坂本夏樹さんの評価レビュー

女子高生の日常をギャグで描く、という体裁をとりながら
その実、「無駄」とは一体何なのかを、
観る者の心深くに問いかけてくる哲学的作品である。

いや、深読みしすぎなだけかもしれません。
そんな、ギャグの裏側に教訓的テーマを感じとり
深読みするも、
やっぱりなんもなかったわ
という何も起きない安心感がクセになる作品です。

日常系を主戦場とする友人から強くお勧めされたので
まあとりあえず、と軽い気持ちで見始めたんですが、
軽い気持ちで見始めてしまったからこそ
OP曲「輪! moon! dass! cry!」を
モロに喰らってしまいました。

アニメのOP曲ってとにかく掴みが大事なので
頭からサビを持ってきたりするのが
言わずもがななお決まりで、
１音符も無駄にしてはいけない、という風潮がある中、
４小節８秒という結構な長尺を不穏なシンセをベースに
「YO、マイクチェック、JK、え？」
という、たったの４ワードで押し切ってしまう裏切り！
豪華声優陣の実力をまざまざと見せつけられる、
スリリングなイントロに完全に打ちのめされました。

サビの「moon! dass! cry!」が
「無駄遣い」の空耳になっている
仕掛けは誰もが簡単に気付くと思いますが、
２番以降もフルで聴くことで、アニメでは流れないのに
爆発的に躍動する展開に「無駄遣い」が示す
真の意味を理解することでしょう。
音楽制作を生業としているからこそ気付けるポイント
なのかもしれませんが、
２番以降のコード、アンサンブル展開が
全てそのセクションだけにしか登場しない
そのセクションの為だけに編まれたアレンジになっていて、
しかもそのどれもがとてもドラマチックで
これがアニメで流れないなんて、本当に勿体無い！
そして、ああ、だから「無駄遣い」なのか、
と納得するのです。

いやいや、全然「無駄遣い」じゃない！
アニメで流れるところはしっかり作って
２番以降はコピペして曲の体裁とりました、
とかじゃなくて、１曲を通すことで
原作の世界観を表現する、
これこそが本来のテーマ曲たる音楽の
在るべき姿だと思います。
「流れないから無駄というわけではないんだよ」
という逆説的メッセージに、音楽に携わる者として
胸が熱くなりました。

…でも最後、はっきりと「わ！無駄遣い！エブリデイ！」
て言っちゃてるし、
やっぱり深読みしすぎなのかも…