「『SILENT HILL 2』Tokyo Media Premiere」開発者インタビュー!20年越しのリメイクにあたり、開発スタッフたちが変えたところとそうでないところを語る

2024年08月20日 18:000

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コナミデジタルエンタテインメントは2024年8月8日に、リメイク版「SILENT HILL 2」を世界最速でプレイできるメディア向けの試遊会「『SILENT HILL 2』Tokyo Media Premiere」を開催した。

この日は試遊に加え、開発スタッフへのQ&Aセッションと囲み取材も行われている。コナミデジタルエンタテインメントの「SILENT HILL 」シリーズプロデューサー・岡本 基氏、作曲家・山岡 晃氏とコンセプトアーティスト・伊藤暢達氏、開発を担当するBloober Teamのクリエイティブディレクター・Mateusz Lenart氏とリードプロデューサー・Maciej Głomb氏が、日本と海外のメディアから寄せられた質問に答えた。




――リメイクとしての注目ポイントについて教えてください。


Lenart 原作への愛と思い入れとともに、ゲームプレイ全体からレベルデザインまで、何から何まで煮詰め直したのが今回のリメイク版です。クリーチャーとの戦いから探索まで、一体感のあるゲームプレイとして成立させました。


 

――岡本さんは、オリジナル作に携わった山岡さんや伊藤さんとリメイク版を作ったわけですが、いかがでしたか?


岡本 「SILENT HILL 2」は非常に長く愛され続けてきており、ファンの方々がずっと考察を続けているタイトルです。山岡さんと伊藤さんと一緒にお仕事できたことで、設定を掘り下げることができたのが非常によかったです。



――山岡さんと伊藤さんに聞きたいのですが、再び「SILENT HILL 2」に携わるのはどんな気分であったか教えてください。


山岡  音楽を作ると言うよりは、25年前の生き方を問いかけるところからリメイクに挑みました。そのままやるのは簡単なんですが、25年間作品を愛する方々や、新しくプレイされる方に新しい作品として受け入れてもらうために、どういうことをやらなければならないかを考えたんです。あの頃はベースを買えず、ギターのチューニングを下げてベースの代わりにするようなこともありました。自分が「SILENT HILL 2」の曲をどうやって作ったのか、自分と問答する毎日で苦しかったですね。



伊藤 リメイクに参加してほしいというオファーをいただいたとき、オリジナルの「SILENT HILL 2」をいじる必要はない……ということで断ろうと思っていたんです。とはいえ、リメイクが進むのなら「SILENT HILL 2」のコアを引き継いでもらい、プレイしたことのない人にオリジナル版のインパクトをブラッシュアップした形で伝えられないかと考えて参加したんです。



――リメイク版「SILENT HILL 2」には新曲はあるのでしょうか?


山岡 楽曲は全て書き直しています。オリジナル版の曲が25年間愛され続けてきたことはうれしいのですが、新しい「SILENT HILL 2」ということで、新しさを持った楽曲を作っています。全部で9時間くらい(楽曲が)あるので、サントラを出すのにどうすればいいのか考えているところです。


――「SILENT HILL 2」はアイコニックなタイトルであり、信頼の置けるパートナーでないと開発をまかせられないものだと思います。Bloober Teamを選んだ理由を教えてください。


岡本 「SILENT HILL 2」をリブートするにあたっては、世界中のスタジオが候補にあがりましたが、我々は「SILENT HILL 2」への愛情が強いチームを選びたかった。私は実際にBloober Teamを訪ね、非常に愛情深いことがわかったので、開発をお願いすることになったんです。


――今回はフェイシャルキャプチャーが使われたとのことですが、一人称視点のゲームを得意とするBloober Teamがどうやって高クオリティを達成したのか、そしてキャラクターのデザインを変えた意図について聞かせてください。



岡本 Bloober Teamさんに三人称視点のゲームの経験が少ないことはわかっていましたが、情熱の強いチームであるし、アウトソーシングを含めたトライをしてくれるのではないかということでおまかせしました。


