アニメーター・湖川友謙も参加! 村上隆監督のアニメ「6HP」第2話放送記念、脚本&シリーズ構成・中川大地インタビュー!!
第2話では、実力派アニメーター・湖川友謙も参加!
──それでは放送を目前に控えた第2話の見どころを教えてください。
中川 第1話では、オーソドックスな戦闘魔法少女もの、だけど背景だけ変な感じという趣でしたが、第2話では、ようやく本作独自の世界観がわかるようになります。冒頭シーンからけっこうびっくりすると思いますよ。第1話 は、いわゆる既存の「魔法少女もの」のイメージのトレースだったんだけど、それとは全くかけ離れたイメージが飛び込んできます。
言わば「魔法少女もの」という枠組に仮託して、戦後の日本アニメの全てが入ってくる感じです。そこでわかるのが、結局第1話の冒頭でああいうメカニカルなシーンが出てきたわけですが、やっぱり村上さんの快楽原則にしたがって観たいものを描いたら、別に「魔法少女もの」が見たいわけじゃなかったんだなと(笑)。
──わははは(笑)。
中川 第2話の冒頭では、主要キャラクターの過去に即して、この陽ノ杜市という舞台を取り巻く世界とは何かという説明が入るんですが……(※ここからネタばれしまくりなので、略)。……というわけで本作の世界観は、1980年代の核戦争後のディストピアという、日本アニメの伝統的なモチーフに近いイメージになっています。
──なるほど。1980年代というと、「北斗の拳」しかり「ナウシカ」しかり、やがて来たる核戦争に対するリアルな恐怖みたいなものが根底にあったわけですが、2010年代にそれを描くというのは、また別の意味が出てくるような。
中川 実際、日本は少子高齢化をはじめ、経済的にも文化的にも、誰もが思っていた以上の勢いで衰退しているわけです。かつては冷戦下のバブリーな繁栄に対する不安や閉塞の裏返しの想像力だった「終末的な世界観」は、むしろ現在の端的な衰退の象徴になりつつある。そうやってすべてが失われていく中、数少ない子供たちのために、なるべく自分たちが育った幸福な環境の劣化を食い止める努力を、 みんなでしていくしかない時代だよね、というとらえ返しをしたつもりです。
──そして第2話では湖川友謙さんもアニメーターとして参加されている。これはすごいアピールポイントですよね。
中川 今、これだけ多くのアニメ作品があって、アニメーターの人材を確保 するのが非常に大変なんです。プロデューサーの中薗さんも、先ほど言ったようにもともと実写畑でアニメのことは全然知らなかったので、初期にはアニメ制作会社のWikipediaを見て、「あ行」から順番に電話をかけて作ってくれるところを探すみたいなことをされていたそうです。そこからだんだん人を紹介してもらえるようになったりして、ついに湖川さんにたどりついたわけです。
ほかの方も、みんな数年先までスケジュールが埋まっている中でやってくれている。アニメ業界の門外漢がか細い糸をたぐりながら、面白がってやってくれる人とやっている感じです。
アニメとアートの現場の狭間で
──今回の放送でも本編にあわせてドキュメンタリーが公開されるわけですが、毎回制作現場の内幕もつまびらかにしていくというのが非常に面白いというか。
中川 リアリティショー的な側面もありますが、基本的には村上さんの個人作品制作の延長で、それをファクトリー化するという現代アートの作り方と、最初から集団作業としているテレビアニメの作り方が異種遭遇したクリエイション方法の衝突みたいなことが、如実に示されてしまっていると思います。
前回のドキュメンタリーで言っていたように、アートの世界なら、どうしても納得いかなければ納期の1か月前だけどひっくり返すということがありうるんですよね。
──ただ、テレビの枠を取って放送をするという行為をする時点で、すでに100%アートじゃなくなっているわけですよね。そこで、村上さんはテレビアニメはどこまでアートに接近できるのかという勝負をしているのかな、とも見えます。
中川 村上さんの生理感覚で何か物づくりをするとなると、意図と言うよりも制作工程が必然的にアートの 手法になってしまう。その帰結として、週何十本もシステム化された集団制作で作られていくアニメ制作のスタイルに対して、アーティスト村上隆が個人の力で どこまで挑んでいけるのか……という、ライブペインティング的なアートに結果的になっているという感じなのかな。
その悪あがきから見えてくるのは、村上さん的には1970〜80年代の昔のアニメにあったデタラメな勢いみたいなものを、どうすれば取り戻せるかという点へのこだわりです。
昔ながらのアニメファンだった村上さん世代からすると、洗練の極みに達した今の日本アニメの水準をすごいと思ういっぽうで、どこか物足りない感覚があると思うんですよね。
CGとかによってどんどん作画がシステム化されて、シナリオとか演出とか絵作りとかはどんどんマニアックですごいものが出てきている。ただそのいっぽうで、アニメ発展期にあったわけのわからない勢いみたいなものはどうしたら出せるんだと、苦労している。
その辺りの村上さんの生理感覚ってたいしたものですよ。僕なんかだと「こんなのどうでもいいじゃん」って見落としてしまいそうな些細なSEの入り方ひとつにしても、「いや、ここはもっと愉快な音を出してほしい」とかこだわりが強いです。
──お話をうかがってると、「6HP」って現代美術家・村上隆のアート作品を批評する、というよりも、僕らと同じアニメファン・村上隆が本気で作ったアニメを一緒に楽しむ、という感覚で追いかけていくのが正しいような気がしてきました。
中川 しかしあくまで現代美術作家村上隆の真骨頂でもあるわけです。
──第2話以降のスケジュールはどんな感じでしょうか?
中川 第3話の目標としては、2018年4月くらいの放送を目指しているとのことです。
──それにしても、アメリカのアートシーンで得た資産を元手に、もともとやりたかったアニメを思い切り作るなんて、まさにアメリカンドリームですよね。
中川 僕にはアメリカのアートのマーケットのことはわかりませんが、アニメの制作の何から何までが変化している今だからできる作品という感じだと思います。
──なるほど。では放送を楽しみにしています!
【放送情報】
■TVアニメーション「6HP(シックスハートプリンセス)」
・TOKYO MX:2017年12月23日(土)19:00~
【イベント情報】
■原画展「6HP展 Vol.1」
・開催期間:2017年12月21日(木)~1月15日(月)12:00 ~ 19:00
※水曜定休/年末年始12月29日(金)~1月3日(水)休廊
※入場料無料
・開催場所:中野ブロードウェイ2F 旧「pixiv Zingaro」スペース
(東京都中野区中野5-52-15)
JR中野駅北口よりサンモール商店街を経由して徒歩3分
・会場では、キャラクターデザイン・作画監督のmebaeさん監修の「アニメーションワーク集」、世界観設定・メカデザインのJNTHEDさん監修の「世界観設定集」と、第1話の公式資料を集積した2冊の“薄い本”(同人誌形式のムック)も特別頒布。
・詳細はこちらから。
http://hidari-zingaro.jp/6hp/
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