STUDIO4℃終夜上映イベントレポート! 田中栄子:「大友克洋軍団とジブリ軍団が集まってできた」「世界に挑戦状を」

アキバ総研 | 2013年06月24日 14:07
STUDIO4℃終夜上映イベントレポート! 田中栄子:「大友克洋軍団とジブリ軍団が集まってできた」「世界に挑戦状を」

先週お伝えしたとおり、STUDIO4℃作品のオールナイト上映イベントが6月21日に新宿バルト9で行われた。


 

STUDIO4℃、「鉄コン筋クリート」「マインド・ゲーム」などのオールナイト上映イベントを実施! スタッフによるトークショーも

 

 上映前のトークショーには、STUDIO4℃の代表である田中栄子プロデューサーをはじめ、窪岡俊之監督(「ベルセルク 黄金時代篇」)、マイケル・アリアス監督(「鉄コン筋クリート」)、杉作J太郎さん(マンガ家・コラムニスト)が登場。


まず、最新作「ベルセルク 黄金時代篇」について、徹底した時代考証や美術設定の裏づけ、手描きとデジタルのハイブリッド映像を追求した迫力満載の戦闘描写などが話題に。田中さんは、「STUDIO4℃はアニメーションという技術を使って自分たちの表現した映像を世界に発信したいという志の高いクリエーター集団」と表現し、「もともとSTUDIO4℃を立ち上げた頃はアニメーションはキッズやファミリー向けで大人向けの映像という価値観がなかった。自分が楽しめる映像を世界に届けたいという意識だった」と当初から海外を視野に入れていたことを明かした。また、海外からも評価を受けていることについては、「海外"らしい"、ものではなく、日本が持っている個性を、自分たちが知っている表現で描きたいというのはありました」とし、「日本は表現に対して自由だったんです。STUDIO4℃で最初に制作した『MEMORIES』を海外に持っていったときには、『よくこんな過激な表現をアニメーションで作れたな』という反応だった。暴力さも評判になったんじゃないかと思う」と語った。


一方、窪岡監督は「STUDIO4℃の作品は流行りの作品とちょっと違う。業界の人間として見ても、とがった作品を作っている会社というイメージ」と話し、ベルセルクの制作現場では、「田中さんを始めスタッフの粘りも違うし、こちらがついていくのが大変だったくらい」と暴露。これに対し田中さんは「もちろん監督についていくという姿勢もあるが、監督と同じか、それ以上に個々のスタッフも「ベルセルク」にものすごく情熱をかけていて、現場全体がみんな暴走しているくらいの勢いだった」と返答。さらに、窪岡監督は「実は田中さんが知らないところで、現場がいつの間にか修正をしている場面もあった」と、通常のアニメーション制作では修正したいと思う箇所があっても時間が足りずに手を加えられない状況もある中で、スタッフ陣の情熱がうかがえるエピソードも飛び出した。これにはマイケル・アリアス監督も「STUDIO4℃はスタッフはみな熱いし、いろいろ実験や新しい試みに挑戦しながら楽しいものを作ろうとしている。現場の温度がいつも高かった」と「鉄コン筋クリート」の制作当時を思い返していた。


ここで、今回のイベントには参加しなかったものの、「MEMORIES」の森本晃司監督からのメッセージが。「今STUDIO4℃にはおりませんが、30年間苦楽を共にした仲間と過ごした最高のスタジオです。STUDIO4℃を出てつくづく思うのはSTUDIO4℃にいた人間は素晴らしく才能あるアーティスト、クリエイターが多かったのだと改めて実感しています」と読み上げられると、田中さんは「STUDIO4℃は森本晃司と佐藤好春と自分の3人でスタートした会社。そこに集まってきた素晴らしい才能は森本晃司を求めてきたし、森本が目指してきたものを、今も目指していると思います」と古くからの戦友である森本さんを称えた。


