新作「九魂の久遠」レビュー 死ねば死ぬほど強くなる!?きりえ風グラフィックの2D探索アクション

2024年06月11日 17:150

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2024年5月30日、「九魂の久遠(くこんのクオン)」が発売となった。数々のアクションゲームを世に送り届けているインティ・クリエイツの新作ということで、アクションゲームファンをはじめとしたゲーマーの注目を集めていた本作。今回は、そんな「九魂の久遠」をプレイしたファーストインプレッションをお届けしていきたい。なお、今回は記事を書くにあたり、Nintendo Switch版をプレイしている。

主人公は冥界に堕ちたネコのクオン。現世の飼い主のもとに戻るための冒険が始まる!


「九魂の久遠」は、インティ・クリエイツによる完全オリジナル新作となるアクションゲームだ。インティ・クリエイツは、「蒼き雷霆(アームドブルー) ガンヴォルト」シリーズや「Bloodstained: Curse of the Moon」シリーズなど、レトロゲームを彷彿とさせるような硬派な2Dアクションゲームを得意とするイメージのあるゲームメーカーだ。本作もまた、そんな作品と同様に、絶妙な難しさと歯ごたえのあるタイトルに仕上がっている。



まずは本作のストーリーからご紹介しよう。

本作の主人公は、ネコの「久遠(クオン)」だ。飼い主の人間と共に暮らしていたクオンが、なんらかの理由で命を落とし、死んでしまったことから物語が始まる。死して冥界に堕ちたクオンは、現世の飼い主のもとに戻るために、唯一の出口である「冥界の門」を目指すのだった……。



命を落としてしまったネコが主人公だったり、冥界が冒険の舞台だったりと、神秘的で独特な世界観が特徴的な本作。そんな世界観をさらに際立たせるのは、「切り絵」のようなタッチのグラフィックだ。本作は、主人公のクオンはもちろん、クオンが冒険を繰り広げる冥界も、冥界で出会う異形の妖魔たちも、すべて美しい切り絵風のビジュアルで描かれている。まるで日本の昔話の絵本を読んでいるような、幻想的でどこかノスタルジーを感じるグラフィックは、本作の持つ世界観と非常にマッチしており、唯一無二のゲーム体験をプレイヤーに与えてくれるのだ。



攻略のカギは……“死”! 命を落とすたびに新たなスキルを覚えるユニークなシステムに注目


本作は、ネコのクオンを操作する、横スクロールタイプの2Dアクションゲームだ。「横スクロール」と書いたが実際は上下に進むような場面も存在し、マップを縦横無尽に探索していく「メトロイドヴァニア」的な構成となっている。アクションは移動やジャンプといったオーソドックスなもののほか、壁に張り付いて登ったり狭い通路を通ったりといったネコならではのアクションも存在する。また、ところどころに壁のように見えて実は進める隠し通路も存在するため、マップは隅々まで探索する必要がある。



特殊なアクションとしては「シャドウスルー」というものがある。これは、残像を描きながら素早く移動して、敵や敵の攻撃を無傷ですり抜けるというもの。連続で使用して長い距離をすり抜けることも可能だが、シャドウスルーの使用にはスタミナを消費するため、ゲージの管理には注意が必要となる。



ボスや中ボスなどの強力な敵の攻撃をシャドウスルーですり抜けると、相手の妖力を吸収して「ヒスイゲージ」というものがたまる。このゲージが最大までためれば「フェイタルスタンプ」という必殺技を発動できるようになる。これによって大ダメージを与える、というのがボス攻略の基本手段だ。避けて避けて避け続けてから大ダメージという、わかりやすいリスク&リターンが設定された仕組みとなっており、スリリングなプレイを楽しめる。



以上がネコのクオンのアクションなのだが、お気づきのとおり、実はクオンには基本となる攻撃手段が存在しない。ひたすら敵の攻撃を避けながら進んでいくタイプのゲームなのかというと、そうでもない。本作では、とある行動をとることで攻撃手段や、そのほかさまざまなスキルを獲得することができるのだ。その「とある行動」とは、ずばり「敵にやられて命を落とすこと」だ。死ぬことが攻略につながるというのはなにやら矛盾しているように感じるかもしれないが、このシステムこそが本作最大の特徴なのだ。

ただのネコであるため、クオンは一撃のダメージで命を落としてしまうのだが、このとき、奇跡の力「アニマリヴァイヴ」が発動し、動物の魂を取り込んでよみがえることができる。



死んで復活する「アニマリヴァイヴ」によって、クオンはさまざまなスキルを身につける。たとえば、「トラ」なら爪で近接攻撃ができたり、「カゲロウ」なら敵の攻撃を自動回避できたり、「カラス」なら一度だけ空中でジャンプができたりといった具合。どのスキルも便利であり心強く、クオンの冒険を進めやすくしてくれる。ただし、自分の好きなスキルを自由に選んで獲得できるわけではない点には注意が必要だ。どの動物のスキルの種類が入手できるかはクオンの“死因”と関係している。死因となった敵や環境に対抗できるスキルが発動しやすい傾向にあり、つまり、特定のスキルを手に入れたい場合は、何で死ぬかを考えなければならないのだが、ときには「強くなるために命をわざと捨てる」という選択も必要となるかもしれず、そのあたりの葛藤も本作の面白さになっている。



