伝説のサイコロジカルホラーゲームがよみがえる! オリジナルの良さをそのままに、勇気あるアレンジを加えた「SILENT HILL 2」プレイインプレッション

2024年08月19日 16:000

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名作サイコロジカルホラーゲーム「SILENT HILL 2」が23年を経てよみがえる──。コナミデジタルエンタテインメントは2024年8月8日に「『SILENT HILL 2』Tokyo Media Premiere」を開催した。

このイベントは、2024年10月8日に発売を控えた「SILENT HILL 2」を世界最速で試遊できるという、メディア向けの催し。4Kグラフィックスで表現力が増し、戦闘も奥深くなった同作を体験することができた。

こちらは会場のフォトスポット。おなじみのクリーチャーたちと写真を撮ることができた

 

「SILENT HILL 2」は2001年にPS2で発売されたホラーゲーム。主人公ジェイムスは病気で死んだはずの妻・メアリーから“「サイレントヒル」にて待っている”という手紙を受け取る。このありえない手紙にしたがってサイレントヒルへ赴いたジェイムスだが、奇怪なクリーチャーに襲われながら、真っ白な霧に包まれた街をさまようことになってしまう……。プレイヤーの精神に迫る恐怖を呼び起こす「サイコロジカルホラー」として、発売23年を経た現在でも語り継がれている作品だ。



そんな「SILENT HILL 2」がリメイクされることとなった。この日はコナミデジタルエンタテインメントの「SILENT HILL」シリーズプロデューサーである岡本 基氏、作曲家の山岡 晃氏とコンセプトアーティストの伊藤暢達氏、開発を担当するBloober TeamのクリエイティブディレクターであるMateusz Lenart氏とリードプロデューサーのMaciej Głomb氏が登場。リメイク版の新要素について、岡本氏は「4Kで描かれる霧の街」「感情に訴えかけるカットシーン」「感性を刺激する立体的な音」「没入感の高い肩越し視点」「緊迫感のある戦闘」「クリーチャーの追加要素」「探索エリアの拡張」「観察力を試される謎解き」「マルチエンディングの追加」という9つのポイントに絞って語った。



サイレントヒルの街は現代の4Kグラフィックで描かれることとなり、より緻密なものに。カットシーンはフェイシャルモーションキャプチャを用いて俳優の演技を取り込むことで、より微妙なニュアンスも表現されたものとなっている。音響については3D音響が採用され、周囲の音が想像力を刺激する。特に大きく変わったのが、視点が見下ろしから肩越しのTPSゲーム仕様になったことだろう。プレイヤーの視点がジェイムスに近いものになることで、没入感と緊張感が高まっている。



クリーチャーとの戦闘は再構築されており、身をかわす「ドッジ」が追加されたことでより緊迫感のあるものに。クリーチャーについては再配置を行い、新クリーチャーではなく「スパイダーマネキン」のような亜種的バリエーションが追加されている。また、探索できるエリアも拡張され、窓枠の飛び越えなどのアクションを駆使してしっかりと探索を楽しめるように。謎解きも現代風に見直され、なかにはパズルを解くことで過去の出来事が垣間見えるようなこともあるという。そして、物語の最後では「新解釈を加えたまったく新しいエンディング」が複数個追加されているとのことだ。



この日はリメイク版「SILENT HILL 2」の冒頭を4時間ほどプレイすることができた。精神に迫る恐怖はそのままに、さまざまな変更が加えられることで2024年のサイコロジカルホラーゲームとしての「SILENT HILL 2」を堪能できた、という印象だ。

 

まず目を引くのがグラフィックの変化だろう。リメイク版ではグラフィックが4K解像度となり、PS2版よりも表現力が大幅にアップしている。ジェイムスの顔がアップになると無精ひげが目立ち、疲れ果てた彼の境遇が雄弁に語られる。不可解な手紙に憔悴したうえ、亡き妻との思い出があるサイレントヒルで過去と向き合わなければならない辛さが伝わってきて、感情移入もより深まった。



