『マナリアフレンズ』 最終回直前企画! 美麗なキャラクター&美術はいかにして作られたのか? 岡本英樹(監督)×吉田南(キャラデザ)×川本亜夕(美術監督)インタビュー

2019年03月22日 17:000

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設定がなければ、修正時に書き足していく

――話を追うごとに、キャラクターの関係性の変化にしたがって表情も変わっていくということでした。話が進むに従って、美術の面で変化した部分などもあったのでしょうか?

 

川本 同じ場所の背景でも四季によって画や色を変化させる、ということはありました。そこに生えている花が変わっていたり。

 

岡本 『マナリアフレンズ』では、ざっくりと「グレアとアンの1年間を描こう」としたイメージがあったんです。梅雨や夏があって、冬があって、雪解けして春が訪れる……そんな季節の流れを、2人の仲が縮まっていくコンテとうまくリンクできたらいいかな、と。

 

実はこれ、僕が前に手がけたアニメ「このはな綺譚」でもやった手法でなんです。その作品の美術(監督補佐)も川本さんにお願いしていたので、それを踏襲した形ですね(笑)。

 

川本 なので、美術として意識したのは、作品内の時間帯と季節くらいですかね。あと、5話はわざとシリアスに見せるために、普段の背景よりも彩度を一段落としたグレートーンにするといった調整も撮影様がしてくださっていました。

 

吉田 Blu-rayなどで見てみると、5話だけトーンが違うというのはよくわかると思いますよ。

 

 

――それでは、そのほかに美術面において、岡本監督からの印象深い指摘や修正などはありましたか?

 

川本 あー……。

 

岡本 いろいろ申し訳ないことをバンバン言った記憶が……(笑)。

 

川本 美術設定には「アップの背景設定」と「遠くから見た背景の設定のみ」の場合があったりします。ですので、階段の手すりのディテールなどが存在していなかったりして、そういったデザイン部分を美術のほうで何度か変更したりはしましたね。最初は何もない柵だったのが、そのシーン全体のムードを表現するために凝ったデザインを入れたり。そういう細かなデザインを詰めたりする修正は何度かありました。

 

岡本 どうしても美術さんにデザインをお願いする部分もありますし、制作の都合上、後から修正をお願いする形になる部分もあるんですよ。

 

もちろん、表現をどこまで突き詰めるかはスケジュールの中で取捨選択しないといけないんですが、世界観を決定づけるものだった場合には、時間がない中でも1回は修正をお願いしていましたね。なので、だいぶご迷惑をおかけした部分もあるのかな、と(苦笑)。

 

川本 美術背景の仕事では、そういった作業は必ず発生します。でも、『マナリアフレンズ』は(デザインの部分を)かなり盛ったな、と(笑)。もともとの設定が素晴らしくて描き込みも多いので、美術設定がない部分については、こちらでたくさん足したり盛ったりしました。

 



こだわった光の演出

――『マナリアフレンズ』を見ると、美術を含めた1カットの情報量の多さに驚かされますね。また、背景だけでなくレンズフレアといった光の演出もかなり印象的でした。

 

吉田 僕もライティングにこだわる作品だな、という印象は強く受けました。なので、キャラへの影の付け方にはすごく気を使ったのを覚えています。

 

背景に負けないような情報量の画面を作るためにはキャラの顔にもたくさん影をつけたいんですが、顔の立体感に素直に影をつけてしまうと、キャラがかわいくなくなってしまうんです。『マナリアフレンズ』は、あくまでもキャラを魅せるアニメ。だから、キャラはかわいくないといけません。

 

そこで、顔だけ影を少なめにして、髪の毛や服には多めに影をつけるなど、ライティングを意識しつつ、画面全体のバランスとキャラをかわいくするための微調整についてはかなり考えながら描いていました。それでも、1話とかは影を多めにつけてしまっているんですよ。話数が進むにつれて、最終的な画面をイメージしながら描けるようになってきて、個人的にも勉強になる部分が大きかったですね。

 

川本 「暗さとかわいさ」を両立させるのは大変ですよね。作画の方には絶妙なバランスで背景と調整していただいていて、すごくありがたいです。美術でも、背景の中に暗い部分もあれば、ある部分はキラキラさせていたりと、全体のバランスを見て描いたりしています。

 

――岡本監督としても、光の演出にはかなりこだわっているのですか?

 

岡本 光ひとつをとっても、外の太陽光や薄暗い部屋に淡く入る光など、いろいろなパターンがありますよね。僕はこうした光の表現や画面全体の色味によって、”感情”をだいぶコントロールできると思っているんです。ここでいう”感情”とは、キャラクターの感情と、見ている人たちが感じる感情の両方のことです。

 

気持ちが不安な時は色を抜いたり、テンションが高い時には彩度が高かったり、顔に影を落としてみたり……。そこから出てくる感情を、光と影、色で表現しようというのは、『マナリアフレンズ』でかなり大きくやっていた部分ではあります。

 

 

――光と色でキャラや視聴者の感情をコントロールするということでしたが、美術面でもそういったところを意識したりはするのでしょうか?

