うらまちゅさんの評価レビュー

演出やストーリーは、稚拙、予定調和な印象が強い。
ミリタリー系に強く、原作好きのスタッフが大挙、
集結して作り上げたにしては完成度が低いのではなかろうか。
例えて言うならば、風呂敷を広げたは良いが収拾がつかなくなった感覚。
旧来だけでなく、新規を取り込もうとした結果の迷走感とでも言うべきか。

元々が劇場公開作品、OVAだけあって作画が高水準なのは当然だと思う。
ただ他の方も記述されていた様に、
戦艦等の重量感が決定的に不足している。
宇宙空間だから関係ない、真空だから空気抵抗がない。
というのもわかるが戦艦等は重厚長大な見せ方が存在すると思う。
早く動かせないセル画では実現出来ていた事が、CGになった途端、
プラモデルを動かしているかの様に見えてしまったのが、
残念でならない。この辺りはスタッフの能力の問題だろう。

素直に共感出来るキャラクターが少なくなった印象がある。
盛り込み過ぎ、新規視聴者を開拓する為に追加された
女性キャラクターを中心に全体的に幼稚、稚拙な言動や行動をする
キャラクターが多過ぎたと思う。「艦長」の発音だけ「浣腸」となっている
統一感のないリアル感を盛り込んだ影響か余計にキャラクターの
子供化が気になった。この辺りも幼稚化でいくのか現実路線でいくのか、
統一性を欠いていたのが残念と言える。また、
新規追加の女性キャラクターにあざとさを感じたのは私だけではないだろう。

キャラクターデザインにも触れると、結城信輝氏のキャラクターは
大きめな目でどちらかと言えば童顔な傾向があると思う。
「地球へ…」「坂道のアポロン」等ならばいざしらず。
地球存亡の危機に命を賭して闘(ってる筈)う
世界観からすれば、もう少し大人びた方向に挑戦しても
良かったのではなかろうか。

登場キャラクターを増やしたのは良いが、
果たしてこれほどのキャラクターが必要だったかと言えば、
不要だったと言えるのではないだろうか。
もし、これだけのキャラクターをしっかりと活用する予定があったとすれば
劇場版7部作？2クール程度の話数ではなく、1年程度の放送期間が
必要だった様に思える。この辺りは監督含めた見通しの甘さの結果だろう。
後半のドメルのあっけなさ、絶対君主感の弱過ぎるデスラー等、
腑に落ちない点は枚挙に暇がない。

ベテラン声優が多数参加したわりには、過去のキャリアにみあった
演技を披露出来ていたかと言えば、疑問を抱く方も多いのではなかろうか。
とりあえず女性声優陣は及第点として、
男性声優陣の個性は弱かったと思う。
印象に残っているとすればドメル役の大塚明夫氏くらいだろうか。
伊武雅刀氏の深い声と比較すると、
山寺宏一氏はスカしていて物足りない印象。
沖田十三役の菅生隆之氏とセットで、
両軍の指揮官はもっと威厳のある演技を。
沖田は老齢感、デスラーは冷酷感を表現できる
声優を起用すべきだったと思う。

音楽もいただけないと感じた。小編成のバンドやオーケストラ的な
楽曲は70年代や80年代であれば通用したかも知れないが、
20～30年経過。フルHD放送や劇場公開に耐えうる高水準作画と
組み合わせると正直、違和感の方が強かった。

両軍の宇宙艦艇同士の(本来であれば)
重厚感のある戦闘場面が、作画や演出の不手際から
「宇宙空間上で艦艇同士がドッグファイトをしている」
「まるで西部警察のカーチェイス」
といった印象を受けたのは私だけでは無い筈だ。

勿論、全ての楽曲が駄目だった訳ではない。
現代でも十分通用する楽曲は少なからず存在した。
宮川彬良氏に才能が無い訳でもない。
が元々クラシックやミュージカル寄りの作曲家が、
原作を忠実に再現した。悪く言えば「再現しただけ」に過ぎない。
故宮川泰氏の親の七光り的起用ではなく、
数曲の編曲にとどめておき、
主要作曲家、主要編曲家は別に起用するべきだったと思う。

主題歌に関しては、TV版OPは大人数で歌っているだけで微妙であった。
JAM Project的とでも言えば良いだろうか。力強さ、悲壮感、
重厚感からすれば男声主体を主軸に。
他に様々な参加アーティストによるバリエーションを採用
等とするべきだったと思う。「地球へ…」や「ガンダム00」等の
起用でUVERworldを知り得ているが、後期OPに関しては、
軽薄な印象が強い。また作品内容とも合致していないと感じた為、
この起用は失敗だったのではなかろうか。

劇場版公開告知CMやBD発売告知CM等による
事前の期待が大きかっただけに、こういった内容となってしまったのが
本当に残念極まりない。そんな作品だった。