間違っているかもしれないけど、いたずら心みたいなものはありますね。売れる、売れないはあまり考えたことはありません。

 

――「ハイスコアガール」の時は、周りの反応がいかがでしたか?

 

押切 1話目から手応えがすごかったですね。読み切りが出た瞬間からいろんなサイトで「面白い」って書かれて、「これは売れるなら、やらないと!」ってやる気が出たんです。最初は1巻だけで終わる予定でしたから。

 

――では、コンテストに応募する人も、周りの人をびっくりさせるところを意識するのがいいかもしれないですね。

 

押切 そこはやはり意識したほうがいいですよね。あと、最初から作家になりたいって来る人って僕はあまり好きじゃないんですよね。今の時代は自己承認欲求の時代、自己主張の時代なので、「俺が俺が」ってこられるのがすっごい苦手なんですよ、僕の感覚としては「それはただの目立ちたがりでしょ?」って。

漫画家志望の人とかに「なんで漫画家になりたいの?」って聞くと、有名になりたいっていう意識が強い人が意外と多いんですよ。そういう人たちはだいたい失敗します。息を吐くように漫画を描く人たちって、いっぱいいるんですよ。そういう人たちのほうが面白いものが描けるだろうし、初めて描いたような作品がプロの目に留まって面白いと思わせるとしたら、もうその人は本物なんですよ。

 

有田 第2弾大賞受賞者の赤坂優月さんも、大阪在住の2人のお子さんのいる主婦の方なんです。本好きが高じて紙の本だけじゃ飽き足らずネット小説を読むようになり、エブリスタで読み専をしていたところ、それでも飽き足らず、書き始めたら書くのが楽しくなって。応募作「魔法使いになれなかった女の子の話。」が2作目で、コンテストの入賞は今回が初めてです。

 

上町 ご家族も最近まで小説を書いていることはご存知なくて。

 

有田 優月さんも、息を吐くように毎日こつこつ更新し続けられた方で、最初から「有名になりたい」わけじゃない方ですね。

 

――ちなみに押切先生はどんな作品を見て育ってきたのでしょうか?

 

押切 僕ちょっとおかしいんですよ。幼稚園の頃に「ジョーズ」を観て、そこからおかしくなったんですよ、そこから子ども向けのアニメとか一切観なくなって。せいぜい「ドラゴンボール」くらいですね。漫画も「コロコロ」とか「ボンボン」とかほぼ見ないで、小学3年くらいから「スピリッツ」とか読み始めて、「ツルモク独身寮」とか見てました。

 

一同 (笑)

 

押切 周りの同級生が「ナメック星で~」とか言ってる間、俺は「スピリッツ」を一生懸命読んでいたんです。そういうちょっと変わった感じで育ってきたんですが、でもよくよく考えると琴線に触れた作品って物語がしっかりしてるし、軸がちゃんとしてるものが多かったから、自然とストーリー作りができるようになったのかな。「ジョーズ」を見てたって言うと「そんな作品観てるんですか!」とか言われるんですけど、あれ、ちゃんとしてるんですよ。それに昔って、テレビでも「バタリアン」みたいなえぐい映画もけっこうやってたじゃないですか。そんなのばっかり観てたんです。

テレビでやる作品って良作が多い気がします。すごい駄作ってあまり放送されなかった気がする。観る作品、観る作品、名作揃いで、そういうものをずっと観続けてきたから自然と作品作りができるようになったんだなと思います。

 

──知らず知らずのうちにインプットしてきたんですね。

 

押切 そうですね。それに昔から絵を描くのは好きでしたしね、下手でしたけど。独創性はあったんじゃないかな。最近、幼稚園と小学生の頃の落書き帳が出てきたんですが、8割方サメの絵ばっかりで。1ページ目で「左へ行く」「右へ行く」ってゲームブックっぽいのを小学校低学年から作ってました。で、発想が今の僕とまったく一緒で、幽霊をぶん殴ったりね。それをずっと積み重ねてきたから、絵はだめでしたけど創作意欲は昔から育ってたのかなと。

 

上町 小説とかは読んでたんですか?

