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モリイ、タノシカッタデス!
■11話「共ニ語リシ光輝(めいゆう)ノ裏切リ」
脚本:広田光毅 絵コンテ:三宅和男
演出:福元しんいち 作画監督:菅原浩喜
――第8話ぐらいまではネットの評判もうなぎ登りでしたが、特に第11話以降は賛否両論ありました。
森井 いやー、やりきった感がありますね。ネットで賛否両論だったのが楽しくて仕方なかったです(笑)。
久保 作っている時も、評価がバッサリ割れるだろうなというのは当然予想していました。どこかに激しく刺さってくれればいいかなって。
森井 でも、11話と12話は一番難産でしたね。
広田 10話までの脚本会議をしている最中もずーっとどうしようか考えていました。11話に取りかかったのは学園祭が終わったあたりで、11話を書いている時も12話をどう落とし込もうかずっと悩んでいて。
久保 その時点では、まだ12話の宇宙説がまだちらほら残っていましたからね(笑)。
広田 ありましたね。宇宙説とか宇宙人襲来説とかいろいろ(笑)。書き始めてからは早かったですけど、方向性が出てくるまでずっと悩んでいました。
――どの程度までは最初から決まっていたのですか?
広田 「アニメの世界」というパラレルワールドがあってそこに飲み込まれる、ぐらいだったと思います。絵としては、11話の最後で「メガネをかけるとみんなが絵コンテに見える」ということだけ浮かんでいました。でも、そこにどう引っ張っていくんだよ……と頭を抱えたのを覚えています。
――オーロラ先輩のこともかなり悩まれたようですね。
広田 監督から「最後はオーロラを救ってあげたい」と言われたので、彼のポジションをどう持ってくるか悩みました。最終的に世界を戻すのは、ネコ先輩の犠牲のみにしたかったですし。ラストのラストでオーロラにひとこと言わせることによって、彼のポジションが決まった感じです。
――最近は「こういう作品です」とパッケージを決めたら最後までブレないことが多いと思いますが、本作は全然違うものになっていますよね。それって「魔法のプリンセス ミンキーモモ」などの80年代のアニメに近い気がします。
森井 「ミンキーモモ」の話は脚本会議でちょっと出ましたね。
田沢 僕は構成を聞いた瞬間にまず思ったのが「バトルアスリーテス 大運動会」でした。めっちゃ賛否分かれますよと(笑)。
広田 でも、8話まで喜んでくれればいいんですよ。「8話までだったらよかったのに」と言われていれば、それはそれで勝ちでしょ(笑)。
――それはそれで志を感じます。
森井 コンセプトとして「埋もれないようにしよう」というのはみんなにありました。なので、爪痕を残しつつ、みんなをビックリ仰天させてみようと。そこは外れていなかったかなと思います。
久保 ストーリーの根幹を決める話し合いの時から、森井監督は「メタネタをやりたい」とずっと言っていました。でも、しょっぱなからメタネタを織り込んでいくと、メタネタだけのアニメになってしまいますよね。メタネタをどういう扱いにしようか何時間も話し合って、そこで出たのが「メタネタをやる世界」と「やらない世界」の2つに割ってしまうことでした。それが平行世界になっていて侵食してくる、侵食が始まったらメタネタが出てくる、という作りになったんです。
森井 だから、前半の演出ではアニメ的な、たとえば「漫符がポコポコ出てくる」とか「SDになっちゃう」といった演出を抑えているんですよ。9話以降はだんだんおかしくなってくるので、そこからはSDをちょっと使いましょうと。
久保 8話までをパッケージと考えた場合、8話の学園祭エンディングのシーンがひとつのカタルシスとなるんですけど、トータルで見た場合は「今まで2Dで描かれていた未乃愛たちがいきなり3Dになるという違和感」なんです。それが9話へのフックにもなっています。でも、実際に作ってみたら結構普通に見えちゃったなと(笑)。
森井 まぁまぁこういうのもあるよねって(笑)。
広田 最初は、キャラクターたちに3Dになったことを突っ込ませようと思ったんです。でも、ここで彼女たちの日常は終わってしまうんだから、違和感は突っ込まずいい学園祭にしようと思って我慢しています。
――この時点ですでに侵食が来ているのですか?
