デジモンアドベンチャー tri. 第1章「再会」
上映開始日: 2015年11月21日 制作会社: 東映アニメーション
(C) 本郷あきよし・東映アニメーション
本作は「デジモンアドベンチャー tri.」の公式サイドストーリーということで、役者たちはアニメ版と地続きのキャラクターを演じなければならない。そして、その基準は物語にも求められる。これまで「プルートゥPLUTO」上演台本や、ミュージカル「わたしは真悟」の脚本を手がけてきた谷賢一さんによる脚本・演出は、「デジモンアドベンチャー」の生みの親、東映アニメーションの関プロデューサーからアドバイスをもらうなど、「デジモンアドベンチャー tri.」シリーズたるために洗練を重ねてきたものだという(参照:公式サイト内スペシャルインタビュー/http://digimon-stage.com/talk.php)。
こうした演技・演出により、オレノグラフィティさん演じるエテモン含め、アニメからそのまま飛び出してきたかのようなていねいなキャラクター描写が光る。アニメ版のファンでも、すべてのキャラクターを違和感なく受け入れることができるはずだ。
また、パートナーデジモンは人形劇団ひとみ座が繰る人形によって演じられる。操演者と共に舞台を縦横無尽に動き回り、“選ばれし子どもたち”と仲睦まじいかけ合いを見せる。操演者たちは表情豊かにデジモンとシンクロしていて、観劇中まったく違和感がない。
そして、何より嬉しいのはアグモン役の坂本千夏さんをはじめ、パートナーデジモンの声をアニメ版と同じ声優陣が担当しているということ。「初めて(声を)聞いた時は鳥肌が立って…(アグモンと話せて)うらやましいだろうって感じです(笑)」(囲み取材にて、松本さん)。演技や声によって、デジモンたちに命が吹きこまれた姿を見れば自然と胸にこみ上げるものがあるはずだ。
ここで、「超進化ステージ『デジモンアドベンチャー tri.~8月1日の冒険~』」のストーリーを簡単に説明しよう。“選ばれし子どもたち”は、「8月1日」にみんなで集まってキャンプに行くこととなった。というのも、「8月1日」は6年前に彼/彼女らの冒険が始まった特別な日だからだ。ミミがキャンプ道具を用意していないなど、思わぬハプニングに見舞われながらも当時の気持ちをよみがえらせてキャンプを楽しむ“選ばれし子どもたち”。しかし、そのキャンプ場にはある秘密があった――。
演出の面では、プロジェクションマッピングによるデジタルワールドの表現やエテモンが観客をあおるコール&レスポンスなど、舞台ならではの趣向も見逃せない。アニメでは味わうことのできない“舞台の面白さ”がそこかしこに配置されている印象だ。
さらにプロジェクションマッピング技術によって、「Butter-Fly」「brave heart」といった名曲と共にアニメの映像が舞台上に投影される場面も。今の20代~30代前半の“初代デジモン”世代が観たら、思わず鳥肌が立つはずだ。事実、ちょうどドンピシャ世代の筆者も懐かしい気持ちとワクワクする気持ちでいっぱいになった。
いっぽうで、本作はいわゆる“ジュブナイルもの”(ティーンエイジャー向け作品)となっている。囲み取材で橋本さんが「デジモンの進化、役(キャラクター)としての進化、さらにはこの作品を通じて僕たちも進化できるような――そんな、いろんな“進化”が盛りだくさんの作品です」と語ったように、“進化”あるいは“成長”が作品のテーマに据えられている。
舞台では、大人になるにつれて変わっていく人間関係や将来の夢と不安、「あの頃に戻れたらいいのに」といった願望など、思春期の子どもたちが抱える迷いや悩みが描写される。このテーマは話の中心を担うと同時に、ノスタルジーに浸る観劇者へ強く訴えかけてくるだろう。筆者には、本作の描くテーマ自体が初代デジモン世代に向けて投げかけられたメッセージのようにも思えた。
そのほか、アニメでなじみ深いペアのかけ合いやTVアニメ「デジモンアドベンチャー02」最終回で描かれた“選ばれし子どもたち”の未来を想起させるセリフ、“あのデジモン”の度肝を抜く形での登場など、全体を通して「デジモンアドベンチャー」シリーズのファンにはたまらない作品に仕上がっている。もちろん、「デジモン」を知らない演劇ファンや2.5次元舞台のファンも楽しめる作りになっているのでご安心を。
だが、やはり「デジモン」を知っているほうが何十倍、何百倍も作品の世界にのめり込むことができるのは事実。興味のある人は、少しでも「デジモンアドベンチャー」を観たうえで、舞台に足を運んでもらいたい。そして、「デジモンアドベンチャー」シリーズのファンの方には、TVアニメ「デジモンアドベンチャー」の第1話や「デジモンアドベンチャー02」最終回、「デジモンアドベンチャー tri.」シリーズなどを復習してから、舞台に臨むことをオススメしたい。
本公演は8月13日(日)まで。あの頃の思いを胸に、ぜひまた“選ばれし子どもたち”とパートナーデジモンに新しい形で再会してみてほしい。
(取材・文/須賀原みち)
上映開始日: 2015年11月21日 制作会社: 東映アニメーション
(C) 本郷あきよし・東映アニメーション
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(C) 本郷あきよし・東映アニメーション
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(C) 本郷あきよし・東映アニメーション
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(C) 本郷あきよし・東映アニメーション
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