坂本夏樹さんの評価レビュー

日常系アニメを代表する名作として、
今尚多くのファンに愛され続けている本作。
僕は完全に後追いなので、当時の様子を
実体験出来てはいませんが、
「その後の日常系アニメにおける時間の流れ方を変えた」
と色々なところで見聞きしてきたことからも、
当時の衝撃の大きさを
うかがい知ることが出来ます。

派手な力強さ、も確かに印象的ではあります。
そういった印象的な作品の方が
全体の割合として多いからこそ、
全くのその逆を独走した本作は
印象的を遥かに超える衝撃として迎えられ、
その後の世界を変えたのです。

非現実世界から見たとしても
この超非現実的にゆったりとした時間の流れは、
ますます加速が増すばかりの現実の現代に
より響くのではないでしょうか。
基本１話完結なので、
１日の終わりに少しずつゆっくり楽しもうかな、
とか思っていましたが、
一度ネオ・ヴェネツィアに踏み入ると
その魅力に帰るなんて選択肢は霧散してしまい、
結局一気見してしまいました。

本作は、ゆったりとした時間の流れと没入感から、
現実に追われる日々に失くしてしまいがちな
「ゆっくり見る」
ことの大切さを思い出させてくれます。
作中でも、普段と違う視点で見たからこその
発見が印象的に描かれています。
僕たちの現実生活でも意識の持ち方次第で
灯里たちと同じように、
輝きに驚きを見出すことが出来ると
気付かせてくれるんです。
（恥ずかしいセリフ禁止！）

１話見るだけでも
十分に楽しみを感じられますが、
１シーズン見れば世界の見え方が
はっきりと変わります。
全シーズン、映画も見れば感嘆詞が
あらあらうふふになります。

どっぷり浸かって見終わったら
街に出てみたくなってしまうと思うので、
まとまった時間が取れる時に
視聴からの散策、と組み立て楽しむのが
僕からのおすすめです。

だいぶ長くなってしまいましたが、
この「ゆっくり見る」は、
OPテーマ曲「ウンディーネ」
からも感じられます。
アニメの、特にOPテーマ曲は、
物語の始まりを予感させる
勢いのある曲が多いですが、
「ウンディーネ」のBPMのゆったりさは
全アニメOP曲の中でも
ダントツではないでしょうか。
でもこのゆったりさだからこそ
コードアレンジの妙義が
はっきりと聴き取れるんです。
アニソンの定義、
みたいな定型なパターンに
刺激を求められている方には
是非聴いてみていただきたい曲です。