ホビー業界インサイド第2回:個人作品からプラモデルへ~メカトロウィーゴの起こした小さな奇跡 プロモデラー、小林和史インタビュー

2015年08月20日 11:000

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個人作品から製品化へ


――では、1/20ウィーゴの好評を受けて、小型版の1/35ウィーゴにつながると……。

小林 実は、2011年から「ヱヴァンゲリヲン:新劇場版」の仕事が忙しくなってきて、新しいデザインを起こしている時間がとれなくなってきたんです。だけど、ウィーゴはCGでモデリングして、3Dプリンターで出力したものが原型になっています。つまり、新しくデザインしている時間はないけれど、データなら手元にあるわけです。だったら、1/20ウィーゴを1/35に縮小して、もっと買いやすくて、組み立てやすいガレージキットにできないだろうか……と考えて、2013年冬のWFで売ることにしました。

――同じデータを流用して、縮尺の違うモデルを作れるのは、デジタル造形ならではの強みですね。

小林 ええ、もし粘土やプラ板で作っていたら、またゼロから同じ工程を繰り返さないといけませんから。デジタル造形なら、PCの前に座って作業するだけなので、省スペースで済みます。工具などを広げる必要がなく、時間の無い時にも少しづつ作業が進められる事も利点です。それと、1/35ウィーゴを作ったときには、出力サービスの質も上がってきていたので、出力後の仕上げ作業も、最小限ですみました。時代に助けられた部分もあります。


――では、2013年冬のWFで、初めて1/35サイズのウィーゴを販売して……

小林 初回は自分の手で量産しましたから、30個ぐらいしか用意できなかったのですが、WF開場と同時に列ができ、1時間ほどで完売してしまったんです。「こんなに受け入れてもらえるなら、次は、色を増やして売ってみよう」と思い、2013年夏のWFでは6色のカラーバリエーションを販売しました。相当、不安はあったのですが、それがかなり購入してもらえたんです。

――メーカーからの商品化の話は、いつ来たのですか?

小林 2011年冬に1/20ウィーゴ「みずいろ」「きいろ」を出したとき、千値練さんとハセガワさんから「面白いですね」「ウチでもこういう商品を出せれば」という話はいただいていたんですが、まだ具体的な話はありませんでした。しかし、1/35スケールで出したところ、千値練さんから「このサイズで出したい」と連絡をいただきました。

――1/35ウィーゴのガレージキットを小林さんが作ったのが、2013年。翌2014年11月に千値練が、完成品トイとして発売しました。ほんの1年間で製品化されたのは、早いですね。

小林 ええ、1年ちょっとの間なんです。だけど、こういう話って途中でポシャることが多いじゃないですか(笑)。ですから、テストショットを見るまでは、いつ企画が潰れてもおかしくないと思っていました。

――今年は、ハセガワから「1/35メカトロウィーゴ」のプラモデルが発売されました。つまり、千値練と平行して、ハセガワもプラモデルを開発していたわけですよね?

小林 ハセガワさんのキット化決定は、だいぶ後になりました。オンラインショップで、まず1/35と1/20ウィーゴのガレージキットを、何度か販売して頂き、社内で販売実績を重ねていき、ようやく企画が通ったという感じです。決まった後、発売までのスピードは、ものすごく早かったです。

――なるほど。だけど、完成品トイとプラモデルの差こそあれ、同一スケールで同一キャラクターを、他社が販売するわけですよね。競合しないか気になるのですが……。

小林 そこは千値練さんの懐が深くて、「ハセガワさんからも、商品化の話が来てます」と話したら「いいですよ、一緒に盛り上げていきましょう」と言ってくださったんです。千値練さんの完成品は、金属パーツが使われていて、ミニカーのような質感がいいんですよ。

――いっぽう、ハセガワのプラモデルの方は、二色成型セットで三種類、計6色が揃いますよね。このカラーリングも小林さんが指定したのですか?

小林 そうです。塗装することが前提なら、グレーで成型したほうがいいんでしょうけど、ガレージキットで売っていたころは「組んだだけで色分けされている」ことで、多くのユーザーの方に組み立てて楽しんでいただけた。ならば、プラモデルも同じコンセプトで売るべきだと思いました。


――ウィーゴを初めてデザインしてから商品化まで、ほんの3年ほどの出来事なんですよね。人気の秘密は、何だと思いますか?

小林 アッという間なので、あまり、じっくり振り返ったことはないんです(笑)。今、ビックリしているのは、WFの企画展示「みんなのウィーゴ」に寄せられる作品や、ツイッターにアップされる皆さんの作品が、本当に自由にアレンジされていること。自分には、とてもあんな柔軟な発想力はありません。だから、人気の秘密といわれてもわからないですね(笑)。

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