 

押切 活字は全然だめで、映画しか観てませんでした。よく漫画の描写も映像的って言われるんですが、そもそもたぶん発想が映像なんですよ。特に「ミスミソウ」とか「サユリ」とか、あと「ハイスコアガール」も後半になってくるとだんだん映像っぽくなってきますね。もともと映像作品を作りたいという願望があって、自主映画も作ってたんだけど、あれは他人との共同作業じゃないですか。でもひとりでやりたかったから漫画を選んだんですよ。ただ映画からは、たくさんの影響を受けましたね。

 

上町 僕は押切さんの作品を読んでいて文学性を感じるんです。純文学の匂いがします。

 

押切 本当ですか? 僕の大嫌いな純文学(笑)。

 

上町 モノローグの感じとか、根底はすごい暗い感じがしていて、そこに小林多喜二味を感じるんです。プロレタリア文学的な陰鬱なところがありつつ、エンタメとして昇華されてて。押切さんはおじいちゃんが直木賞作家(神崎武雄)じゃないですか。その血が、実は色濃く反映されているんじゃないかなって。

 

押切 親戚からも小説を書いてみたらって言われるんですよ。文章が面白いって。僕はからっきし文章がだめなんですけど、みんな何かを感じるみたいで。祖父は直木賞作家だったみたいで、南方従軍中に戦死してしまったみたいです。親父も太宰治に憧れてずっと小説を投稿していたんですけど、僕が先に漫画で受賞して先にデビューしてしまって。まさか息子に先を飛ばされるとは、って。

 

上町 押切さんはそう言うんですけど、昔ブログに書かれていた短い日記なんて、すごい昭和の文豪的な切り口なんですよ。映画を観て楽しかったとか、どれそれがおいしかったとか、たいしたことは書いてないんですけど、完全に書き口が文豪的な文法で書かれてて、今から見るとすごいですよ。

 

押切 朝方に書くんですけど、その時間帯ってアドレナリンとかドーパミンがぶわーっと出てきてテンションが高い状態になるんですよ。そうすると、昨日の出来事を日記に記そうと思って、くすぐったい文章が書けるのかな。「犬がそこにいる。ワンワンとこちらに向かっておっしゃっている。最初のワンと次のワンにはどういう意味があるのだろう」とか。

 

上町 あと「窓から見える柴犬たちがこちらの様子をうかがっている」とかね(笑)。

 

有田 半径3メートルの中でひたすら世界を掘り下げている!

 

上町 きっと暗くて狭いアパートで、その情景を観ているんだろうなって。そう思うと、もうこれは純文学だよね。

 

押切 それを書いている時は気持ちいいですよね。自分で見ても面白いと思うということは、人から見てもらって面白いんじゃないかなと思って。

 

――漫画と、アニメやゲームといったカルチャーの関係性についてどのように考えられますか?

 

押切 仲良くできたら嬉しいなと思ったんですよ。結果的に仲良くなれないこともあるんだな~と……。

 

上町 「あれ」は特殊な事例です(笑)。ゲーム業界はみんな応援してましたから。

 

押切 いろいろ経緯があってあまり大きな声で言えないんですけど、僕は漫画でラブレターを書くつもりだったんですよ。僕はゲームをずっとやってきた男で、こんなことをやっても無意味だと言われ続けてきたんですけど、でもそれを作品に昇華したら無意味じゃなくなるじゃないですか。それで成り立ったらこれはいいラブレターになるなと思ったんですが……。

 

 

――最終的にはみんなから受け入れられたようにも思います。

 

押切 たぶん恋愛が成就したんでしょうね。紆余曲折あったうえで、なんとかラブレターが届いた形になったと思うんですけど。

 

押切先生、SF新作を考える!

――もし押切先生が「Project ANIMA」に参加するとしたらどういう作品を考えますか?

 

押切 ええと、SFなら考えてるネタがあるんですけど、キッズ系となると(苦笑)。さっきエロと時代劇をやったことがないって言いましたけど、SFもやったことがないので「SFやりたいな」と企画をずっとしてたんです。でもちょっとクライアントがSFじゃなくて「ゲームものをやりましょう」って言い出して頓挫しちゃって。入り口が「おそ松さん」だけど出口が「エヴァンゲリオン」っていうイメージです。

 

上町 どんなあらすじなんですか?

