「今の最高点、でも通過点」進化を続ける声優アーティスト・渕上 舞 2ndシングル「リベラシオン」インタビュー

2018年10月23日 12:000

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渕上 舞にとって初のオープニングテーマとなった「リベラシオン」がリリース。そこに込めた思いと自身の歌声についての考え、そして作詞と歌唱を両立することに積極的になっている彼女の心境の変わりゆく現在を聞いた。

── 前作から3か月での2ndシングルです。渕上さんはアーティスト活動をはじめるにあたり、マイペースさを大事にされていくというお話をされていましたが、現状の活動の状況をご自身ではどのように感じていますか?

渕上 怒涛のように日々が過ぎていってますね(笑)。1stシングルの制作をしていたという記憶も浅いうちに2ndのリリースになって、時間がどういう風に流れているのかを見失いつつあります(笑)。当初は1stアルバムを出せてライブができたらそれで十分くらいに思っていたんです。でも満足の行くアルバムになり、そこからさらにどんどん新しいことに挑戦させていただけていることによって、自分の中でも「もっと活動していきたい」という思いに変わっていきました。我ながらちょっと不思議に思っています。

── ご自身でもやってみて初めて湧いてきた気持ちだったんですね。

渕上 そうですね。それがやりがいに繋がっているという実感があります。もちろん、それまでよりもアーティストとしての活動にスケジュールを使うわけですが、精神的な部分においても、アーティスト活動をきっかけにひとつ強くなれたのかなというような気がしてます。私がそういう発言をすることを意外に思う方もいらっしゃると思います。でも、それは嘘でもなんでもなくて、こうやって作らせていただくと、もう次への展望が自分の中で湧いているんです。

── 歌詞を書くとき、渕上さんはどのようにされているんですか?

渕上 日常から言葉に注目をして生きていくというか、言葉をどんどん回収していく作業をしています。たとえば「アスファルト」という言葉を見聞きして、「歌詞に入れたらちょっと格好よいかも」と感じられる頭でいることが大事だなと思っています。また次に歌詞を書かせてもらえるかもしれないという視点で、日頃から暮らすようになりましたし、そのぶん活動の幅もすごく広まりました。完全にインドアな私でしたが、作詞をするようになってからは出歩くようになったんです(笑)。雑誌で読んで気になっていたカフェも、今までであれば「いつか行きたいなー」って思っていたのですが、仕事と仕事の間とかで足を運んでみたりするようになりましたね。

── さて、新曲の「リベラシオン」ですが、前作「Rainbow Planet」では主題歌になったTVアニメ「プラネット・ウィズ」の作品に出演していることが歌うことに深くからみ合っていたという話でしたが、今回は出演されていないことで何か取り組み方への違いは生まれましたか?

渕上 どちらにもよい部分があるんです。出演しているほうがキャラクターや作品の奥深くを知ることができるのですが、どうしても演じるキャラクターのフィルターを通した目になってしまいがちです。それは気持ちの面でも、そのキャラクターが苦手にしている人を私も苦手に思えてきたり、逆もまたそう。今回は完全に外側から歌詞を書かせていただきました。原作やシナリオ、コンテも見させていただいて、作品全体を広く、フラットにとらえることができました。今までは基本的に声優としてのお仕事をやらせてもらっていたので、そういう気持ちで作品を見るのは初めてに近い経験だったと思います。

── 歌詞もまた書かれています。今回は松井洋平さんとの共同でクレジットされています。どのように進められたのでしょうか?

渕上 これまでの自分の曲と違い、今回は作品の主題歌になるというところでさまざまな監修を経て形になるという前提のもと、挑戦させていただきました。楽曲から作品をとらえると、主題歌でありながらも私自身の歌でもあるので、自分のこととも照らし合わせて書いていければと思って書いていきました。それをもとに松井さんが作品の全体像やキャラクター・世界観を採り入れて書いてくださり、まとめてくれたという形です。

── 渕上さんとしての言葉・気持ちが表れている部分とはどんなところでしょうか?

渕上 あちこちにあるのですが、冒頭の「100年先の未来まで届け」、サビの「100年先の未来まで続く言葉はいくつあるの?」は、作中の百年戦争をモチーフとして、現在は声や歌を届ける仕事をしている自分にとって「私の存在しない100年先の世界に残せるものって何なんだろう」と思って出てきた言葉です。100年って長いような、でも視点を変えて歴史的に見れば短いような時間で不思議な感覚なんですよね。

── 松井さんはお会いされたり意見を交換されましたか?