 

川本 そのシーンの感情であったり、「このシーンはどういうふうに見せたいか」というのは、もちろん背景を描く際にも意識しています。

 

そもそも、背景美術は「今、背景も見せどころですよ」という演出をしていただかないとあまり注目されないものです。そういう意味でいうと、『マナリアフレンズ』はかなり背景を見ていただける作品だと思うので、美術監督としてはありがたかったです。

 

岡本 やっぱり作品全体の雰囲気を作るのは美術力でしかなくて、そもそもキャラクターが地に足を付けている背景がないと、見ている人には何も伝わらないと思います。

 

そのためにも、どんなシーンでどんな感情を持っていて、どんな雰囲気なのか……そういった最低限の情報量というのは、美術さんにお願いする重要なポイントです。この作品では、だいぶ細かいところまで描いていただいたな、と思います。また、整合性を大事にした「リアル」ではなく、見た人が「リアルに感じる」という表現は大事にしていただきました。背景や美術を通じて、感情や雰囲気といった情報が伝わるように意識して作っていましたね。

 

――「見て感じるリアル」というと、作画面でも負うところが大きそうです。

 

吉田 監督の話を受けて言うと、そもそもキャラクターが背景に乗らないと、その存在感をリアルに感じることは出来ないですよね。

 

ただ、作画では色がついていない状態で描くので、今描いているキャラが空間の中にちゃんと存在できているかどうか、というのはわかりづらい。なので、キャラや背景に色がついた段階で作画を調整することも多かったです。「見て感じるリアル」という点については、『マナリアフレンズ』は一般的なアニメよりも気を使っていたと思います。リテイクもすごく多かったですし(笑)。

 

岡本 (苦笑)。

 

 

――今回は、『マナリアフレンズ』の画作りについて、お話をお聞かせいただき、ありがとうございました。最後に、直前に迫った最終回を楽しみにしている読者へメッセージをお願い致します。

 

川本 現実世界を舞台にしたアニメーション作品だと、ゆったりと時間が流れて背景に目がいく作品も多いと思います。ただ、ファンタジー作品の場合はアクション要素が強かったりする場合が多く、ゆっくりと”その世界”を見てもらえる作品というのはあまりないような気がしています。

 

でも、『マナリアフレンズ』は背景美術もしっかりと見てもらえるような演出になっていて、私としてもやりがいのある作品になりました。背景美術などを通じて、ゲームやアニメの中の世界にはもっと広がりがあって、「そこで生活する人々の毎日って、こんな感じなんだな」ということを感じてもらえたらうれしいですね。

 

吉田 『マナリアフレンズ』は、グレアとアンの2人に焦点を当てたアニメです。なので作画についても、この2人の感情や変化を表現するのにたくさん気を使ってきました。ちょうどブルーレイ第1巻も発売されましたので、また1話から通して見直してもらえると、グレアとアンの距離がどんどん縮まっていくのがよくわかると思います。

 

それにブルーレイであれば、テレビ放送では薄暗かった部分もより鮮明に見えるはずです。グレアが寝ているシーンなんかは、ブルーレイで見たほうが綺麗にはっきり見えますよ(笑)。

 

そして、最終話を見終わった後には、『神撃のバハムート』や『グランブルーファンタジー』でグレアやアンを操作してみてください。そうしたら、アニメを通じて2人が一緒に過ごした「マナリア魔法学院」での1年間が見えてくるはずです。それはゲームのアニメ化ならではの楽しみ方だな、と思います。ぜひ、そういったところも含めて楽しんでいただけるとうれしいです!

 

岡本 『マナリアフレンズ』の制作中は、「アンとグレアをいかに身近に感じていただけるか」ということをずっと考えてきました。視聴者の方には、2人の距離が近づいて友達から親友になるまでの時間を一緒に歩んでいただき、よりこの世界の住人になっていただけると良いな、と思いながら制作しました。

 

「『マナリアフレンズ』を見て、幸せになれた」と言ってもらえたら僕たちは幸せですし、アンやグレアのことをより好きになっていただけたらアニメをやった甲斐があったな、と思います。ぜひ、よろしくお願いします!

 

――本日は、ありがとうございました。

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マナリアフレンズ

マナリアフレンズ

放送日: 2019年1月20日~2019年3月24日   制作会社: CygamesPictures
キャスト: 日笠陽子、福原綾香、水樹奈々、羽多野渉、こやまきみこ、井上喜久子、内田雄馬、沢城千春
(C) 「マナリアフレンズ」製作委員会

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