Lenart ファンの皆さんからの期待もかなり大きくなるということで、我々も覚悟しました。岡本さんとも話し合い、キャラクターの表情は完璧以外許されないだろうと肝に銘じつつ、妥協することなく作っていきました。



岡本 キャラクターデザインの変更については、リアリティを出すためにフェイシャルキャプチャーを行うにあたり、現実の俳優さんを起用したことが理由です。演技力を含めて選定を行いましたので、造形が変わっていてもキャラクターの魅力が表現できると考えています。


――開発にあたっては、岡本さんたちが原作から変えていきたいと考え、Bloober Teamが原作そのままにしたいということで意見を戦わせたと聞きます。印象に残ったやり取りはありますか?


岡本オリジナルに携わった山岡さんと伊藤さんは非常に高いクリエイティビティを持っておられ、リメイクでありつつも完全新作になるようなイメージで作りたいというお話もありました。伊藤さんからはクリーチャーのデザインをまったく変えたいというアイデアもいただきましたし、ゼロベースの新作を作る可能性も議論しましたね。


Lenart 逆に、原作から一切変えないという案も出ました。いろいろな意見がありましたが、最終的に現在の形にまとまることになりましたね。


――実際に試遊して、冒頭部分のテンポがかなりよくなっていたのが印象的でした。


Lenart  オリジナル版の序盤は展開がゆっくりなところがあり、アクションや盛り上がりを加えることも検討されたのは確かです。最終的には原作に極力近づけつつも、ペースを変更した形になります。これは難しい判断ではありました。



――リメイクではマップを追加したそうですが、その理由について教えてください。


Lenart カメラ視点の変更を最大限に活用するためです。カメラを肩越しとすることで、既存のマップを全て再構成する必要が出ました。屋外は原作からあまり変えず、屋内は肩越し視点において探索しがいがあるようにするため、原作から一新しています。


――「SILENT HILL 2」のCG表現はオリジナル版の時点ですでに仕上がっていた感もありますが、リメイク版ではどのように進化させたのでしょう?


Lenart とにかく霧の演出に力を入れること。そして、グラフィックが向上したからといって、オリジナル版にない血やゴア表現を入れるような方向性を採らないことを徹底しました。霧をはじめとして、雰囲気を重視した演出になるようにしていったんですね。



伊藤 霧の演出については、相当口を酸っぱくしてたくさんの注文を出させていただきました。単なる街に漂う霧ではなく、心情的な部分をグラフィックで表現するのが「SILENT HILL 2」のポイントでしたから。リメイク版で最も成功したのは、この霧の表現ではないかと思っています。


――オリジナル版のカメラには映画的な雰囲気がありましたが、一転してリメイク版のカメラには没入感があります。演出面での苦労や見所を教えてください。


Lenart オリジナル版のカメラは固定だったので、何を見せるか、見せないかといった演出をコントロールすることができました。今回はプレイヤーがカメラを自由に動かせるので同じ手法を採れませんでしたが、その上で原作と同じような印象を抱いていただけるよう、クリーチャーの挙動から調整を加えています。たとえばマネキンの場合、プレイヤーの視界から外れると隠れるような動きをさせることで、原作に近い感覚を味わっていただけるわけです。また、オリジナル版では扉を開ける度にロードが入っていましたが、今回はそうしたこともなくシームレスに移動できます。常に移動できることが恐怖につながるよう、マップを再構築することもしました。



――リメイク版に登場するクリーチャーについて、オリジナルと違いはあるのでしょうか?


