本日発売!褪せた町に色を取り戻す。PS4「アッシュと魔法の筆」を最速レビュー

2019年10月10日 19:050

※本コンテンツはアキバ総研が制作した独自コンテンツです。また本コンテンツでは掲載するECサイト等から購入実績などに基づいて手数料をいただくことがあります。

「Entwined(エントワインド)」を手がけたスタジオ、Pixelopus(ピクセルオーパス)の、5年ぶりの新作となる「アッシュと魔法の筆」が、本日発売された。その先行プレイする機会を得たので、本作のレビューをお届けする。

物語の舞台となるのは、港町デンスカ。町とはいうがそれは昔のことで、今は荒れ果て、人も住んでいない。主人公アッシュにとっての故郷でもあるこの港町に、彼はよく足を運んでは、風景画や、空想上の友だち「かいぶつ」を描いていた。ある時、彼は、描いたものに命を吹き込める魔法の筆を手に入れる。生き物となった「かいぶつ」と力を合わせ、アッシュはデンスカをよみがえらせていく。


描いた絵が命を宿す



本作の最大の特徴は、まさにその魔法の筆。デンスカの家の壁や、港にあるコンテナ、店の看板といった至るところに絵を描くことができる。命が宿っているので、草木は揺れているし、蝶々や鳥は羽ばたいて、どこかへ飛んでいく。塗料というよりは電光装飾のような質感なので、遠くから見ても明るく見やすい。デンスカがあまりに廃れて閑散としているせいもあってか、絵もいっそう映える。




描ける絵はすべてパーツになっており、プレイヤーがいちから作成する必要はない。1度ボタンを押せば、あとは離すだけ。技術はなにも求められない。ボタンを押したままコントローラーを上下に動かせば、サイズを調整することも可能だ。




さらに、デンスカの町に描いた絵はずっと残る。物語序盤、試しにと描いた花畑と星空が、路面電車のチケットを売る店の壁に、本編をクリアした後も残っていた。好きに描いた絵が、プレイヤーとアッシュの足跡になっているのもいい。また、各地に散らばったスケッチブックのページを集めるごとに、描ける絵のパーツも増えていく。マップにはページの在り処も記されているので、とくに詰まることなく、スムーズに集められる。


「かいぶつ」を愛でて、いっしょに冒険



「かいぶつ」は、プレイヤーの描いた絵にさまざまな反応を見せる。たんぽぽがあると種子を吹き飛ばしたり、りんごがあれば食べたりすることも。バリエーションが豊富で、「かいぶつ」とただ遊んでいるだけでも飽きない。描けるパーツが増えていくにつれ、「これを描いたら、『かいぶつ』はどんな反応をするんだろう」と、思えるようになる。ちなみに、「かいぶつ」には見た目の異なる全18種が存在。風景のパーツと同様、各地に散ったページを集めていくと、さまざまな角や尻尾を付けられるようになる。




また、「かいぶつ」はこちらの絵に反応するだけではない。壁の中の散歩や、主人公への絵のおねだり、床に座っての休憩など、決して機能的とはいえない所作が随所に盛り込まれているのだ。「かいぶつ」は配下や従者ではなく、生き物で友だちなのだと実感させてくれる。



各地の電球に絵を描くことで明かりを灯し、黒いツタを除いて先へ進むのが本作の基本的な流れで、そこにさまざまな謎解きが存在する。解くカギは「かいぶつ」が握っており、木片が打ち込まれた壁には火属性の「かいぶつ」を、電力が落ちているなら、雷属性の「かいぶつ」を連れてくるといった具合だ。周囲の構造や、「かいぶつ」の特性を把握することが重要なのだが、どの謎もさほど難しくなく、サクサク進められる。しばらく苦戦していると画面にヒントが出てきて、解き方をほのめかしてくれるという親切ぶり。


また、デンスカにはアッシュをいじめる子どもたちもおり、こちらを見つけると追いかけてくる。捕まった場合、魔法の筆を隠され、ごみ箱に放り投げられてしまう。ただ、声を出して誘導することができるうえ、捕まっても魔法の筆の場所は画面に表示されるので、特にデメリットはない。誘導さえしてしまえば、まず見つかることはないだろう。



ここまで書くと、アッシュと「かいぶつ」の仲良し冒険談のようで一見和気あいあいとしているが、物語を進めていくと一変。魔法の筆を使った行動に攻撃や回避が追加され、アクションゲームになる。となれば、当然、戦わなければならないわけだが……。



プレイヤーが世界を創造するVRモード


本作には、本編から独立したVRコンテンツが搭載されており、PlaySation VR本体と、モーションコントローラー2本を使ってプレイできる。物語に登場する「かいぶつ」、ポタリと遊びながら絵を描いていく「ポタリと不思議な キャンバス」と、プレイヤーが好きに絵を描ける「VRフリーペイントモード」があるのだが、その中にある3Dマップでのペインティングは、衝撃的だ。プレイヤーが本作の世界に入り込み、本編同様に絵を描くだけだが、操作の仕様がとてもいい。モーションコントローラーのうち1本は魔法の筆、もう片方は、描くパーツを選ぶためのスケッチブックになる。「筆」と「パレット」を持った姿は、まさに絵描きだ。



そして3Dマップに入ると、プレイヤーは神になれる。筆を振るえば、選んだ絵がそのまま描かれる。太陽を描けば朝になり、月を出せば夜になる。世界を好きに創れるのだ。アッシュを通してやっていたことをプレイヤーが直接行えるので、臨場感も格別。機材を揃えるのはややハードルが高いが、もし手元に機器が一式あるのなら、ぜひ体験してみてほしい。



本編クリアにかかった時間は8時間ほどで、ボリュームが多いとはいえない。だが、「かいぶつ」との触れ合いの奥深さや、リアリティともアニメ調とも違う幻想的な雰囲気は、独特だ。物語の短さが、かえってその独特な作風に合い、ひと夏に起こった不思議な出来事を体験しているような、そんな心地もした。「雰囲気ゲー」の類が好きな人には、まずオススメできる作品だ。

(文・夏無内好)

【商品情報】
■アッシュと魔法の筆
ジャンル:アクションアドベンチャー
対応機種:PlayStation 4
プレイ人数:1人
発売日:現在発売中
価格:パッケージ版 2,900円(税別)
ダウンロード版 通常版 3132円(税込)/デジタルデラックス版4,212円(税込)
CERO:B 発売元:株式会社ソニー・インタラクティブエンタテインメント

(C)Sony Interactive Entertainment LLC

画像一覧

関連ゲーム

ログイン/会員登録をしてこのニュースにコメントしよう!

※記事中に記載の税込価格については記事掲載時のものとなります。税率の変更にともない、変更される場合がありますのでご注意ください。