ライター 箭本 進一さんの評価レビュー

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天地創造+お仕事コメディ+動物知識の欲張りアニメ

観賞手段:テレビ、動画サイト
神様は天地を創造したが、生き物のデザインは下請けに任せることに。これを請け負う「天地創造社」には個性的なデザイナーたちがいて、神様のアバウトなオーダーに四苦八苦している。神様と天地創造社の間を繋ぐのが、新米の連絡係・下田。天使である下田は天地創造社に出向し、様々な生物たちがデザインされる現場を目撃していく。
世にお仕事もの、サラリーマンものと呼ばれる漫画やアニメは多いが、本作は「地球の生物(実在の生物)がデザインされる現場」というファンタジックな職場を、人間臭いデザイナーと連絡係の視点で描いているのが面白いところだ。
天地創造社の仕事は、地球において自力で繁栄できる生物をデザインすること。未だ人類の歴史は始まっておらず、採用された動物=現在我々が目にしている動物となる。肝心のデザインは神様ではなくデザイナーが行うため、自力で繁栄するには様々な困難が立ちはだかるのだ。第1話のオーダー「すごく高い所の葉っぱを食べられる動物」などは良い例である。デザイナーたちは「翼を持つ馬」「首が長い鹿」といった案を出すが、前者は翼を動せるほど大量な筋肉の搭載と軽量化に難ありということで没に。後者を試作してみたところ、首が長すぎて脳に血が届かず卒倒。その代わりに足を長くしてみたら地表の水が飲めず、葉っぱのカロリーだけで巨体を維持できない懸念が出てきた。果たしてデザイナーたちはどのように難題を解決するか、そして採用された動物が何なのかは本編を見てのお楽しみ。つまり、クライアントからのアバウトだったり矛盾していたりする夢物語のようなオーダーを、現実的な制限の中でいかに落とし込んでいくかという姿が描かれるわけで、社会人なら共感できるお仕事ものっぽさがある。
過去の成功例に固執する土屋、美意識を優先しがちな金森、少女だがグロ系のデザインを上げてくる冥戸など、デザイナーたちはクリエイティブ系の職場にいそうな人々で、サラリーマンもののようなテイストも味わえる。神様の漠然としたオーダーから、採用されたらどの生き物になるのかを想像しつつ見るのは、ちょっとしたクイズもののよう。例えば配信専用の第13話では「沈まない、針を飲める、痛い地面も痛くない、暑さと寒さに強い、水が少なくても生きられる」という曖昧模糊としたオーダーが現実のとある動物になるのだから面白い。
お仕事ものコメディとして感情移入しつつ、実在の動物についても学ぶことができて知識欲も満たせるという欲張りな本作。年齢を問わずお勧めの1本だ。
プロレビュアー
ライター 箭本 進一
ライター 箭本 進一
ストーリー
4.0
作画
4.0
キャラクター
4.0
音楽
4.0
オリジナリティ
4.0
演出
4.0
声優
4.0
4.0
満足度 4.0
いいね(0) 2024-07-31 20:05:07

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