「ネト充のススメ」インタビュー企画第5弾 能登麻美子(主人公・盛岡森子役)インタビュー「すごくストレートに追求できたと思います」

2017年12月08日 21:000
(C) 黒曜燐/comico/ススメ!ネト充プロジェクト

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「ネト充のススメ」を象徴する「相方になりたい」の言葉


── 森子の過去の仕事を起因としたシリアスな場面ではどのように芝居を組み立てられましたか?

能登 第2話で森子の夢の中でスーツを着た人達がどこかに落ちて行くシーンや、会社員時代に、小岩井との電話で泣いてしまうシーンなど、全10話の中では象徴的な描き方をされていて、思い切った「シリアスさ」はあえて抑えられていた、と感じました。なので、私としては森子の辛い過去はバックボーンとして、自分の中に入れておくにとどめました。日常のシーンでは、そのシーンだけの気持ちで演じるのではなく、シリアスなバックボーンを持っているからこそ、今ここでネトゲをやっているとか、桜井や小岩井と出会っている、ということを心に置いておく。あまり「辛い過去」を意識しすぎると、作品としてもずれてしまうので、「森子の過去の一部」として意識しました。

── 演者はインプットも大事ですが、アウトプットの加減も大事なんですね。

能登 そうですね。作品として伝えたい事が大前提としてあって、さらにほかの役者さんたちとのやり取りがあって、なおかつフィルムがあって、それら全部が合わさった中で表現として出てくるものが「演技」です。そこであえて挑戦して「これくらいやってみよう」という出し引きはあるかもしれませんが、常にその時のもっともよい調和のポイントを見つける。それは本当に一期一会だと思いますし、収録現場でのテストと本番でもやっぱり違います。自分がこうしようかなと思っていても相手から違う芝居をもらったら、別の正解が生まれます。そういった意味で、芝居は1回限りだなと思います。

── 森子はシリアスなシーンから急にギャグに落とすという演出が本編では多々ありましたが、その場合のお芝居はどのように作られていったのでしょうか?

能登 私の中では特にそこを変えているという意識はありませんでした。デフォルメされていても、彼女の心情のところで外れていなければスイッチは自然にできるんです。今回、ギャグになった時に現場で使われていたのは「ジャージ感」という言葉でした。家の中でリラックスして自然体であることを表現することが、生々しさだったりリアルさになります。その振れ幅を示すのが「ジャージ感」というワードでした。


── 郷田さんは収録初期の頃、「もっとジャージ感を」とおっしゃったそうですね。

能登 そうでした(笑)。最初の頃はどこまで出していいのかわからなかったのですが、後半になると「ちょっと出しすぎ」と言われたこともありました(笑)。

── 郷田さんは音響監督であり役者でもありますが、ディレクションの特徴を能登さんはどのように感じられましたか?

能登 郷田さんがディレクションしてくださる現場は過去にも経験がありまして、さらに、演者としての郷田さんともご一緒したことがあるので、どちらも存じ上げているのですが、ディレクターとしての郷田さんは、役者が出すものをまるごと受け止めてくださったうえで、「じゃあこうしてみよう」と提案してくださいます。役者から出したものを大事に汲んでくれてからフィードバックをすることに重きを置いてくださる方だなと思います。

── 役者として気持ちがわかるから、そのセリフをどう生かし、どう乗せるかがわかるという。

能登 役者の気持ちをすごく理解してくださっているなと思いますし、それによってこちらもより安心感を覚えます。どこに重きを置いて、どうされたいのかを的確な言葉で導いてくださいます。「ここの言葉をもっと立てて」とか、言葉を発する者としてのディティールのところはちゃんと伝えてくださいます。「ジャージ感」こそ、まさにそれですね。

── 森子がおどおどするときに発する声は能登さんのアドリブですか?