 

押切 ざっくり説明すると登場人物は全員宇宙からの侵略者なんです。で、若干、腐女子受けするように男しかほぼ出ない。でかっこよかったり、背が高かったり、かわいかったりするんだけど、みんな違う星からきた人で。

 

有田 すごくいいですね。さっきの話でいうと、それは儲かりそう(笑)。

 

押切 で、主人公ひとりだけが記憶喪失で。地球を侵略しに来たんだけど、自分を地球人だと思い込んで日常生活を送ってるんです。ただその主人公の力が強すぎて、自我に目覚めちゃうと一瞬で地球を支配しちゃうから、ほかの侵略者は家族としてそいつと接するんです。で、絆を作ることで主人公の力を抑制するんです。ところが本当の家族みたいに生活が楽しくなってきて、本当に絆が生まれちゃうんです。そしたら違うところからまたどんどん刺客が攻めてきて、地球人に紛れながらみんなで戦っていくっていうストーリーです。

 

――普通に面白そうですね!

 

押切 今回のように一生懸命考えたアイデアを昇華してくれるチャンスがあるのはいいですね。……僕、この企画を投稿してもいいですか?

 

有田 第3弾大賞受賞者、押切蓮介先生! ザワッ……みたいな(笑)。でも、「社内で通らなかったゲームの企画があるんですけど、絶対に面白いんで!」と送ってくれる方も結構いらっしゃいます。

 

――実際にプロとして活動されている押切先生から、これから作品作り臨む方に、これだけは肝に銘じとけというアドバイスはありますか?

 

押切 それはもうキャラ作りですね。僕が絶対に守っているのが、キャラは引き上げるんじゃなくて押し上げてあげるということでうす。うまく伝わらないと思うんですけど、自分が上になってキャラを引っ張っていくと、あまり魅力なくなっちゃうんです。自分が引っ張っていくと、自分の中の狭い世界の中で構成されちゃうんですけど、自分が親みたいな気持ちになってしたから押し上げてあげると、自分以上の存在になれるんですよ。そうすると、キャラクターって自分じゃできないことをやってくれるんですよ。

 

――具体的に「ハイスコアガール」にたとえると。

 

押切 ハルオ君は僕がなれなかった男なんです。よく「ハルオは押切先生を投影した姿ですよね」って言われるんですけど、全然そんなことなくて、女の子とホテルに泊まったりしたらもう気が狂っちゃいますよ。でもハルオ君はそういうタイプじゃない。ハルオ君は女の子を人間としてすごく尊重してあげるタイプなんですよ。僕もそうしようと思っているんですが、そこでハルオ君に「やさしい気持ちでいけ!」って押し上げてあげるんですよ。そうするとキャラって飛び立つんですよ。

キャラに浸っちゃって「ここはご想像にお任せします」みたいなのは、上からキャラを引っ張ってる。そうすると自分の限界の中で書いちゃってるから……。

 

上町 ハルオ君ってすごいかっこいい時があるんですよね。いつもああいう感じなのに、たびたび意図せずかっこよくなってしまっている。

 

有田 いつもはああいう感じだからこそ、リアリティがある。

 

押切 こんな悪ガキ、なんでこんなにモテるんだってわからない人もいるんですけど、逆になんでわからないんだろうって思うんですよね。それがわからない人って、たぶんモテない人だと思う(笑)。たぶん女の人のことをわかってないんだなと思うんですけど、アニメのスタッフの人たちはそこをすごく汲んでくれたんで、本当に感謝してるんですよ。

 

上町 本質はラブストーリーですからね。

 

押切 ラブストーリーだって言ってるんだけど、「もっとゲームを見せろ」とか言われたり(笑)。

 

上町 1990年代というあの時代におけるすごく切ないラブストーリー。そこがたぶん主題なんだけど、ゲーム漫画だととらえられがちなのかな。

 

押切 さっき「いい作品を作るうえでのコツ」って言ったじゃないですか? これは誰でもできると思うんですけど、いい音楽と出会うこともいいですね。歌でも何でもいいんですけど。というのも、「ミスミソウ」も「ハイスコアガール」も「haha」も、テーマ曲みたいな音楽が自分の中にあって、それを聴くとぶわーっと描けるんです。逆に「ぐらんば」とか何もありませんでした。そういう作品はなかなか人気が出ないんですよ。

 

上町 それは映像的な感覚かも知れないです。BGMとして流しながら映像を想像する。

 

押切 自然とそうしている人もいるかもしれないんですけど、意識してやるのとやらないのとでは違っていて、「よしやるぞ!」という時とか出かける時とかに聴いていたらモチベーションも変わってくるだろうし、あとはカラオケででっかい音量でそれを聴くというのも脳にインスピレーションを受ける。これはオススメだったりします。

 

ロジック×感情×スピリチュアルが押切流の方程式

上町 普段、妄想とかはしないですか? 自分の考えた最強の映画とか。

 

押切 映画の妄想とかはよくします。漫画はほぼほぼないですね。

 

上町 頭の中で映画を作りません?

