「アクティヴレイド -機動強襲室第八係-」特集 スタッフ連続インタビュー 第3回 音楽・中川幸太郎氏

2016年03月17日 22:300

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「中川幸太郎史上 最高傑作」ができるまで


──最初はどんな楽曲から手をつけていきましたか?

中川 まずは黒騎がウィルウェアを着ている最初のキービジュアルを見て、「踊る大捜査線」みたいな熱いやり取りがある感じなのかなと感じてティザー(宣伝PV)用の音楽(「Activeraid」)を作りました。そのときはメインテーマのつもりで作ったのですが、「間違ってはいないけど、重いというか激しすぎるというか……」という反応で、メインテーマとしてはもっと明るくてスポーツ的で、メジャーな感じにするようにと改めて依頼をされました。そのあと、なんとなく漠然としたイメージはあったんですけど、なかなかできなくて後回しにしていたんです。そうしていろいろと他の曲を作っていくなかで、今のメインテーマ(「Throwing it straight up!」)にたどり着いたという感じですね。その意味で、今回は先にティザー用を作ってみなさんの感想を聞けたのはありがたかったですね。もしあのまま一気に作っていたら全体的に重苦しい感じになっていたと思います。


──日常シーンの楽曲ではデジタル音を使った軽やかな楽曲もありました。

中川 オーケストラだけでやると重くなりすぎるような気がするんですよね。ライト感というか、全体を見渡したときの聴きやすさみたいなものを出すには、シンセサイズされた音を置くほうが調節しやすいというのがありますね。あと、ネットの書き込みだったかな、「戦隊シリーズみたい」という意見もあったんですけど、戦隊シリーズとしての発注だったら僕はこう作らなかったと思うんですよ。というのも、戦隊シリーズには連綿と続くフォーマットがあってそこの流れに乗って僕は作るから、今回みたいに好き勝手にやっていないと思うんですよね。だからこの曲はちゃんと「アクティヴレイド」用だと思っています。(注:中川氏は戦隊シリーズでは「百獣戦隊ガオレンジャー」、「轟轟戦隊ボウケンジャー」の音楽を担当)



──レコーディングミュージシャンは、トランペットにエリック・ミヤシロさん、サックスに本田雅人さん、トロンボーンは中川英二郎さんとそうそうたる方たちが揃っていますね。

中川 今回もまたジャジーでブラスを使う方向だったもので、そうなると誰に演奏してもらうのかはおのずと決まってくるので、まずこの3名の方に来てもらいました。今回40曲ぐらい作ったのですが、自分1人でやっていると偏っているんじゃないかと心配する部分もあって、ミュージシャンの力に頼って音楽的な流れとか雰囲気も変えてもらおうと、ほかにもいろんな人に参加してもらって録りました。

──録音していてプレイヤーからのフィードバックを感じることはありますか?

中川 それはよくあります。本田さんがメロディを吹いてくれた「Throwing it straight up!」なんて、これを求めてましたって感じですごく良かったですね。

──収録はいかがでしたか?

中川 いやー、ミュージシャンの方にものすごく迷惑をかけました(笑)。管楽器の場合、このメロディは奏者の肉体に負担をかけることになると重々わかっているんですけど、どうしてもこうやってほしいということがありまして。みんな頭が痛いとか言っていましたね。エリックさんなんて「この曲、誰が作ったんだよ~」って、マイク越しに言ってくるんですよ(笑)。そこで「ホントすいません」と言いながらやってもらって、かなり時間をかけて録ることができました。こういうのはやったもの勝ちですから(笑)。本当に良いミュージシャンに集まってもらえたし、編成的にも普通だったら頼めないようなホールで録音するとか、なかなか試せないことができたので、前からやりたかったことをほとんどやってしまいましたという感じでした。



──描きたいものが描けたという充実感がありそうですね。このサントラの資料にも「中川幸太郎史上 最高傑作」と書かれています。

中川 えーっ、それ本当に僕が言ったの?(スタッフ:「言ってました」)そっかー、じゃあよっぽどハイだったんですね(笑)。

──テンションが上がるのは録り終えた段階ですか?

中川 いえ、収録では申し訳なくてしょうがないんですよ。むしろ作曲をしている時のほうが高くなっていますね。「俺は天才じゃないか?」って思ったりします(笑)。逆に、「俺はもうダメじゃないか」って落ち込んだりして、けっこう振り幅があります。気がつくと「ちゃんと音楽やらなきゃ」って気分になっているんですよね。そこで「違う」と思い直すんです。見ている人はどんな音楽が鳴っていたら楽しいかなとか、谷口さんはどんなものを望んでいるのかなとか、絵を描くスタッフはどう気分よく描けるのかなと思っていくうちに、また気分が上がっていくという感じですね。

──改めて、今回の劇伴制作を終えての感想はいかがですか?

中川 僕は結構やれたなと思っているんですけど、正直なところドキドキしている気持ちもあります。放送は楽しんで見ていますが、最近のほうが作品を見ることがより好きになってきました。昔は自分がやったアニメをあまり見られなかったんですよ。「俺はこれだけやった。そのあとどう受け止められるかは知りません」ではなく、皆さんがどう思っているかが気になりますね。独りよがりでは意味がないですから。2クールもあるので、そこは評判を聞いて反映できたらいいなと思います。

──サントラも収録順に聴いていくと単体のアルバムとしてもドラマティックに感じられる構成に思いました。

中川 ありがとうございます。本編ではなかなかフルコーラス使われることもありませんので、音楽をトータルで聴くとこんなふうなんだと思ってくれるところもあると思うので、ぜひ聴いてほしいですね。とはいえ、僕は必ず作品ありきで作っているので、何もなかったらこのアルバムは作れていなかったでしょう。こうやっていろいろと作品の情報を見せてもらえたからこの音楽は作れたんです。最初の話に戻りますが、僕は音楽をそれほど好きじゃないんです(笑)。だから、単に音楽を作るだけというのだったらこの仕事をできていない。ただアニメを見るのは好きだから、いちファンとしてテレビの前で楽しみたいという気分を共有してほしいというか、僕はこういうシーンに流れる音楽だったら楽しめるよという思いをお聞かせしたい。曲を聴いたらシーンを思い出したり、シーンを見たら曲を思い出してくれるような形で、作品を見てくれる方たちに少しずつ浸透してくれるといいなと思います。




(取材・文/日詰明嘉)


CD情報

■「アクティヴレイド -機動強襲室第八係- オリジナルサウンドトラック」

音楽:中川幸太郎

レーベル:FlyingDog/2016年3月23日(水)発売

税抜価格:2,800円


■収録曲
01. Throwing it straight up!  02. Golden Life(Short ver.)
03. Get worn  04. Piece of junk
05. After party  06. The negotiator
07. ミナクル☆ラッキー  08. Everyday atmosphere
09. It's my hobby though  10. Comfortable time
11. Evil design  12. The bad times
13. Gyration  14. Let's take off
15. The bottom of this  16. Counterattack
17. What are you driving at?  18. Activeraid
19. Now or never  20. Back to the day
21. 透明な夜空(Short ver.)


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アクティヴレイド -機動強襲室第八係-

アクティヴレイド -機動強襲室第八係-

放送日: 2016年1月7日~2016年3月24日   制作会社: プロダクションアイムズ
キャスト: 島﨑信長、櫻井孝宏、小澤亜李、石上静香、倉田雅世、村田太志、相坂優歌、花江夏樹、大川透、大西沙織、鳥海浩輔、緑川光、大原さやか、山下大輝
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