渕上 いえ、向き合って作業はしていないので、いつかしっかりとお話しできる機会があったらと思っています。私が書いた部分を松井さんがどのように汲んでくださったか、どういう風に残してくれて、どこが足りなかったかわかるんです。スタッフの方から「比べたときに松井さんの歌詞のほうが、渕上さんが歌を乗せたときにきれいに聞こえる」と言われたことが印象的でした。まだ自分はそこまで考えが行かなくて、自分が歌っていて気持ちよいことをメインに書いていたんですね。自分ではなく、人が聴いてどう思うかについて頭を巡らせて書く必要があるなとひとつ勉強になりました。あと、今回で面白かったのは、作品の主題歌というお題だけ与えられたので、それぞれに注目する視点が違うんですよね。ジャンヌ・ダルクに目を向けるか、広く百年戦争のことを書くか。松井さんにお会いした際にはそういうお話を聞いてみたいなと思います。

── 作曲されたのは「Fly High Myway!」と同じくKOHTA YAMAMOTOさん。以前からこうした楽曲がお好きとうかがっていました。今回受け取っての印象はいかがでしたか?

渕上 ほかにも候補曲はいただいたのですが、この曲が強かったですね(笑)。これまでも聴く分にはこういう曲がすごく好きでした。水樹奈々さん大好きっ子だったので、その影響もあってインパクトがある曲はカッコいいって思っちゃいますね。とはいえ、キャラソンのときは私はなかなかそういうキャラの担当にならなくて、そのキャラに合わせるとやっぱりやさしい曲になるので、ソロとしての活動でパワフルな曲を歌えるのは楽しいですね。この曲も、パワフルではあるのですが、乱暴というわけではもちろんなくて、生のストリングスを入れてもらえることで、「ユリシーズ」の世界観ともマッチして、強さの中に何か凛とした優雅さみたいなものを感じられるんです。特にDメロの部分がそうですね。ストリングスは「Fly High~」のときもそうだったのですが、入れることで爽やかさの中に深みが出たり、そこに広がるちょっとした重さや決意みたいなものが表現できたなと感じていました。今回、布陣も含めてそこからの成長を聴いてもらえるかなと、自分で聴きながら思っていました。

── ご自身のボーカルを入れるにあたり、どのような点を心がけて向かいました?

渕上 一番はパワフルさが前面に出ると格好よいなと思っていました。これは持って生まれた声質や歌い方のせいなのかもしれないのですが、私はどんなに強く歌っているつもりでも、実際聴くとあまり強く聞こえないんですよね。それをもうちょっとひと皮剥けないものかと、もっとアタックを強めにしたりと試行錯誤して、かなりテイクも重ねました。自分から「もう1回やらせてもらっていいですか」って。

── 迫力を出すというのは具体的にどのようにすることなのでしょうか?

渕上 もう、思っている以上にやることだけですね。アタックをつけるにしても、「これってオーバーに聞こえて変なんじゃないか」というぐらいがちょうどよかったりして。特にこういうパワフルな曲はそれだけ周りの楽器の音も強かったりするので、通常のテンションで歌っていると埋もれちゃうんですよね。この曲では今の精一杯を出しましたが、以降はさらに上という風に成長していけたらいいなという目標がひとつできました。

── MVはどういうテーマで撮られたものでしょうか?

渕上 渋谷でフードを被っている私と、工場の場所で白いドレスを着ている私。それは陰と陽のキャラクターで、どちらも私なのですが、互いが惹かれ合い求め合うというストーリーです。

── 役に入る時は、顔出しのときと声で演じるときで気持ちの入れ方や読み取り方の部分で変わりはありますか?

渕上 変わりますね。声の出演、たとえば「ガールズ&パンツァー」の西住みほであれば、みほが何を思っているかを私なりに噛み砕いて、みほだったらこう言うかなっていう風に表に出すんです。でも自分自身での芝居となると、もう自分に気持ちを入れなきゃいけないというか、なりきることになります。特に「リベラシオン」のMVでは何かに追われているかのように隠れながら走ったりするんです。監督から「はい、今誰かに追われてます。逃げて」って言われて(笑)。自分自身でお芝居してる人ってすごいなと改めて尊敬しました。

── それも含めてソロ活動やって楽しんでらっしゃるなと思います。

渕上 楽しいですね。でなければ朝の4時まで渋谷で撮影はできません(笑)。もちろん大変なんですけど、そうでもないとそんな環境に身を置くことなんてないので、それはそれで楽しみのひとつかなって思います。


── カップリングの「Good morning!Hello?Good bye.」 はどういう風に作られていったのでしょうか?

