「ネト充のススメ」インタビュー企画第4弾 脚本家チーム座談会 現代的な「ネトゲあるある」と普遍的な「トレンディドラマ的」もどかしさ

2017年11月21日 19:000
(C) 黒曜燐/comico/ススメ!ネト充プロジェクト

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現代におけるすれ違いドラマはネトゲを使って描き出す


── 本作のネットゲーム描写において、ユーザーとしてツボがわかる部分はどんなところでしょうか?

井上 原作の段階からすごく詳しく描かれているので、私が特別何かを付け足したということはないのですが、プレイヤーとしての真実味が出せたらいいなとは思っていました。ツボのところで言うと、やっぱりガチャとおしゃべりですね。ガチャもなんだかんだ言って、みんなでワイワイしながら引く瞬間が楽しいんですよね。これがひとりでやっていても楽しくないんですよね。周りに「大爆死したわw」って言ったり、ネットにキャプチャを上げるというのが、連帯感が出ていて楽しいですね(笑)。物欲センサーに引っかかっちゃってお目当てのものをなかなか引けないとか、お金に物を言わせてフルコンプしてしまうとか、すごくわかります。あと、プレイ中のおしゃべりが楽しいのはどのネトゲにおいても醍醐味で、森子も先の話数で、「ネトゲの何が楽しいかと言うと、こうやってみんなで集まっておしゃべりをすること」と言っていましたが、ホントにそうだと思います。

── ネトゲのチャットではゲームのロールプレイだけではなく、プライベートなことも話すのですか?

井上 まさに作中でカンベが言っているようなことですね。社会的な面を言わないでやっている人もいれば、ポロポロ出している人もいます。一般的なマナーとして、そこは線を引いて踏み込まない部分があるかなと思います。それがこの作品だとドラマのキーとして生きている感じですね。よく、「携帯電話ができてしまったことによって、かつてドラマが持っていたようなサスペンスがなくなってしまった」と言われていますが、いわばそれをネトゲが補完している感じですね。


山田 それはすれ違いという意味で?

井上 携帯電話が出現したことによって、家に電話をかけても出ないとか待ち合わせのすれ違いのドラマが起きなくなったと言われることがあるんです。でもその代わりにネットにいる自分とリアルで暮らしている自分との違いが、繋がりそうで繋がらない何かを生み出しているんじゃないかなと。

山田 正体も、なんなら性別もホントのところわからないし、どこまで踏み込んでいいのかとか。

井上 私は基本的に女性キャラでネトゲをやるんですけれども、しゃべりがオッサンぽいからネカマだと思われているんです(笑)。中の人のことをオッサンだと思っているか、本当に女だと思っているかによって全然反応が違うんですよ(笑)。


── 山田さんがシナリオを書くうえで注力した部分はどんなところでしょうか?

山田 どの作品もそうですが、その話数のラストへの盛り上がりですね。第3話だと「相方になりませんか」というセリフがターニングポイントでもあるので、そのセリフに向けてどう盛り上げていくかを考えながら作っていきます。あとはリアルの世界とネトゲの世界を行ったり来たりするところを、いかに混乱せず見られるように作っていくか。あまりに行ったり来たりしても物語に入り込めないので、どこで引くかをみんなで相談しつつ作っていったところがありますね。

── 桜井と森子の関係性を描くうえで特に重視したポイントはどんなところでしょうか?

ふでやす やはり、2人がくっつくかくっつかないか、というドキドキ感とかモヤモヤ感ですね。どちらも奥手というか純粋というか、ゲーム中では相方になっているのにリアル世界ではなかなかくっつかないドキドキ感・ハラハラ感を強調できればなと思いました。あとは桜井に限らずですが、森子の生き方を誰にも否定させないということですね。自分で仕事を辞めて今はニートになっているけれども、それはそういう生き方だから桜井も悪いとは言わないし働けとも言わないし、思ってもいないはず。そういうところは大切にしました。ちゃんとひとりの人間として生き方を認めているところですね。

