「デビルマン」で自分が受けた衝撃を今の人たちにも感じてもらいたい。湯浅政明が永井豪から受け取った“意気込み”――「DEVILMAN crybaby」監督インタビュー

マンガが描かれていた当時よりも現在のほうが、きな臭い雰囲気を感じる

── ビジュアルイメージはどんなふうに考えられましたか？

湯浅　悪魔と人間、光と影みたいな印象があったので、画面作りも光と影を強調した作りにしました。影の中から人間が出てきたり、明るいところから影の中に人間が入って消えたりするといったように、人間が光と影の中を行き戻りしながら、どちらにでも行ける存在であるということを第1話から出すようにしています。デーモンなどはシルエットでもわかるような感じにしつつ、動かすことに躊躇しないのは自分のいつものスタイルだと思います。期待されているのはデーモンの質感とかおどろおどろしいものだと思うので、そのあたりはただ殴ったり投げたりするだけではなく、引き裂くとか食いちぎるといったアクションによって表現しています。

── デビルデザインの押山清高さんのお仕事はいかがでしたか？

湯浅　僕は初めてなのですが、以前、「スペース☆ダンディ」（2014年）で弊社のチェ・ウニョンが演出をした回で作画監督を担当されて、そのときから「彼、いいよね」みたいな話をしていたんです。そのあとも仕事を見ていて、押山さんと一緒に作品作りをしたいなと思い、今回はデビルデザインとデビル作画監督で入っていただきました。他に軽い話数を１本持ちたいと聞いたのですが、大事で重い第5話のシレーヌの回を担当してもらいました。監督もご経験されていますし、相手の要求に応えることも慣れている方だと思うので、処理的には僕もそれほど細かい注文は出さずに、たぶん押山くんならいい様にやってくれるだろうと割と任せ気味にしました（笑）。

── 人間の衝動を作品に投影するという点で、永井先生と湯浅監督は共鳴するところがあると感じました。初めて「デビルマン」を読んだ当時の感想や、永井豪作品が今の湯浅監督の作品作りにどんな影響をもたらしていると思いますか？

湯浅　子どもの頃から、本当に好きでした。特に「ハレンチ学園」とか「デビルマン」とか「マジンガーZ」とか、ホントに社会に戦いを挑んでいるかのような感じで、とにかく新しいもの、面白いものという意気込みで作られていて。お会いしてもいまだにその意気込みでやっていらっしゃっているのを見ると、影響を受けるというか、「僕ももうちょっと頑張らないとな」と思いました。最近はおもねることを覚えて、人に合わせるというか、様子をうかがっていたもので（笑）。


── 本作ではストーリーテラーとしての湯浅監督らしさを堪能しました。

湯浅　テラーですか。それはぜひ、強く言っておいてほしいですね（笑）。でも、永井先生のマンガを読んで、自然とそうなった感じだと思います。「たぶんこういうことなんだろうな」というのを、自分がわかりやすいように足していくという、今風に自然なように置き換えたりする作業で、特に何かをこう変えてやろうとか足してやろうという意識はないんです。

── 今この時代に「デビルマン」を作り、そして世界の視聴者に向けて届けていく意味について、湯浅監督ご自身はどのように考えていますか？

湯浅　永井先生が描かれたマンガの時代の空気みたいなものには、今のほうがさらに近づいているような気がします。世の中にきな臭い雰囲気があるので、実際に変なことにならないといいな、なんて思っていますが（笑）。やっぱり、人を疑ったり悪く解釈したりするのは簡単ですけれども、理解するのは難しいなと思っていて。できるだけ理性的でいられるといいな、というメッセージが込められたマンガをアニメーション化しています。バイオレンス描写やセクシャルな面がけっこうあるのですが、最終的には、理屈ではない大切なものを伝えようとしているので、そういうテーマを踏まえつつ、楽しんで見てもらえたらいいなと思っています。



（取材・構成／日詰明嘉、奥村ひとみ）