久保 侵食自体はもっと前からじわじわ来ています。たとえば5話にもちょこちょこあって。
田沢 イベント(コミケ)会場にいきなり黒板がボンとあるんですよ。
森井 あと、僕がいるんです。あの時点でちょっとだけイベント会場が変になっているんです。
久保 監督がいるカットの左側にマリ・ワカがいるので、みんなそっちばっかり見て気づいてくれなかったですが(笑)。
――そこは改めてBlu-ray BOXなどで振り返ったほうがいいですね。
森井 11話はそういう意味で、やりたいことがやれて面白かったなと思います。でも検索してみたら、「この演出はこのアニメでやっている」というのが結構あったので、目新しいことは意外とできていなかったなと思いました。“4:3へのじわじわ”と、(同じ話数の中で)“オープニングを3回”ぐらいですね。
広田 オープニング3回は初めて見ました。
久保 回数を競ってどうすんだ、という話もありますけど(笑)。監督がやりたいメタネタをギュッと凝縮して11話に突っ込んだところはあります。
■第12話「未乃愛、カタルシス」
脚本:広田光毅 絵コンテ:久保博志
演出:久保博志 作画監督:水谷麻美子
――ついに最終回、第12話です。
森井 最終回は意外とベタなんですよね。視聴者を置いてきぼりにしない、という意味ではいいと思うんですけど。
久保 特にアニメを語ることもなく、話にケリをつけようと(笑)。
広田 まっとうな展開をしているので、「ここに来てこいつら置きにきやがった」と思う人がいるかもしれません。でも、「これだけぶっ飛ばしてきて、まともな展開をするからいいんだろ」という気持ちもありました。
森井 「最後は投げっぱなしで終わるだろう」と思っていた人は絶対にいたはずなので(笑)。
久保 でも、共通認識として「アニ研も生徒会も、みんなハッピーで終わりたいよね」というのがありました。そこになんとか着地させたいなと思っていて。
広田 「アニメっていいよね」というところだけはブレないでください、と内海プロデューサーに言われていたんです。アニメをディスるような最終回にはしたくないと。これまで各話ライターさんが未乃愛とアニ研部員の絆をきちっと積み上げてくださったので、それを究極の形で表さなければいけないと思ったんです。最後の最後に、ネコ先輩とオーロラの話だけで終わってはいけないですから。そこでオープニングに描かれている手を繋ぐところが生きてくるんですよ。
――アニメを通して生まれたみんなとの絆のシーンはちょっぴり感動しました。
広田 だからこそ、未乃愛ひとりで「エタシン」のロボットに乗るところはあるけど、みんなが帰ってきた瞬間にはアリスロボを出す、最後に助けてもらうのはこれしかないと思いました。こういう友情モノって、パラレルワールドでは王道的な進み方だと思うんですよね。あと、エンディングをどうしようというのもありました。夢オチと言われるかもしれないですけど、夢オチではないよと。
久保 有り体にいうと「世界線がズレた」ということです。
森井 絵里香の髪の色も「アニメガタリ」の色に戻っているんですよ。そこで「アニメガタリ」に繋がるように。
――美子のメガネの色なども変わっていましたし、設定としてしっかり「アニメガタリ」に繋がっているのですね。
久保 そうです。「アニメガタリ」では、マヤに「よくできたアニオタの妹がいる」という設定がありますから。
――意外と、と言ったら失礼ですが壮大な流れなのですね。
森井 いや、後付けも結構ありましたよ(笑)。
久保 後付けバンザイです(笑)。
――12話はシリアスだけを抽出することもできたと思うのですが、そこにメタネタを挟んで来ました。それは森井監督の好みもあるのですか?
森井 そうですね。シリアスネタだけだと辛いなと思ったので。
広田 11話が相当鬱展開だと思うんです。そのまま12話も鬱展開でやるのは簡単なんですけど、それをやっちゃったら「アニメガタリズ」じゃなくなるなと。「アニメガタリズ」って最後までどんな状況においてもどうでもいいようなことを挟むよね、というものは入れようと思っていました。
――ネコ先輩とのやり取りとか、「アニメガタリズ」らしさがありますからね。
広田 本当はもっとネコ先輩とのやり取りでボケをかましまくっていたんですよ。尺がいっぱいいっぱいなのでズバッと落としましたけど。それよりも、アニ研のメンバーをもうちょっと早めに前に押し出しましょう、ということで調整しました。
――ネコ先輩が原因だという1枚絵は短すぎましたけどね。
久保 あれは後で止めて見てください、ということで(笑)。もとの脚本ではネコ先輩のセリフで説明していたんですけど、尺の問題もあって1枚絵でいいかと。
森井 どうせTwitterとかで流れるだろうから、サクサクといきましょうと。
――止めて見てみたら、本当にしょーもない原因でした(笑)。それでは最後に、改めて全話のオンエアが終わった感想をお願いします。
森井 僕はすごく楽しかったです!(笑)……周りのスタッフがどうだったかは怖くて聞けないですが。
田沢 ここまで人を巻き込んで「僕は楽しかったです」って小学生ですか!(笑)
広田 よくも悪くも監督が楽しんでいたというのは、残念ながら受け手側に伝わっていますよ。まぁ、こういう経験も長い人生で一度はあってもいいのかなと(笑)。
――初めて30分アニメの監督をされたんですよね。
森井 そうです。「やる?」と軽く言われて。個人で失敗した時に億単位の損失を会社に与えることってなかなかないじゃないですか。別に損失を与えるためにやったわけじゃないですけど、やらせてくれるDMMは太っ腹だなと思って(笑)。深く考えると「やらない」という選択肢が出ると思ったので、すぐに「やるやる」と言いました。実際にやってみて、大変でしたけどアニメってどうやって作るかをもう一度勉強できて面白かったです。
久保 最初の頃は、アニメ制作レクチャーみたいな感じでしたね(笑)。打ち合わせはこうやってやるんですよ、から始まりましたから。1話とか森井監督が全部の打ち合わせに出てくるので、作画の人とかやりづらいと言っていました。
森井 「見学させてくださーい」って。
竹内 「見学です」と言っても相手がビビっちゃうから(笑)。
森井 でも、一番のポイントは「沈まないこと」「埋もれないこと」だったので、そこだけは最低限クリアできてよかったかなと思います。
向かって左より田沢大典さん(脚本)、久保博志助監督、森井ケンシロウ監督、、広田光毅さん(シリーズ構成)、竹内宏彰さん(プロデューサー)。
――賛否両論は当然ありますが、刺さる人には強烈に刺さっていましたからね。
森井 実際、8話までの展開でずっとやってくれればよかったのに、という意見をすごくいっぱいいただいて。「確かにね!」「なるほど、それもありだったな」と思ったんですよ(笑)。
久保 思っちゃダメですよ!(笑)
――それも含めて「アニメガタリズ」だったと思います。全話の振り返りありがとうございました!
(取材・文・写真/千葉研一)