萌えアニメでは、骨格や体のつくりが重要
─天﨑さんのツイッターには、「未確認で進行形」(2014)のイラストが固定されていますね。
天﨑 「未確認」が終わった後、割と余力があったので、描いてみたという感じです。本当なら「ミカグラ学園組曲」(2015)のほうを何か描くべきだったのですが、「未確認」の後の「野崎くん」も、その後の「ミカグラ」も結構大変だったので、お疲れさま絵を描く余裕がなかったんですね。それで、そのままになっているというわけです(汗)。深い意味は何もないです(笑)。
─最近では萌えアニメでも、天﨑さんの評判は非常に高いですね。
天﨑 「ぴちぴちピッチ」をやっていなければ、今こうして萌え系のキャラとか、やれてなかったと思いますね。それ以前は基本的にリアル系だったので、今も気をつけないと、体がごつくなってしまいます(笑)。肩幅を大きくしないようにとか、骨格の表現をどこまで出すかとか、考えながら描いています。骨格や体のつくりの表現がまるっきりないと、あんまり魅力的にならないんですけど、逆に出し過ぎると、また魅力的じゃなくなるんですよね。
─体のつくりといえば、「未確認」のヒロイン3人は、見事に体型が異なっていますね。
天﨑 主人公の小紅は、「巨乳安産型」というあおりがついているくらいで、デザインの菊池愛さんも、そこは結構悩んでいたみたいです。あと、藤原佳幸監督が体型を描き分けたい方で、「NEW GAME!」でもその辺はこだわっておられました。
アニメーターへの負担は、約10年前からじわじわ増え、限界に近い状態
─今のアニメのクオリティはとても高く、視聴者としてはありがたいのですが、アニメーターさんへの負担も大きいと聞きます。天﨑さんの実感はいかがですか?
天﨑 10年以上前から、じわじわクオリティが上がってきたという感じですね。急に大変になったのではなくて、「これぐらいなら仕方ないか」を繰り返し、毎年毎年ちょっとずつ大変になり、気づいたら「もう無理じゃない?」みたいなところまで来たという感じです。本数が増えているということも併せてですけれども、内容と量の両方が求められちゃっているので、今、現場的にはかなり大変になってきているのは事実です。突然大変になったら、「こんなのできないよ」となるのですが、10年ぐらいかけてじわじわ来ているので、「なんなんだ!」と皆グチっている間に、こんなに大変になっちゃいましたみたいな感じです。
─作監として思うことは?
天﨑 「.hack」をやっていたころは、1日に30カットくらいは上がっていましたが、それが今では、1日に3カットぐらい、10カットいけばいいほう、といった具合になってきています。「干物妹!うまるちゃん」(2015)をお手伝いした時は、目や髪の毛の処理もシンプルで、割とすらすら上がりましたが。一番変わったのは、これまではボンズさんやProduction I.Gさんのような一部のスタジオだけが、「逃げない」作り方をしていたのですが、今はどこのスタジオも、割と近いことをやるようになってきていて。そうなると当然、カット内容が大変になってくるのですが、描ける人の数は不足しているのが現状です。
─目の処理は、最近のアニメではよく注目されますね。
天﨑 どの作品でも、監督とデザイナーさんが「目の処理をどうしようか」と相談されていますね。最近はそれぞれのキャラクターの個性を、顔のつくりでも出そうというのがあります。昔は「皆同じ顔、髪型だけ違う」、「キャラがひとつ描ければ、全部描ける」というような作品もあったのですが、今は「目でも作品の特徴を出そう」という流れがある感じですね。自分が関わった作品で言うと、「花咲くいろは」(2011)の時には、「ここまでやるのか」と思ったものですが、今ではもっと複雑な作品が増えていますね。