 

押切 めっちゃ作ります。これ中二病的発想なんですが、男の子ってけっこう脳内で映画を作ってるんじゃないかなと勝手に思ってるんですよね。大人になるにつれ、それは無理だろうと色あせて消失していくんですけど、男の子の妄想って本当にばかばかしくて、学校にテロリストがやってくるとか。

 

──あるあるですね。

 

押切 女性に多いのが下校時に超イケメンの男の子が迎えに来るっていう妄想。で、周りが「どうしてあの人が!」ってざわざわしている中で、「おーい、○○!」って声をかけてきて、「なんであの子が、あの人の車に⁉」みたいな。自分だけが特別なんですよ。こりゃ優越感はすごいなと。で、男の子はテロリストが攻めてくる。これは闘争心なんですよ。男の中の闘争心が、たったひとりでテロリストを退治するっていう。

 

上町 エブリスタでも、学校がテロリストに占拠される「学園封鎖」っていう作品があるんですよ。僕が驚いたのは、確かにこれを想像した奴はたくさんいるけど、アウトプットした奴はまだいなかったなというところ。そりゃすごいわと。

 

有田 「Project ANIMA」もそれこそ第1弾の時は、「中学校の時にルーズリーフに書いていた“俺の考えた最強のメカ”みたいなのを送ってきてほしい!」って言ったら、本当にそういうものが送られてきたんです。嬉しかったですね。

 

上町 うん、きた。それはそれで尊いんですよ。あとは30年前に仲間と集まって作ったアニメを送ってくれたりとか。

 

有田 いろんな人の情熱がほとばしっていて。ここから売れる商品になるかどうかは、我々が考えないといけないことなんですけど。

 

押切 でも送ってくる方は落ちるなんてことは考えていないんですよね。送ったからにはもしかしたら受賞するかも、という期待もあるんですよね。

 

上町 送るってだけでも、大きな飛躍ですよね。

 

押切 だから、僕はたとえ賞に選ばれなくとも、クオカードくらいは送ってあげてほしいなと思いますよ。その行動力の功績はあると思います。

だから中二心は損なわずに、そこは全開にしたほうがいいと思いますよ。愛すべき中二病力は大事だと思います。

 

有田 ご自身の中にいろいろルールがあるとのことですが、ほかの作品作りのルールも教えていただけますか?

 

押切 これはあまり参考にならないと思うんですけど、キャラクターを全く作れなかった時、「でろでろ」という作品が出世作になったんですよ。それまでは、ずっと“アパートにひとり暮らししているただの男とか学生”みたいなキャラしか作れなかったんです。どうしたらキャラを作れるんだろうって思ってた時に言われたのが、「ルパン三世」でいいんじゃないってこと。

「ルパン三世」ってどんなキャラか問われて、「やる時はやって」「女好きで」みたいな話を説明したら、「つまりそういうことだよね」「説明できるよね」って言われて、「なるほど!」って。「ルパン三世はそういうものなんだ」って意識した瞬間に考え方が変わって、「でろでろ」の主人公は不良で妹には弱くて、幽霊には強いっていうキャラになったんです。

こんなに簡単なことなのに、いざ作るってなったら気づかないんですよね。

 

上町 確かに表面的な設定だけを書いちゃう人は多いですよね。

 

押切 それでも僕は、結局「ルパン三世」みたいなキャラは作れなかったんですよ。でも複数のキャラでひとつのユニットみたいな考え方もあるんですよ。個々で強いキャラっていうのは僕は苦手だから、「でろでろ」だったらお兄ちゃんと妹と犬でひとつ、みたいな気持ちで描いてました。

 

有田 組み合わせでひとつっていう考え方も面白いですね。つい各キャラを独立して考えがちです。

 

上町 「ルパン三世」もルパン一味で1セットですからね。あの3人が場面として出なかったらやっぱり物足りないですからね。

 

押切 まあ漫画の作り方で言うと、実は目に見えないルールみたいなものがあって、ページを開くと未来に向かって前向きな主人公は絶対に左向きなんですよ。逆に過去のことを考えたり帰ろうとすると右向き。そういうことをあまり意識していない人も多い。作品作りには、そういう隠れた要素ってけっこうあるんですよ。そこに気づけると面白いものも同時に生まれるんじゃないかな。