サイレントヒルの描写も4Kグラフィックでより詳細になっている。水たまりやゴミ捨て場を見た際は嫌悪感が背筋に走るし、汚れたアパートや建物には精神力をジワジワと削られる類の不愉快さがある。この辺りは解像度がアップした“恩恵”といえる。そして、サイレントヒルを象徴する霧は茫洋とつかみ所がないながらもねっとりしていて、想像力が負の方向へと掻き立てられる。


周囲が真っ白な霧に包まれた光景は不吉さと同時に、ある種の超自然的な美しさも感じさせるもので、一歩進む度に引き返せなくなっていくというか、俗世から離れていくような恐怖がある。つまりはオリジナルをプレイした際の感覚が再現されているというわけで、実にサイレントヒルらしい。「オリジナルよりもリメイク版がすぐれている」というよりは、「画風が違う」と捉える方が適切なのではないか、と思える。オリジナルの霧やサイレントヒルにはPS2ならではの画風の良さがある。

そして、リメイク版では4K画像という、より細部を描き込む画風で描写されているということだ。単に解像度を上げるだけでなく、「SILENT HILL 2」の勘所を押さえつつ画風を変えたというわけで、Bloober Teamの原典に対するリスペクトが感じられる。このあたりの開発秘話については、別記事(※Q&Aセッション記事のURL)に詳しいので、興味のある人はぜひチェックしてみてほしい。




サイレントヒルを映し出すカメラについては、オリジナルから明確に異なったものとなっている。オリジナルのカメラは、シーンにもよるが、ある程度引いた場所から見下ろし気味に周囲を写すものだったが、今回は肩越しというジェイムスの視点に近いものになった。つまりは臨場感が増した中で霧のサイレントヒルをさまようということで、不安を覚えつつ引き込まれるような独特の感覚はより強まったといえる。細かく描写される建物の不気味さや陰鬱さも肩越しカメラでより引き立っているわけで、ファンなら「あのサイレントヒルを歩いている」と感慨深くなるのではないだろうか。





リメイクで最も大きな変化があったポイントのひとつは、クリーチャーとの戦いだ。上半身をラバーの袋で覆われたようなライングフィギュア、2つの下半身を上下につなげた風にも見えるマネキン、カサカサと這い回るクリーパーといったクリーチャーはそこにいるだけでも恐ろしいが、カメラが肩越し視点になったことにより、ヤツらが害意とともに迫ってくることの恐ろしさと異常さが、より真に迫る形で感じられるようになった。クリーチャーに組み付かれてどアップになった際などは、ホラーゲーム慣れしているはずの筆者が「早く離れてくれ」と祈るようにボタンを連打するありさまなのだから、どれだけ恐ろしく迫力があるかがおわかりいただけるだろう。



戦闘のシステム自体も変化しており、ジェイムスは身をかわす「ドッジ」が可能になった。中間距離で攻撃を誘ってからドッジで避ければより安全に攻撃ができる。また、真正面から殴り続けているとクリーチャーが反撃してくるが、ここでドッジを使えばさらに攻撃を継続することが可能だ。クリーチャーのモーションを観察して避けるというのはアクションゲームの根源的な面白さ。慣れてくると、避けて殴って、避けて殴って……という感じに戦えて気持ちがいい。銃撃についてもTPSのような「狙う」アクションが追加されており、クリーチャーの素早さに翻弄されつつ狙いをつけるのがスリリングだ。

 

クリーチャーは毒霧を吐いたり、飛びかかってきたり、こちらの攻撃を避けたり、視界から逃れるように動いたり……と多彩な行動パターンを持つため、油断はできない。プレイできた範囲では、回復アイテムや弾丸はギリギリの数しか手に入らないため、節約を考えつつプレイを進める必要がある(なお、オリジナルと同様、難易度は戦闘と謎解きで別々に設定できる。今回は通常の難易度での感想だ)。それだけにドッジの重要性と「しっかり集中していれば攻撃を避けられる」ことの責任は重く、緊張感が持続するのだ。



展望台の駐車場から墓場を抜け、霧に包まれたサイレントヒルへと入っていく辺りは、テンポ感の変化こそあれ原作に近い展開だ。街の通りを行き来しつつ謎解きを進めていくのだが、地図にジェイムスが書き込みをしていくことが誘導にもなっている辺りはオリジナルと同様。マーカーを始めとしたゲーム的なUIを最小限とすることでホラーゲームとしての雰囲気を壊さないというわけで、もともとのコンセプトがいかにすぐれているかを再確認させられた。

