にゅまさんさんの評価レビュー

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ロボアニメ史に打ち込まれた記念すべき楔。

観賞手段:テレビ、ビデオ/DVD
世間ではようやく「宇宙戦艦ヤマト」が注目され、アニメの客層にハイターゲットが有り得る事が認知され始めていたとは言え、しかしそれは「ヤマト」だけの一過性の現象。主流のロボットアニメは昔からもこれからもずっと児童向け玩具CM番組、作品性とか全然有り得ない……そう思われていた1977年。
それまで東映の下請けが主の小さなスタジオだった日本サンライズの初のオリジナル作品は、まだ30代半ばの若き鬼才・富野喜幸の手腕によって当時のロボットアニメの常識ではありえない展開を見せ、スポンサーや広告代理店を顔面蒼白茫然自失に追い込んだ。
 まず戦いに巻き込まれる民衆が描かれた。確かに正義がどっちにあろうが、巻き込まれて生活基盤はもちろん命すら失った人々にとっては関係ない。怒りの矛先は主人公達にも向けられる。むしろ近くに居る分、敵以上に正面から怒りをぶつけられ、序盤は孤立した主人公らの辛い戦いが続く。
 そしてようやく少しずつ主人公の理解者が出てきたあたりに、単純にロボットの戦いで勝っても救えない命が山ほどあるのだと、主人公の無力さを突きつける展開が待っている。他の男児向け作品ならば敵との戦いに勝てさえすればご都合主義的奇跡で万事解決するのが作劇の鉄則だった時代に、あまりにもドライで無慈悲な展開であった。
 そしてここまででも圧倒的にロボアニメのテンプレートをぶち破っておきながら、最後の最後にそれらを凌ぐ最大の大ネタが仕込まれていたのであるから堪らない。
 そしてただ陰惨に陰々滅々としている訳ではなく、その追い込まれてギリギリの状況でこそ見せられる人の絆と意思、覚悟、勇気が胸を打つ、ああこれを描きたかったのだと思い知らされるのである。
 現代では確かに厳しい展開もジャンルとして珍しくもなくなったが、しかし1977年にそれを成し遂げた開拓精神の凄まじさ、まさしく本作は富野良幸によってアニメ史に打ち込まれた巨大な楔だ。
 後に「ガンダム」にてハイターゲット向けのアニメがジャンルとして定着するが、しかしその下地は築いたものである。
 なお本作時代のサンライズの作画能力の低さは隠し様の無い欠点ではあるが、しかし金田伊功作画回においては圧倒的なハイレベルである事を補足しておく。
にゅまさん
にゅまさん
ストーリー
5.0
作画
2.0
キャラクター
5.0
音楽
5.0
オリジナリティ
5.0
演出
5.0
声優
5.0
5.0
満足度 5.0
いいね(0) 2017-07-01 03:39:22

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