「NEW GAME!」では、単独で総作監をした話数が人気回に
─直近ですと、天﨑さんは菊池愛さん、岡勇一さん、菊永千里さんとともに、「NEW GAME!」(2016)で総作画監督を務められました。本作は大ヒットしましたね。
天﨑 おかげさまで。動画工房的にもメインで押していきたい作品ということで、プロデューサーの鎌田肇さんからお話をいただきました。基本的には話数でローテを組んで、作業を分担しましたが、最後のほうになると時間もなくなってきて、メインの総作監さんを皆でヘルプし合う形をとりました。
─第6話は、天﨑さんがおひとりで総作監をされていますね。
天﨑 この時はスケジュールの関係で、今までとは違った方法を採用しました。過去の作品では割と全部直していたんですが、本話数の1枚1枚を一生懸命直しちゃうと、時間が足りなくなって、全体的なクオリティが落ちてしまう可能性があったんです。なので、今回は視聴者の目がいかない場所とか、気がつきにくいところはあえて直さないで、大事なカットとか、目が行く場所を重点的に直していく、という感じでやっていました。制作進行の話では、配信サイトの再生回数も一番高かったらしく、人気話数になっているそうです。休日回だったので、お話的にも恵まれていたと思いますが、全体のためにトレードオフしていく方法がうまくいったかな、とほっとしています。
─重点的に直されたのは、どういったところになりますか?
天﨑 一番ガッツリ直したのは、「コウのお尻」ですね(笑)。ああいうカットでは、単純にお尻がそこにあればいいわけじゃないので、魅力的に見えるように直させていただきました。あとは、映画館のところで、子どもがもらえるグッズを見て、目を輝かせているネネの表情ですね。やっぱりキャラクターの内面というか、キャラクターらしい感情が見えた時に「かわいいな」と感じるので、そこがいまいち伝わらないと、キャラクターの魅力がうまく伝わらないと思っています。
─いわゆる萌えアニメは女性キャラの設定が細かくて、直しも大変なのではないでしょうか?
天﨑 そうですね・・・、6話で言うと、青葉がトイレで着替えをするシーンがありまして、原画の上がりも作監の上がりも素晴らしかったのですが、体型がちょっと大人っぽかったんですよね。青葉は割と幼い感じのキャラなので、「あまりくびれないで、幼さを出してほしい」と修正を出しました。
─第3話ではアイキャッチも描かれていますね。
天﨑 メインスタッフに振り分けて、自分のところには3話が来た感じです。このコンテと演出は撮影監督の桒野(くわの)貴文さんで、撮影監督がコンテと演出をされるというのは、あまり例がないと思います。本編で朝ごはんが美味しくて、遅刻してしまうというのがあるので、それに関連した内容になっています。「ガラステーブルなので、映り込まないと」と思って描いたところ、桒野さんからは「映り込みまで描いていただいて」と、何度も感謝されました。桒野さんはイメージ系の撮影処理が得意な方でして、「かわいさ2割増し」くらいに盛っていただきましたね(笑)。
─天﨑さんのツイッターによりますと、本作はドラマCDの原画も描かれているとか。
天﨑 そうですね。キャラデザの菊池さんにも、監修していただいています。ドラマCDは、「最初の段階から通しでやってほしい」という感じでお話をいただきまして、1巻から3巻まで統一感のある感じでできたんじゃないかと思います。「NEW GAME!」は版権の多い作品だったので、メインスタッフで手分けして担当しているのですが、編集の方からは、「得能正太郎先生も、アニメの版権を楽しみにしています」とうかがいました。
天﨑まなむの作画の特徴は、「感情表現」にあり
─天﨑さんの作画の特徴を、ご自身で説明するとすれば?
天﨑 わかりやすい特徴というのはあまりないと思いますが、感情表現が割と得意なのかなと思います。動かしてなんぼというわけではなくて、止まっていても、そのキャラクターの人となりがわかり、キャラがどんな気持ちでいるのかが伝わる作画を心がけています。
─よろしければ、何か一例挙げていただけますか?
天﨑 「Phantom ~Requiem for the Phantom~」(2009)では、感情表現ばかりやっていた感じですね。たとえばメインヒロインのアインは、自分の感情を殺しているキャラなのですが、演出のモリヲカヒロシさんとも「人間、感情がなくなることはないよね」と話をしていました。彼女は最初に、主人公の玲二の教育をさせられるんですけど、その時の玲二の姿と過去の自分がダブって見えて、感情が揺さぶられるシーンがあるんです。いわゆる「綾波キャラ」っぽいですが、そうしたテンプレにならないように、アインの感情が見ている人に伝わるよう、心がけて作画しました。あと、「Phantom」ではもう1人のヒロインである、キャルの感情表現にも力を入れました。玲二から懐中時計をプレゼントされたキャルが、夕日の中で「ありがとう。大事にするね」と言って、にっこり笑うシーンがあるのですが、そこでは最高に幸せそうな笑顔になるよう意識しました。幸せそうであればあるほど、後々の切ない展開も強く生きてくるので、大事なシーンになるなと思いました。自分の中で本作はとてもやりがいがあって、楽しく仕事ができました。
─原画や作監で印象に残ったお仕事は?
天﨑 作監を始めるちょっと前の、「電脳冒険記ウェブダイバー」(2001~02)という作品では、結構凝った原画を描かせてもらいました。最終決戦の前日、仲間の子どもたちは主人公にはっぱをかけるため、一緒にバスケをやるというシーン(50話)があります。ここは割とガチで描きました。絵コンテは主人公が仲間のディフェンスをかいくぐって、シュートを決めるという内容だったのですが、自分の原画ではフェイントを入れ、ブロックさせ、フェイドアウェイシュートを決めるカットにしました。子ども向けアニメで、フェイントして駆け引きするというのは、普通はやりませんよね。当時の作画データは今でもスタジオアドに残っているらしく、それを見た後輩からは「ウェブダイバーは知らないんですが、バスケアニメだったんですか?」と言われちゃいました(笑)。