「モンスト」と連動! アニメ「いたずら魔女と眠らない街」公開記念、小松田大全監督 ✕ 潘めぐみスペシャルインタビュー

2017年11月30日 17:360

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吹き替え映画のリズムとテンポをアニメで再現


――台本を読んでいても、外画の吹き替えのようなイメージを持ちました。

 

小松田 エマのモデルは、「ドリーム」(2016年)のタラジ・P・ヘンソンだったかな? 結構僕もそれに引っ張られたところはあって、外画の持っているダダダダダっていうテンポ感を最初のほうに入れたんですよ。

アニメの会話って誰かがしゃべって、それを受けてというやりとりになりがちなんです。でも、それは演出側が作っちゃうもので、アニメの慣れの部分のいいところでもあり悪いところでもある。そう思ったので「AがしゃべってるけどBは聞いてない」というような、外画っぽいことをやりたかったんです。

 

 その会話感がすごくリアルでした。聞いてるようで聞いてないみたいな。作品として成立させるのは難しいかもしれないけど、そういう空気感を今回は描いていて、キャラクターをより身近に感じました。

 

――最初に脚本ありきだったそうですが、その時点で外画っぽさはあったんですか?

 

小松田 そうですね。その方向性がちゃんとあったので、僕はちゃんとアクセルを踏む係というか。僕自身、海外ドラマや洋画が好きなので、それをどうアニメに取り込んでいくかを考えました。

いつも思うのは、アニメの表現って、どうしても普段通りの表現に落ち着いちゃうんです。だからあえてそれを破る気でやらないと破れないんだなと。自分の中で衝撃だったのが「シン・ゴジラ」(2016年)の持つ、リズム感の異常さでしたね。あれは庵野監督があのリズム――要するに岡本喜八のリズムを取り戻すために何をしたらいいんだろうという理論武装があったと思うんです。あの要素をアニメで何割かでも演出するために、僕はどんな理論武装をするのか、ということを意識して、あかりが初めてエマに会うシーンを作りました。

 

 現場では、セリフはカットされると思ったから、のんびりやっていいのかなって思っていた部分もあるんですけど、実際にはセリフのカットはなかったし、このスピード感で話すんだ! って思ったけど、自分が見てきた海外ドラマの言葉のスピード感って、このくらいだったんですよね。会話としては日本語だけど、あかりは現地で英語をしゃべっているというのがわかるようなシーンだったと思います。

 

小松田 でもマシンガントークとは言え、動かすためにしゃべっているのではないんです。そこはあくまでパク(口パクのこと)だけでしゃべっている感じにする。それは日本のアニメーション文化の価値でもあるので、そこは守ってくださいとお願いしました。ずっとセリフをしゃべっている面白さみたいなものは守りたいと思ったので。

 

前半と後半で、それぞれ異なるアクションの見どころ

 

――ストーリーの見どころを教えていただけますか? 同じXFLAGが手がけているモンストアニメは、わりと親子の話が多い印象があります。

 

小松田 「親子」という題材は、これまでの作品でも扱うことが多かったので、普段からやっていることですね。ただ、今回は「受け継ぐ」ということがテーマになっていて、あかりがお父さんの遺志を受け継ぐみたいなことを描いているんですが、そのお父さんがどういう気持ちで「この街は俺が守る」と言ったのか。その真意がアフレコの前日くらいまでわからなかったんです。でもそれは、人を、子供を安心させるための言葉だったんじゃないかなっていう結論に至りました。

あかりがそれに気づくきっかけが、リバティにも同じ言葉を言っていると知ったときです。同じ言葉を自分以外にも言ってあげていたのだと知ったとき、あかりは初めて父親のことがわかったんじゃないのかなって思ったんです。だから脚本を読みながら、そこの流れを強調していく感じにしました。

 

 「この街は俺が守る」ってヒーローものの決め台詞だけど、自分にかけてくれている言葉でもある。あかりにとってお父さんはヒーローで、絶対に忘れないお守りみたいな言葉をリバティにもかけていた。だから、リバティもあかりと同じ存在だったんじゃないのかなって思いました。

あと、人って、初めて会った人でも印象で「こういう人だ」決めつけちゃうところがあると思うんですけど、そういう殻を破るきっかけになるんじゃないかと思いました。偏見とか自分の壁を乗り越えつつ、他人と接することで慣れ親しんでいたニューヨークの街が違うふうに見えてくるというか。エマはあかりにとって他人ではあるけど、心が通い合う瞬間があったんですよね。私、2人が自転車でニューヨークを駆け抜けるシーンが好きなんです。それまで遠くから見ていただけではわからなかったものが見えた瞬間だったと思うので、ぜひ皆さんにもそのシーンは見てほしいです。

 

――アクション面での見どころというと?

 

小松田 アクションは好きなので、いろんなやり方、組み立てがあるんですね。今回、前半のバトルは地に足がついた戦いにしました。空を飛んだり、超能力をあまり使わない。アップルに関しては身体能力だけで相手を打破していくタイプにしたいなと。

あかりにとってアップルがどういう存在なのかと考えると、分裂した自分でもあるので、そこは制限のないヒーローではなく自分の足で走るしかないんだろうな、と。そこからみんなの力を借りれば空も飛べる、みたいな後半がある。前後半でアクションに明確な違いを見せているので、注目してほしいです。

 

――最初からド派手なアクションがあるわけではないというあたりも、高校生・大学生がターゲットというのにつながる気もしますね。では最後に、楽しみにしているファンにメッセージをお願いします。

 

 ゲームとアニメをつなぐXFLAGオリジナルアニメとなります。ぜひ見てください。モンストアニメのテーマ性をそのままに、新しいものを作り出しているのが今回のクリスマススペシャルだと思います。よりモンスターやあかりたちを身近な存在と思ってくれるんじゃないかと思います。今まで自分が決めつけていたものが、実はすごい可能性を秘めているんじゃないかっていうことが、あかりやいろんな人物を通して見えてくると思います。新しい世界が詰まっているので、ゲームとアニメ、ひっくるめて楽しんでください。

 

小松田 ゲームやアニメでもずっと続いている「モンスト」って、今や多くの方にとってひとつの大きな遊び場になっていると思うんです。モンストアニメにはない職業モノという要素を加えて、高校生や大学生でも楽しめるものにしたのが本作です。新しい入口を作ってくださいとオーダーされた気持ちだったので、すごく新鮮でした。そういう入り口がいっぱいあることが未来の「モンスト」にもつながっていくんだろうなって思います。なので相当やりがいのある仕事を任せていただいています。

アニメからゲームに入る人もいてほしいですし、それをゼロベースで再構築する企画だったことが、自分にとってすごくラッキーでした。入ってきた人を最大限楽しませる40分として、めちゃめちゃたくさんのカット数で作ったので(笑)、最初から最後まで楽しんでもらえたらと思います。


 

(取材・文・写真/塚越淳一)

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いたずら魔女と眠らない街

いたずら魔女と眠らない街

配信日: 2017年12月1日   制作会社: サンジゲン
キャスト: 潘めぐみ、野中藍、喜多村英梨、皆川純子、茅野愛衣、山本格、東地宏樹
(C) XFLAG

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