能登 原作を読んでいて、森子のニマっとなったり、目が描かれずにニタニタするところは、どういう感情の音を乗せたら面白いかなと考えると、思いがたくさんあふれてきました。私で考えたアドリブもありましたし、収録の最後のほうになってくると、私がそういうアドリブを出すことを汲んで、「もっと」とおっしゃってくださることもありました。


── 全体を通じて印象的なシーンはどんなところでしたか?

能登 私が好きなシーンは、第6話で森子と桜井が一緒に歩いている時に、森子が独白のように「小岩井さんみたいな先輩や、桜井さんみたいな同僚と同じ職場だったら、もう少し楽しく働けたのかなぁ……」と、誰に聞かせるでもなくこぼれた言葉に、桜井が「楽しいですよ」と受けてくれるというシーン。森子はとてもコミカルだったり面白く描かれたりしていますが、ベースとして「会社で人間関係が上手くいかず、辞めてしまった」というバックボーンがあって、それは現在お仕事している方にとって強く共感してもらえる部分だと思います。森子のように辞めなくとも頑張っていたり、いろんな葛藤を抱えて自分の生活を積み上げている方にとってそこは生々しいシーンであるいっぽう、アニメーションであるがゆえに、そこがマイルドになって、より伝わりやすくリアルにもなる。桜井の言葉にはいたわりもあるし、森子やみんなに勇気をくれる部分として、すごく染みたシーンのひとつだなと思います。

── 能登さんの中で特に心に残っているセリフは?

能登 たくさんあるのですが、やっぱり「ネト充のススメ」という作品を象徴しているという意味で、心に残ったのは「相方になりたい」というセリフですね。桜井も森子もネットゲームをする理由がそれぞれあって、あえて性別を変えたキャラクターを作り、それによって解き放たれるものがあると思うのですが、その世界の中で「相方になる」というのは、距離が近くなっていくことをすごく象徴した言葉だと思います。この作品だからこそ出てきたセリフだと思いますね。


── 演じ終えて、作品やキャラクターについてどんな思いを抱きましたか?

能登 アニメーションには中々ないタイプの作品だったと思いますし、だからこそ、いろんなチャレンジができました。後半は特にトレンディドラマの要素が強くなっていき、それをアニメーション作品として追求するところは自分としても挑戦のしがいがありました。そして、身近にあるネットやゲームの世界という意味でも共感性が高く、それらのリアリティをいかに伝えられるかを挑戦しながら全10話やり切ることができたなと。本当に感慨深いという以外に言葉が見つからないのですが、みんなで走りきったなという気持ちが強いです。

── Blu-ray BOX特典には第11話OVAとドラマCDが付くそうですが、それはどのような内容でしょうか?

能登 特典でないとできない設定や内容で、テレビとはまた違った意味で楽しめると思います。ドラマCDは温泉に行くという内容で、(桜井)優太くんとのシーンがえらいことになっています(笑)。実は、いつもの「ジャージ感」で本番をやったら協議の結果、「ジャージじゃない森子で」となりました(笑)。櫻井(孝宏)さんの、とろけるお芝居にも注目して頂きたいです。


── ファンの方へ能登さんからお伝えしたいメッセージをお願いします。

能登 「ネト充のススメ」をご覧頂きまして本当にありがとうございます、という感謝の気持ちをまず申し上げたいと思います。この作品は、原作やビデオパッケージを、読み返したり見返したりすることで、心をゆるめてくれるような作用がある気がしています。作中の「@家パーティ」ではありませんが、ちょっと帰ってくるような気持ちでまた作品を観て頂いて、いろんな気持ちを味わい直して頂けたらうれしいなって思います。皆さんの心に残り続ける作品でありますように。最後まで応援、どうぞよろしくお願いいたします。



(取材・構成/日詰明嘉)
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ネト充のススメ

放送日: 2017年10月9日~2017年12月11日   制作会社: Signal-MD
キャスト: 能登麻美子、櫻井孝宏、前野智昭、寺島拓篤、鈴木崚汰、上田麗奈、中村悠一、相坂優歌、寸石和弘、八木隆典
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