伊藤 オリジナル版とリメイク版では戦闘のゲームデザインに違いがあるので、クリーチャーをマイナーチェンジしています。全く新しいクリーチャーというのはいないんですが、当時こうしたらよかったというところを反映したクリーチャーがいます。原作との違いを考察していただくのも、今回の楽しさのひとつかもしれません。


――クリーチャーとの戦闘について、アクション部分においてどのような恐怖演出をしたのか教えてください。


Lenart オリジナル版からカメラ視点を変えていますので、これに合わせて恐怖演出も変わってくるところがあります。さらにプレイヤーが動く自由度も増していますから、クリーチャーのデザインや挙動も変える必要がありました。そこでリメイク版では、クリーチャーに複数の挙動や、恐怖演出に繫げていける要素を持たせていったんです。たとえばライングフィギュアの場合、地上を這い回ることがあれば、毒霧を放ってくることもあります。また、マネキンは飛びかかってきたり、攻撃を回避したり、身を隠すような動きをするようにしました。次に何をしてくるか分からないという不安定さが恐怖演出になるわけです。



――リメイク版で初めて「SILENT HILL 2」に触れる人もいると思いますが、気を使った所などはありますか?


岡本 リメイク版でも難易度選択を導入しました。戦闘とパズルで個別に設定することができ、幅広い層の方に遊んでいただけるようになっています。パズルの難易度を変更すると、探索中にメモや周囲の環境から手に入るヒントの質や量が変わります。これは「SILENT HILL」シリーズの伝統でもあるので、Bloober Teamさんにはがんばっていただきました。日本語の吹き替えも入れていますので、字幕でゲームを遊ぶのに慣れていない方でも問題なくプレイしていただけます。


――「SILENT HILL 2」の魅力について、改めてアピールをお願いします。


Lenartプレイヤー自身の心に直接刻まれる物語でしょう。作品に漂う雰囲気もほかの作品には見られないものですし。


Głomb やはりキャラクターではないでしょうか。一般論として物語の筋書きというものには、時がたてば忘れられてしまう側面がありますが、キャラクターの印象は薄れることがありません。特に「SILENT HILL 2」の人々は実在していたかのように感じられるほどに作り込まれていますからなおさらです。


岡本 安易なハッピーエンドにならないところが、「SILENT HILL 2」を特別な作品としているところだと思います。


山岡「SILENT HILL」シリーズ、特に「SILENT HILL 2」はひとつの体験だと思っています。当時プレイされた方が、どう遊んだかというより体験だと感じておられるからこそ、25年もの歳月を経てなお愛され続けているんじゃないでしょうか。当時のメンバーたちがオリジナリティを持って独特なものを作りたいと考えた、そうしたかけ算、割り算、足し算、引き算が「SILENT HILL 2」を体験にしたと思っています。


伊藤 当時はチームにはデザイナーが僕を含めて数人しかいない状態でしたね。「SILENT HILL 2」を作らなければならないんですが、開発期間もバジェット(予算)も決められた中、ディスカッションしかできなかったんです。まずはバトルデザインよりもストーリーやプレイヤーがプレイする道のりに特化した作品でいこう、と決めました。その上でほかのゲームと差別化するためにいろいろな工夫をしていったんですが、25年間も愛され続ける作品になるとは思ってもいませんでしたね。


――今後「SILENT HILL」フランチャイズの未来はどのようになっていくのでしょうか。その中でリメイク版「SILENT HILL2」はどんな役割を持っているのでしょう?


岡本 「SILENT HILL 2」はシリーズにおけるクオリティのスタンダードであるという側面があります。我々は「SILENT HILL 2」のリメイクを通し、KONAMIが自信を持って作品を送り出していくことと、「SILENT HILL」のクオリティを保証するということをお伝えしていきたいです。


――ありがとうございました。




この日は特製のケーキやドリンクといったコラボメニューも振る舞われた


こちらは作中でおなじみの「ALL-STAR’S PIZZA」のケース。なかにはノベルティが入っていた

(文/箭本進一)


  • 【タイトル情報】
  • SILENT HILL 2
  • メーカー:KONAMI
  • 対応機種:PlayStation5、Steam
  • 発売日:2024年10月8日
  • メーカー希望小売価格
  • スタンダードエディション:8,580円(税込)※パッケージ版はPlayStation5のみ
  • デラックスエディション:9,790円(税込)※ダウンロード版のみ
  • ジャンル:サイコロジカルホラー
  • CEROレーティング C(15歳以上)

©Konami Digital Entertainment

※画面は開発中のものです。

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