渕上 今までは、結構せつなめな曲が多かったので、今回はどちらかというと、明るめな淡い恋というか、これからの発展が垣間見えるような恋。そういう少し温かい気持ちになれるような曲があるといいよねという話になり、何曲か候補をいただき、この曲になりました。作詞にあたっては、ファンタジーで書いてほしいというお題が渡されました。それは異世界とか妖精とかではなく、人間同士の恋に限らない、たとえば月とお星様の恋のような感じのという意味でのファンタジー。いろんな受け取り方をしてもらえるように書いてはいるのですが、私の中ではペットショップでお迎えを待つ鳥と、飼い主になるであろう人のやり取りをテーマに書きました。なので、ペットショップの鳥さんの視点です。

── 「とまり木の端」や、「隙間に伸ばした指の先」あたりがそれですね。

渕上 はい。そのあたりをわかりやすく、鳥がこの人にお迎えしてもらいたいなという思いで書きました。

── 「隙間に伸ばした指の先」を「ゆーびの先」、「戸惑い」を「とま どい」と、歌詞の言葉を割る歌い方をする個所がありますが、歌詞を書かれた際に、歌手としての渕上さんは抵抗ありませんでしたか?

渕上 抵抗ありましたね。なので、この前までは避けてたんです。これは言葉を仕事にしている職業柄なのか、聞いて何と言っているかがわからないのは嫌だったんです。でも、最近の自分はそれを許せるというか、何なら自分の中でちょっと流行っていたりするんです。作詞をさせていただいた中で、新しいことをやっていかないと煮詰まるなと思ったので、今回ちょっと挑戦してみました。

── 歌の最初で語りのような歌い方が印象的です。これはどのように考えて出てきた表現ですか?

渕上 ふわ~っと、より耳心地のよい曲になればと思って。温かくやさしい気持ちになれるように歌いつつ、でもふわっと歌い過ぎてしまうと残らなかったりするので、そういう部分でキーワード的に挨拶を英語で入れてみたり、最後のありがとうをセリフにしてみたんです。「何を見てたの?」「何を考えてたの?」という歌詞があるのですが、そういう風に思ってもらえたらうれしいなと思いながら歌っていました。最後はセリフを入れることでキャラソンぽくならないかなと少し悩みはしたんです。でもこれはテーマとして物語なので、セリフにしたほうが、飼い鳥が覚えた言葉という形にもなるし、私自身からの気持ちという意味でも「ありがとう」はやっぱり入れたいなと思って、私からリクエストして入れさせてもらいました。

── 今回のシングルの位置づけをどのようにご自身ではとらえていますか? また、この両方の曲をリスナーにどのように聞いてほしいですか?

渕上 初のオープニング曲ということもそうですが、自分がキャストとして出ていないアニメに関わることにおいても、また新しい経験をさせていただいたと思っています。曲に関してもパワフルさという意味で、今の私が持っている一番を出したので、それを皆さんに受けてもらえたらうれしいです。もちろんその経験の中での向上心もあったりするので、これが今の私、今の最高だけれども通過点であると受け止めてもらえたらと思います。そして主題歌として世界観を汲んで私自身も考えて歌詞を書き、言葉も組み込んでいただいているので、作品と一緒に楽しんでもらえると、より曲としても深みが出るのかなと思います。いつもの渕上 舞が聞きたいなという方にはカップリングでやさしく歌っておりますのでこちらで癒されていただけたらうれしいです。


(取材・構成/日詰明嘉)



CDデータ


■TVアニメ「ユリシーズ ジャンヌ・ダルクと錬金の騎士」オープニングテーマ「リベラシオン」

価格:1,200円(税別)

レーベル:バンダイナムコアーツ/2018年10月24日発売


〈収録曲〉
1.リベラシオン
2.Good morning!Hello?Good bye.
3.リベラシオン(Off Vocal)
4.Good morning!Hello?Good bye.(Off Vocal)

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