なお、壁に貼られている壁紙や拾えるアイテムなどには丸いアイコンが点くが、こちらはオプションで変更できる。オリジナルの雰囲気を重視したい人には朗報といえるだろう。街ではプレイの密度が上がっているのも印象的だった。新たな謎解きが登場しているのに加え、あちこちに停まっている車の中や店のショーウインドーにアイテムが配されており、ガラスを壊して入手できるようになった。アイテムは幾らあっても足りないため、街を探索するモチベーションも上がる。また、窓枠を乗り越えたり、塀の隙間をくぐったりといった新たなアクションも追加されており、こちらも良いアクセントとなっていた。





アパートでの探索も印象深いものだった。4K解像度による細かい描写でアパートの異常さが増しており、もう歩いているだけで恐ろしい。オリジナル版ではドアを出入りした際などにロード画面が入っていたが、リメイクではそうしたこともなく、プレイのテンポはよくなっている。クリーチャーの配置もオリジナルと違っていて、回復や弾丸がシビアであることと合わせて緊張感が途切れることはない。アパートの構造や、謎解きの答えもオリジナルから変更されており、PS2版をプレイした人でも新鮮な気持ちで楽しめるはずだ。有限のリソースをやりくりしつつ、謎解きの答えを求めて不気味な世界をさまよう感覚は、まさしくあの頃のホラーゲームといえるだろう。




試遊中は海外メディアの席から何度か悲鳴があがっており、これは没入感がいかに高いかという証明でもあるだろう。用意されていた4時間はあっという間に過ぎ去り、プレイを終えた際は自分がいかに緊張し続けていたかを実感できた。それは中だるみがなかったということでもあり、ホラーゲームとしては良質の体験であると感じられたのだ。

今回リメイクをプレイして確認できたのが、もともとの「SILENT HILL 2」がいかにすぐれていたかということと、リメイクでさまざまな部分を変えたことの勇気である。

街を覆う霧はプレイヤーの想像力を刺激し、不安にさせていく。ゴア(流血や身体欠損などをともなうスプラッタな描写)というよりは心理的な恐怖がメインとなっており、他のホラーゲームとの差別化となっている。こうした霧の中からクリーチャーが近づいてくると、ジェイムスが持つラジオからホワイトノイズが流れ出すという演出も秀逸だ。脅威の接近を伝えるゲーム的な機能が世界観を補強する方向で実装されているわけで、発売から23年を経た2024年に見ても驚かされるアイデアである。さまざまな考察ができる奥深いストーリーと合わせ、「SILENT HILL 2」は伝説として語り継がれるだけの力ある作品であることが再確認できた。



こうした「SILENT HILL 2」だけに、そのまま高解像度化する選択肢もあったはずだが、リメイクにあたりさまざまな点を変えていることも評価したい。特に大きいのがカメラ視点の変更であり、探索と戦闘、そして霧とクリーチャーの恐怖がより身に迫るものとなっている。戦闘にドッジを追加するのも相当に勇気のいる決断であったはずだが、そのかいあってアクションがよりスリリングになっていると感じられた。

今回プレイできたのはスタートから4時間ほどで、「SILENT HILL 2」の物語はまだまだ始まったばかり。それでも実際に体験できた範囲で、「SILENT HILL 2」らしい雰囲気と恐怖を楽しめるリメイクであると感じられたのだ。


(文/箭本進一)


  • 【タイトル情報】
  • SILENT HILL 2
  • メーカー:KONAMI
  • 対応機種:PlayStation5、Steam
  • 発売日:2024年10月8日
  • メーカー希望小売価格
  • スタンダードエディション:8,580円(税込)※パッケージ版はPlayStation5のみ
  • デラックスエディション:9,790円(税込)※ダウンロード版のみ
  • ジャンル:サイコロジカルホラー
  • CEROレーティング C(15歳以上)

©Konami Digital Entertainment

※画面は開発中のものです。

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