そして話題は再び「ベルセルク 黄金時代篇」三部作に。制作について田中さんは、「原作者の三浦先生のコミックはすごく緻密で情報量も多いし、甲冑をアニメで描くなんて暴挙は通常ではできないだろうと。でもこれを挑戦してみないかと窪岡さんに投げて、この作品で何を描けるのかを監督やスタッフと挑戦し続けていた。生きながらえて幸せだなと思う」と窪岡監督との大仕事を振り返った。また、杉作J太郎さんは「ここまで大人向けの作品に徹底しているスタジオは珍しい」と分析し、「日本のアニメはどうしても子どもに向けているものが多く、性描写を別の世界に閉じ込めてしまっている。それを逃げずにやっている『ベルセルク』はすごい。『ベルセルク 黄金時代篇Ⅲ 降臨』の性描写はもちろん、ほんの数秒の細かな表情にもグッときた」と熱弁を振るった。窪岡監督は「なるべく嘘はつかないようにと思いながら作っていた」と答え、田中さんも「すべてのシーンをチェックしていたが、SEXシーンだけはチェックなしで窪岡監督にすべて任せていた」と窪岡監督のこだわりの賜物であることを強調した。


今回のイベントは、上映作品4本のうち、「鉄コン筋クリート」「マインド・ゲーム」「MEMORIES」は35mmフィルムでの上映という貴重な機会に。「MEMORIES」制作時のエピソードとして田中さんは「学校の体育館を借りて、紙に描いたセルを全部並べて1コマ1コマずつ撮影していた。1つのコマをつくるのに撮影準備に1週間、撮影に1週間、仕上げに1週間と3週間。リテイクするとさらに3週間かかっていた。デジタルの時代には自慢にもならないが、それくらい情熱をかけて作っていたと思ってもらえたら」「最初に、『MEMORIES』総監督の大友克洋さんが『やるなら世界一のことをやる決まっているだろう』と言い、そこからスタートした』と語った。ここでも森本晃司監督のコメントが読み上げられ、「(『MEMORIES』のエピソードの1つである)『彼女の想いで』は、劇場作品として私が初監督した作品。脚本は今敏さんで、自分と今さんはAKIRAからの流れで当時"大友軍団"と呼ばれていた。『MEMORIES』をやることになり、素晴らしい原作を超えられるアニメーション作品を作ろうと大友さんに挑戦状を叩きつける気分で制作に挑みました。『みんなで最高の作品を作って大友さんを驚かせよう!』と、今敏さんと何日も何日も朝まで話し合い、脚本を作った想い出があります」と、当時の想いを明かした。おれについて田中さんは「"大友克洋軍団"と『となりのトトロ』や『魔女の宅急便』の制作を担当していた自分たち"ジブリ軍団"が集まってSTUDIO4℃という集団が出来た。世界に挑戦状を叩きつけようという想いが集まっていた」と当時を振り返った。


ちなみに、森本監督は大友克洋さんらが監督を務めるオムニバス映画「SHORT PEACE」(7月20日公開)のオープニングアニメーションを担当。「『夏の夕暮れの匂い』というノスタルジックな香りがする音世界の演出から始まり、少女の麻衣がふとした瞬間に不思議の国へ迷い込み、自分の中にある夢や憧れ、そして成長に気づく…そんなアイデアを膨らませました」と最新作への想いも語っていた。


トークショーの最後には窪岡監督が「『ベルセルク 黄金時代篇III 降臨』は三部作の最終章。企画当初から本当にどうやって作るんだろう、と一番頭を悩ませたパート。スタッフ一同ひたすらがんばった成果を見ていただけたら」とコメントし、マイケル・アリアス監督は「鉄コン筋クリート」について「6年前の作品ですが今も思うのはスタッフみんなが松本大洋さんの作品を愛して一生懸命作った作品。すごくステキな映画なので、大きなスクリーンでの上映を楽しんでほしい」と語った。田中さんは「MEMORIES」について「実は幻の『マインド・ゲーム』と呼ばれていて、本作がきっかけでアニメ界や映像界、記者になったという声をたくさんいただく。今日観てもう一度感動していただけたら」とそれぞれの上映作品への想いを語った。

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