 

上町 海外ドラマだとただの会話のシーンだと、どちらかを立たせて立体的に撮るみたいなのと同じかも。

 

押切 相手の目をしっかり見ているから、目をしっかり描くとかね。いろいろありますけど、漫画とか小説家になれるかどうかは、そこに気づけるかどうかだと思います。

 

上町 押切先生は、けっこう理論の人ですよね。

 

押切 少しスピリチュアルなところもあって、朝日は男で夕日は女、とかあります。夕焼けのシーンは女性を際立たせるんです。そこをうまく演出できると、なんか印象に残ったりね。そういうことを考えたりしてますね。

 

上町 ロジックと感情とスピリチュアル。

 

押切 そこが接続すると自分でも気づかないものが生まれる可能性があるわけですね。それを自分なりに構築できるとプロになれる。それを言葉にするとわけがわかんなくなっちゃうんですけど、実際に漫画にすると現れてくるんですよ。だから作品作りは難しいけど楽しいです。

 

上町 そこはやっぱり「楽しい」に落ち着くんですね。技法の話になると小難しくなるけど、そこを楽しめるかどうかってすごく大事だと思います。

 

押切 それで自分の作品を世に出して感動してもらえるんだったら、そんなに素敵なことはないですよ。

 

――そして、そのアイデアをまずは近くの人に見てもらって。

 

押切 周りの人に見せるのってなかなか勇気出ないんですよね。自分は大きく羽ばたこうとしているのに、出鼻をくじかれる可能性もあるんですよ。「これ、つまらない」って言われた時にガクってくるんですけど、もし面白いって言われたらいい兆候だと思います。作品は面白いか面白くないかなんです。そこでなぜ「価値観が合わない」って言われたり、担当編集者が作品にケチをつけてくるかと言うと、面白くないからですよ。面白かったら、ちゃんと採用されます。

 

――それでは最後にひと言ずつコメントをお願いします。

 

有田 「Project ANIMA」を第2弾まで通してきて、一番驚いているのは「こんなに多くのアイデアが世に出ずに眠っているんだ」ということです。まずは不完全でもいいですし、完結してなくても、Wordに書き殴ったものでもいいので、自分がモヤモヤ考えているものを外に出してください。もしかしたら、それが自分の人生を変えるような企画になるかもしれません。いま応募を迷われている方がもしいたら、出すだけ出していただけたら。

作品として形にすることで、ただ内側でモヤモヤ考えているだけよりも得るものがあると思いますし、楽しいと思います。ぜひ普段思っていることとか、こんなアニメが観たいとか、アニメを観ながら「私ならこうするのに」と思うことをぶつけてください。

 

上町 誰にでも創作力はあるし、なんならその人の人生が一番面白いと思います。押切先生のお母さんの話なんてまさにそうで、創作って本当は身近なところにあふれているので、そんなに肩肘はらずにやってもらえるといいなと思っています。それをちゃんと受け止められる環境が「Project ANIMA」になればと思います。

 

押切 いい時代ですよね。自分の発想が世に出てお金ももらえる。これはチャンス以外に何者でもないです。

やっぱり作品を作って人に観てもらって残すことって、世の中に爪痕を残すってことなので、最終的に自分の自信にもつながると思うんですよ。なので、それを目指して作品作りに挑んでもらえたらと思うので、がんばってもらいたいですね。そして、僕たちを楽しませてほしいですね。

あとは、僕も投稿したい(笑)。僕と戦いましょう! 感情を作品にぶつけるって気持ちいいですよ。がんばってください!

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放送日: 2018年7月13日~2018年9月28日   制作会社: J.C.STAFF
キャスト: 天﨑滉平、広瀬ゆうき、興津和幸、山下大輝、御堂ダリア、新井里美、伊藤静、チョー、赤﨑千夏、杉田智和、植田佳奈、武虎、大塚芳忠
(C) 押切蓮介/SQUARE ENIX・ハイスコアガール製作委員会 (C) SNK (C) CAPCOM CO., LTD. (C) CAPCOM U.S.A., INC. (C) BNEI (C) KONAMI (C) SEGA

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放送日: 2013年12月20日~2014年3月28日   制作会社: AIC PLUS+
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(C) 押切蓮介・COMICメテオ/AIC

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