改めて石川五ェ門の精神性を描いた活劇「LUPIN THE IIIRD 血煙の石川五ェ門」小池健監督インタビュー

2017年02月04日 12:000

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五ェ門の精神性を描いた剣戟シーン


── 舞台は日本の伊豆です。これはどのように決められたのですか?

小池 五ェ門が一番合うシチュエーションというと、やはり日本がいいのかなと。それで時代感をあまり意識させない山の中、日本の自然の美しさみたいなものも表現できればなというところで、棚田や山寺をシチュエーションとして選びました。それに杉林があると伊豆らしさや昭和っぽい感じを観客の皆さんに想起させることができると思うんです。それもこの場所を選んだ理由のひとつですね。なお、特にロケハンといったことは今回はしておりません。

── 今回の五ェ門が用心棒を務めているのはヤクザの組組織です。小池監督はいわゆる日本のヤクザ映画といったものに影響は受けていらっしゃいますか?

小池 そうですね。やっぱり、深作欣二監督の「仁義なき戦い」は好きですし、「緋牡丹博徒」といった賭博モノは、見ていてスッキリするものがあるので、あのあたりの雰囲気を今回出せたらいいかなという部分もありましたね。今回登場する“手本引き”は、日本の賭博の中で一番上質なものとされているそうです。そうした博打をやっていることから、各界の高貴な人々の集まる賭博場の印象が出せればと考えていました。

── その上で、アジアンマフィアっぽい雰囲気も少しありますね。

小池 あまりにベタにしてしまうと、「任侠ものそのまま」という感じになってしまうので、そのあたりは多少アレンジをしています。音楽についても、日本の任侠ものだけではなくイタリアンマフィアみたいな感じの音楽付けをしてもらっているので、それも含めて多少、異国の感じが出ているのかなと思います。


── 今回もバイクと車のアクションがありました。小池監督の「REDLINE」(2010年)を想起させるところです。

小池 「ルパン」という作品において、カーチェイスはつきものです。見栄えもいいですし、車自体も時代感を出せるアイテムですので、やっぱり外せません。前回は車と車でしたが、今回はバイクと車で、カーアクションのシーンも入れさせていただきました。僕はコンテを描くまでなので、そこを担当された原画マンは大変かな、と思いましたけど(笑)。ただ、やっぱり得意な方がやられているので、僕が描いたコンテ通りじゃないような部分も提示していただいてノってやっていただけたのではと思っています。

── 「次元大介」の時には、トンネルに入るシーンのカーチェイス作画がすばらしかったです。今回もその方ですか?

小池 そうです。また同じ、横堀(久雄)さんというテレコムのエースアニメーターの方です。

── 今回、冒頭のバトルアクションはもちろん、クライマックスの50人斬りも、とにかくすばらしい作画が盛り沢山でした。剣戟を描くうえで特にこだわった部分はどんなところでしょうか?

小池 前半の賭博場のシーンは、まだ五ェ門に自信があって驕り高いので、割とすんなり剣を抜いて、前にいる敵と戦うというような感じに組み立てていただきました。そして50人斬りのところは、開眼をして戦うというシチュエーションなので、剣を抜くまでと抜いてからの温度差をしっかりと出すように演出しています。作画の方には剣を抜くまで溜めて溜めて、抜いたらもうヤバイぞという感じの雰囲気でとお願いしました。


── ただの動きというだけでなく、すごく精神的なものを表現されているわけですね。

小池 そうですね。表情ですとか、たたずまいというか構えですね。そういうものがやはり気を遣った部分ではありますね。

── 持っている刀も最初は普通の日本刀でしたが、最終的にはTVシリーズで見ていた刀になりました。

小池 初めの五ェ門は奢り高いので、紋付袴とかもらった高価なものは全部身に付けるという設定で考えていました。刀も刀身は斬鉄剣のままなんですけれど、拵え(こしらえ)の部分は装飾がついたいただきものを遠慮なく付けているということなんです。そしてホークによって、五ェ門の象徴である剣を叩かれ、剣もボロボロになって、刀身だけ持ち帰り、もともと使っている白鞘の斬鉄剣に組み替えて1から出直すという流れになっています。


── ホークとの戦闘では本当に人の肉体が切れている感じがすさまじかったです。

小池 どうやったらあの刀の切れ味のすごさとか怖さを表現できるかというのは、かなり念頭に置いて作りました。斬る描写は外せないので、脚本の段階からR18になるやもしれないことを厭わず、遠慮なく絵コンテを描かせていただきました(※実際はPG12指定)。ただ、グロさを表現したいというのではないので、どうやったら断面が見えても美しい画面になるかというのは、かなり気を遣った部分ではあります。


── 絵作りのところでは、レンズに対してこだわりを持って作られているのではという印象を持ちました。そのあたりのお話をおうかがいしてもよろしいですか?

小池 「次元大介」に比べ、今回は望遠で撮っているショットが多いです。やはり、日本の自然の美しさを表現したいという思いがありましたし、今回は群像劇で人が多いので、それを入れ込むためには望遠が効果的ですので、望遠のショットが多いですね。広角を使ったシーンで目立つのは、先ほどの横堀さんが、広角の画面の作り方がすごく得意な方で、車とバイクのカーチェイスのあたりのシーンではかなり広角を使ってもらっています。僕はコンテの段階で、カットによっては9mm広角レンズイメージとメモを書いているのですが、原画マンさんはそれを汲んでくれて、自分が思っている以上にバランスの良いレイアウトに描いてくださるんです(笑)。カメラワークもかなりこだわって作ってもらった部分ではありますね。

画像一覧

  • 原作:モンキー・パンチ (C) TMS

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  • 原作:モンキー・パンチ (C) TMS

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