CUDAさんの評価レビュー

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あらすじの内容よりも気軽に見られる作品

観賞手段:CS/BS/ケーブル
ネタバレ
人類と謎の生命体「ヒディアーズ」が宇宙で戦争をしているという壮大な世界観の下に始まる"翠星のガルガンティア"ですが、物語の舞台は宇宙ではなく地球となります。

物語の序盤、最初の4話は導入として驚くほど良く書かれています。
1話の銀河同盟とヒディアーズの戦争の描写はそれだけで興味を引きます。中には銀河同盟の物語や戦いをもっと見たいと思う人もいることでしょう。

主人公のレドはそんな人類銀河同盟で生まれた少年(?)で、階級が少尉の兵士です。戦争以外はほとんど何も知らない。
そんな主人公が戦闘からの撤退中のアクシデントで地球に飛ばされてしまう。
地球ではヒディアーズとの戦争は起こっておらず、そこに暮らす人々はレドたちと比べると文明的にもテクノロジー的にも劣っている。人々の価値観も生活も文化もレドとは全く異なっている。

この設定は序盤で視聴者が主人公と共に世界観を理解していくのと、主人公に成長の余地を与える意味でかなり上手くいっているように思います。
レドと地球の人々の言語が違い、登場機体のAIが通訳をしてくれるという設定も個人的には好みです。また、その翻訳精度も最初はあまり高くないのも面白かったです。

チェインバー(AI)はおそらく本作の中では特に魅力のあるキャラクターの一人でしょう。主人公の相棒でロボットに搭載された喋るAI。あれこれ説明してくれますし、自分で推測もしますが、チェインバーは他の作品の似たような存在よりもよっぽど説得力があります。重要な物事と本作で伝えたいテーマの多くは彼が視聴者に教えてくれています。

翠星のガルガンティアのコンセプト自体は決して悪く無いですが、13話という話数の制限によって物足りなさを感じますし、前半、中盤、後半で展開の速さが大分異なっています。
特にレドとチェインバー以外のキャラクターの性格描写が不十分で、表面的な部分しか見えてこないように思えますし、若干中途半端に終わっています。正直、印象に残るキャラクターは多くないです。
何人かのキャラクターはストーリーのために"動かされている"印象を受けました。

また、終盤の展開は本来この作品の持つ複雑なテーマを単純化している節があり、ストーリーの深みを少し失っているかもしれません。


翠星のガルガンティアの映像面では、Production I.Gらしい、自然なCGと美しい背景やエフェクトが特に際立っています。果てしなく広がる海と、満天の星空が目を引きます。また、キャラクターの服装や海の鮮やかさと船や街の錆びた感じの色味のコントラストが魅力的です。キャラクターの作画は中盤までは良いですが、終盤までクオリティを維持できていないのが残念です。

翠星のガルガンティアは、SF・ロボットのジャンルでユニークなアプローチをしており、楽天主義なキャラクターが結構多かったり、比較的幅広い層が受け入れやすい設定が用意されています。映像・音楽を含めた作品のレベルも高い。
しかし、リスクを回避した作りになっているようにも取れ、無難なところに落ち着いています。
CUDA
CUDA
ストーリー
4.0
作画
4.0
キャラクター
3.5
音楽
4.0
オリジナリティ
4.0
演出
4.0
声優
4.5
5.0
満足度 4.0
いいね(0) 2013-07-18 11:04:24

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