ライター 箭本 進一さんの評価レビュー

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今もなお輝く、少年マンガの金字塔

観賞手段:劇場
少年マンガの金字塔「聖闘士星矢」が25周年記念のCG映画に。テーマとなった「十二宮編」はシリーズの魅力が詰まったエピソード。星座をモチーフとしたプロテクター・聖衣をまとう主人公の星矢たち青銅聖闘士たちが、女神アテナの化身である沙織を守るため、強大な力を持つ黄金聖闘士に立ち向かう。自分の正義や理想のため、実力の差も省みずに戦う少年マンガの王道に、個性的な必殺技やこれを発動させる小宇宙という概念、様々な能力を持つ聖衣といったギミック感が加わるのだから、盛り上がらないわけがない。星座や神話といった明確なモチーフに基づいてデザインや能力を決め、聖闘士たちを青銅・白銀・黄金と序列化して少年マンガ的な大逆転をより分かりやすいものに。さらには主人公たち青銅聖闘士たちよりも少し年齢層が上の先輩として黄金聖闘士を配し、単に打ち倒すべき敵ではなく、様々な事情や大人としての葛藤も盛り込む……といった原作「聖闘士星矢」の図式は、現代のヒット作にも受け継がれている。1985年にスタートした原作のヒット後、同様の図式を用いた様々なマンガやアニメが作られたことからも、インパクトの大きさがうかがえる。
本作「聖闘士星矢 Legend of Sanctuary」では、聖闘士という概念の説明、聖闘士や沙織たち17人のキャラ立て、教皇との対立、様々な必殺技を駆使したバトルといった要素が93分に盛り込まれており、スピード感がある。キャラクター像についてはリファインが行われており、デザインもより現代的な方向性へ寄せられた。特に沙織については、普通の少女がアテナの化身として命を狙われることになった戸惑いが強調されており、こうした部分は9年後の実写版「聖闘士星矢 The Beginning」にも受け継がれているところが興味深い。メインとなる青銅聖闘士たちにも平時の描写があるものの、映画であるためバトルの比率が多く、新たな解釈がされた彼らの人間性をもっと見たいと感じられた。
本作の聖衣は重厚な質感と輝く美しさを兼ね備えており、CGであるため、複雑なデザインであっても作画が崩れることもなく動きまくる。CGのメリットを活かした映像というわけで、「聖闘士星矢」とCGの親和性に改めて気付かされる。必殺技の映像も美しく、特に黄金聖闘士たちの大技は迫力満点。中でもデスマスクの「積尸気冥界波」はミュージカル仕立てとなっており、アレンジも面白い。
前述したように「聖闘士星矢」の確立した図式は現代でも通用するもの。本作をきっかけに、シリーズを見てくれる人が増えることを期待したい。
プロレビュアー
ライター 箭本 進一
ライター 箭本 進一
ストーリー
5.0
作画
5.0
キャラクター
4.0
音楽
4.0
オリジナリティ
5.0
演出
4.0
声優
4.0
4.0
満足度 4.5
いいね(0) 2024-01-31 14:56:03

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