初めて本作を観た時、よく短期間でこれを作ったなあと驚きを隠せませんでした。素晴らしい演出と表現の数々に良い意味で鳥肌がたちました。
Blu-rayが出たので再度視聴してようやくレビューを書く気になりました。
個人的にはたまこラブストーリーは少し痛い恋愛映画の皮をかぶった「青春映画」だと思います。恋愛映画としても楽しめるけど、青春映画という言葉のほうが的確ですね。
ストーリーの根幹は本当に単純です。ぶっちゃけ、PV見たら7~8割は理解できます。複雑ではないがゆえに、わりと誰でも見やすい。
映画的な画作りや演出、人物描写の緻密さ、台詞の選択、音のこだわりなどによって1時間半がとにかく濃いしすぐに終わってしまう。
作画は当然良いんですよ。しかし作画が良いとかそういうレベルの話は二の次になってくるようなものを見せてくれます。
(※ここでいう「映画的」は劇場クオリティという意味ではなく、劇場の大きなスクリーンに映すということを強く意識したものであるということ)
この映画のキャラクターは多くを語りません。しかし、登場人物の表情や仕草には台詞の何倍もの情報が詰まっています。圧巻です。
アニメーションだから登場人物の心の機微を表現するのは難しいというような考えを覆すようなものでした。
特にみどり。繊細さの塊です。
みどりという人物の描写へのこだわりはもしかしたらたまこよりも強いのかもしれません。それと、みどり役の金子さんのお芝居はナチュラルで上手いので絶賛しておきたいところ。
なんていうか、良い台詞や面白い台詞もいっぱいありますね。
繊細な表現と同時にコミカルな表現も違和感なくできるというのはアニメの強みですね
メインのキャラクターだけでなく、たまこともち蔵の家族も非常に丁寧に、絶妙な距離感で描かれていて素晴らしかったです。
評価項目がないのですが、「音」へのこだわりも半端じゃ無かったです。監督を含めて製作陣にはものすごく音楽マニアな人たちが集まっているらしいですね。
本作をもっと見ていたいという感情が最高潮に達した時に、たまこラブストーリーはエンディングを迎えます。なんとも憎いことをしてくれますね。
欠点があるとすれば、TVアニメのいくつかの回(1~3話、9話など)を見ていないとよくわからないシーンもあるということですかね。かといって見てなくても存分に堪能できる配慮がされています。
おそらくテレビシリーズの時とくらべてキャラクターデザインに若干修正を入れているようなのですが、これがかなり上手くいってます。
長々と大それたことを書きましたが、たまこラブストーリーは演出や表現の豊かさが光る、可愛らしく心温まる前向きな青春映画です。そして非常に奥が深い。