では、何度も何度も死ぬことを繰り返してスキルを大量にゲットすればいいのかというと、当然そうはいかない。イージーモードに該当する永魂モード以外では、基本的に9回死ぬとゲームオーバーになってしまう。これは「猫に九生あり」という言い伝えを元にしたシステムとなっていて、本作のタイトルである「九魂」もこれに由来するというわけだ。死ねば死ぬほど所持スキルが増えていき、攻略しやすくなっていくが、そのぶんゲームオーバーが着実に近づいてくるという、この絶妙なヒリヒリ感がたまらない。この、ゲームの根幹部分に備わった大きなリスク&リターンのプレイ感は、他のゲームではなかなか味わえない、本作ならではの独特な魅力といえる。

「業魔形態」に変身すれば戦闘能力が大幅アップ! さらなる凶暴化を遂げた「九魂逢魔形態」も!


命を落として魂の力を獲得するアニマリヴァイヴを一定回数繰り返すと、クオンはヒトの魂を取り込んで「業魔(ごうま)形態」に変身する。この形態になると、体格がヒト型に変わり、ネコ型のときと比べて攻撃力と耐久力が大きく上昇する。一度の攻撃で魂を失っていたネコ形態とは違い、何度か攻撃に耐えることができるようになるので、攻略はグンとスムーズになる。



そのいっぽうで、ネコの姿を失ったことにより狭い隠し通路を通ることができなくなり、さらにシャドウスルーも使えなくなってしまうというデメリットが生まれる。これにより、ステージを攻略するための方法が真っ向から進んでいくしかなくなる。そのほか、業魔形態では、ヒスイゲージの初期値が増加したり、強力な動物スキルを入手しやすくなったりといったことも発生するため、より戦闘に特化したプレイ感覚となり、ゲーム性に変化が生じる点が面白い。

ちなみに、ステージ中のマーキングポイントで採取したり、敵を倒すことで獲得できる「ホープポイント」が一定数以上あれば、業魔形態への変化をキャンセルすることができる。変化にあらがってネコ形態を続行するか、それとも業魔形態への変化を受け入れるかという判断も攻略のカギとなってくるわけだ。



命を落としてアニマリヴァイヴを繰り返し、ついにラストの九魂へと到達すると、クオンは「九魂逢魔(くこんおうま)形態」という特別な形態へと変身する。最凶の妖魔獣人という禍々しい肩書どおり、見た目も迫力満点のこの形態では、戦闘能力のすべてが解放され、ザコ敵であればたった一撃で撃破することができてしまう。さらに、いくつかのスキルのヒスイゲージやスタミナゲージの消費が軽減されるので、これまでの形態とは比べ物にならない勢いで暴れまわることができる。

とはいえ、ダメージを受けないわけではないので、ボスなど強敵との戦いではしっかりと慎重に立ち回る必要がある。また、ネコ形態から業魔形態への変身はキャンセルすることが可能だったが、九魂逢魔形態への変身はあらがえない点にも注意が必要だろう。まさに「背水の陣」で「火事場の馬鹿力」的なアクション体験ができるシステムといえる。



そのほか、特筆すべきシステムとしては「久遠強化」が挙げられる。これは、冥界の各地で手に入る九魂石とホープポイントを消費することで、クオンの持つさまざまな能力を強化できるもので、メニュー画面から開いていつでも強化することができる。たとえばシャドウスルーの消費スタミナが減少するものや、スキル「トラ」の攻撃範囲が広がるもの、ホープポイントの入手量が増えるものなど、その効果は多岐にわたる。また、ボスキャラの妖魔獣人から入手できる「獣人石」を用いる特別な「獣人石強化」というものもある。これらは、攻略の手助けであるとともに、ゲームのやりこみ要素としても機能している。


「九魂の久遠」の唯一無二のプレイ感は、大いに体験する価値アリ!


というわけで、「九魂の久遠」のレビューをお届けした。

 

「死を繰り返すことでスキルを獲得していく」というユニークなシステムによって、これまでのアクションゲームとは一線を画す独特の緊張感と爽快感が楽しめる本作。ほかに類を見ないシステムであるがゆえに、やや複雑で覚えることが若干多い点は否めないが、さまざまなゲーマー、特にアクションゲームファンはぜひプレイして、この新鮮な感覚を体験していただきたい。

  • 【タイトル情報】
  • 「九魂の久遠」(インティ・クリエイツ)
  • 発売日:2024年5月30日
  • 対応機種:Switch、PS5、PS4、Xbox One、Xbox Series X|S、Steam(PC)
  • 価格:
  • ダウンロード版:4,280円(税込)
  • パッケージ版:
  • 【通常版】5,280円(税込)
  • 【限定版】9,980円(税込)
  • 公式サイト:https://umbraclaw.com/jp/
百壁ネロ

百壁ネロ

ゲーム買いすぎちゃう系ライター。現在積みゲー300本以上。小説家でもあります。著作は「轟運探偵の超然たる事件簿 探偵全滅館殺人事件」(星海社)、「ゆびさき怪談 一四〇字の怖い話」(PHP研究所)など。
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