井上 リアル礼賛で「ネットからリアルに戻れ」ではないんですよね。書いていてそれはすごく思いました。

ふでやす 桜井も森子がこれからずっとネトゲをしていても何も言わないと思うし、働くと言ったらそれがいいと言うだろうし、認め合っていくんじゃないかと思います。

山田 2人ともホント真面目なんですよね。書いていてもそのモヤモヤ感が楽しいですし、応援したくなります。お互いに真摯に向き合って、でもいろいろ思い悩んでしまうこともあるところって、みんな共感できると思うんですよね。ゲームの世界だったらイケるかもしれないのに、いざ現実になると「もしかして社交辞令だったの?」となる。そこに2人のキャラクターのリアリティがあるからドラマを引っ張っていけるんじゃないかなと。

── ネトゲという現代的なものを使いつつ、 普遍的なものがあるわけですね。

山田 時代劇でも恋愛物語になればそういうところがあるし、このように21世紀の物語でも恋愛のモヤモヤというのはあまり変わらないと思います。その辺が楽しいんですよね。

── 書いていて、あるいは実際に絵が動いているものをご覧になって特にお好きなシーンはどんなところですか?

ふでやす 僕は第1話の最初のシーンが好きですね。森子の送別会があったであろうシーン。小さい花で形ばかりの送別会だったんだろうなということがわかるし、その花をゴミ箱に捨てるところから、おそらく楽しい辞め方ではなかったんだろうということが伝わってきます。あと、第2話でリリィが木の上から顔を出すシーンがかわいかったですね。お芝居の動作について脚本では書かないので、コンテ・演出様ありがとうございます、という気持ちです。


── 繰り返し見る時にはお話の筋がわかっているからこそ、そうした細かいキャラクターの動きに注目して楽しめますね。

井上 私は先ほども言いましたが第5話のラストの一連です。ここでトレンディドラマらしさを出すために「東京ラブストーリー」を見たのだと思ってます。

山田 私は第3話で森子が「相方になってください」と言われた時にゴロゴロ悶えているところがかわいいし、ドラマとして面白いなあと思います。もうひとつ言うと、桜井と小岩井の焼肉のシーンが楽しかったです。小岩井の性格がすごくわかるし、遊ばれちゃっている桜井とか(笑)。でも仲良しで楽しそうな2人という感じが出ていて好きでした。あと、全体的にゲームの中の背景がすごくきれいです。いろんな場面が出てくるし、昼のシーンも夜のシーンも出せるのでバラエティ感を出そうとは打ち合わせで話していましたね。


ふでやす ゲームの中なので好きなところに行っても大丈夫だし、絵的にも映えるし。

山田 いざ画面になったら本当にバラエティ豊かで楽しかったですし、きれいにかわいく描いてくださっていたので、ゲーム画面として見ていて楽しかったです。現実じゃないからこそいろんな遊びができるというか。みなさんの遊び心が出ていて、そこが素晴らしいなと思って見ていました。

── では最後に、第7話以降の見どころをふでやすさんから教えていただけますか?

ふでやす ここから桜井と森子の関係性がどのように進展していくかの様子を楽しんでいただければということに尽きますね。アニメとしての終着点は原作をお読みの方にとっても少し違った終わり方になっていますので、新鮮な感じでお楽しみいただけるのかなと思います。もちろん原作者の黒曜燐先生と相談して書いていますのでご安心ください。そして番外編の第11話(Blu-ray BOX特典映像)は、黒曜燐先生にもご意見をいただき、それをふくらませた感じで桜井と森子のこっ恥ずかしいドラマになって面白いと思いますので、ぜひこちらも楽しんでいただければと思います。


(取材・構成/日詰明嘉)
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ネト充のススメ

放送日: 2017年10月9日~2017年12月11日   制作会社: Signal-MD
キャスト: 能登麻美子、櫻井孝宏、前野智昭、寺島拓篤、鈴木崚汰、上田麗奈、中村悠一、相坂優歌、寸石和弘、八木隆典
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