「アサシンクリードミラージュ」クリアレビュー!「アサクリ」歴15年のファンが語る、「ミラージュ」5つの魅力──「原点回帰」路線は、はたして成功だったのか!?

2023年11月04日 19:000

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ユービーアイソフトの人気シリーズ「アサシンクリード」最新作、「アサシンクリードミラージュ」が発売されてはや1か月。ようやく本編をひと通りやりつくしたので、全てのストーリー、クエストを攻略した状態でのレビューをお届けしよう。

「アサシンクリード」は、アサシン教団に属するアサシン(暗殺者)と世界の人々を裏から操ろうとする秘密結社・テンプル騎士団の暗闘を描くステルスゲーム。プレイヤーはアサシンである主人公を操作し、ターゲットを探し出し暗殺することが目的となる。

説明すると非常にシンプルだが、本シリーズの特徴は古代から近代にかけて、作品ごとにさまざまな時代を舞台に、緻密な歴史考証のもと忠実に再現された世界各地の都市や史跡を探索できる点にある。

その舞台は、古くは紀元前5世紀頃のギリシアから、紀元前40年のエジプト、9世紀のイングランド、中世のイタリア、アメリカ独立戦争、フランス革命、19世紀のロンドンとまるで人類の歴史をたどるかのよう。登場人物には史実の人物も多く、プレイヤーは歴史の生き証人として数々のドラマを体験することになる。

 

そんな歴史好きにも刺さるところの多い「アサシンクリード」シリーズも、2022年で15周年を迎えたということで、この区切りのタイミングで第13作目となるシリーズ最新作「アサシンクリードミラージュ」が、2023年10月5日にリリースされた。

本作のコンセプトは「原点回帰」! 公式サイトでも宣言されているこのコンセプトを、第1作からリアルタイムで遊び続けているアキバ総研編集Aが検証しながら、本作の魅力を語っていきたい。

 

 

■魅力1 舞台は原点回帰のアラブ社会!

 

「アサシンクリード」第1作の舞台となったのは12世紀の中東。中世のアラブ社会という、歴史好きの心をくすぐる設定と、過酷な生活環境と厳しい宗教観によってもたらされるハードなストーリーが魅力であった。

先述の通り、その後シリーズはさまざまな国、時代が舞台となるわけだが、やはり第1作をプレイしたファンにとっては、「中世のアラブ社会」が、もっとも「アサシンクリード」らしいと思うのではないだろうか。

 

そこで今回の「ミラージュ」だが、舞台は9世紀の大都市バグダッドとその周辺地域となる。イスラム帝国の中心として大いに栄えた街を舞台に、結社の陰謀、権力を求める野心家、成り上がろうともくろむ者、ひたすら知識を求めようとする者などの、さまざまな思惑が複雑にからみ合っている。

敵味方問わず、過酷な時代を生きるために必死にあがく姿。そこに熱い人間ドラマが生まれる点は、「アサシンクリード」シリーズを通して変わらない重要な要素だが、やはり中世アラブ社会が舞台になると「アサシンクリードってこういう感じだよね!」と思うのは筆者だけではないだろう。

  

また、あまりなじみのない中世アラブ社会を歩き回るのも、見知らぬ土地を観光するような楽しさがある。シリーズ定番の、史跡や当時の文化に関するデータベースも充実。ゲームを遊んでいるうちに、麻生の歴史に詳しくなること間違いなしだ。

 

この点は、「原点回帰」でありながら、これまでのシリーズが培ってきたバーチャル観光旅行ソフトとしての充実ぶりが共存している要素だと言える。

 

■魅力2 ただの若者がマスターアサシンへと成長する人間ドラマ

 

今回の主人公の名はバシム。前作「アサシンクリード ヴァルハラ」に登場したマスターアサシン・バシムの若かりし頃の姿である。スタート直後はいかにも貧民街出身の思慮の浅い青年といった風体の彼だが、自分が犯した失態で街の人々が虐殺され、みずからも追われる身となる。その結果、アサシン教団にかくまわれ、過去を捨ててアサシンとして新たな人生を歩むこととなる。

 

若さゆえの無鉄砲さから大きな罪を背負ったバシムが、人として、アサシンとして成長していくドラマはなかなかに見ごたえがある。絶妙なのが、シナリオの進行にあわせてスキルが徐々に解放されていく点だ。人間的な成長とアサシンとしての成長が連動し、アクションの幅が広がっていくのは、ストーリーを進めるモチベーションにもなる。

 

本作のストーリー自体は比較的シンプル。バグダッドを裏から支配しようとする結社の黒幕にたどり着くため、結社の構成員を見つけ出し、彼らを暗殺しつつ情報をかき集めるというものだ。ストーリーが進展すると、少しずつ「調査」画面の人物情報やトピックが解放されていき、次第に中央に位置する黒幕に向けて線がつながっていく。このあたりは、まるでサスペンスドラマを追いかけているかのような面白さがある。

 

 

また、絶妙なのがバシムを演じる声優・KENNさんの演技である。序盤のバシムは本当に覇気がないというか、頼りない兄ちゃんといった趣なのだが、数々のミッションをこなしていくうちに徐々に芯のある、太い大人の声に変化していくのである。

そして大きな試練を乗り越えた果てにたどり着いたラストシーンでは、一人前のアサシンらしい自信に満ちた声となっていたのには、ちょっと感動してしまった。

 

 

また、久々にシリーズの重要人物「デズモンド・マイルズ」の名前が劇中に登場したのにも感動。これはシリーズ序盤から遊んできたプレイヤーほどグッとくる要素ではないだろうか。こういうシリーズファン向けの要素だったり、「ヴァルハラ」とのつながりがあったりすると、初心者お断りというイメージを抱かれるかもしれないが、特に前作までをプレイしてない人でも、「ひとりの若者の成長譚」として楽しむことができるので、ご安心を。

 

むしろ「ミラージュ」を遊んで、「これはどういうことだろう?」と疑問に思われた方は、気になるタイトルから過去作をプレイしていただきたい。

 

本作は、そんなシリーズ初心者に向けて作られた、「もうひとつのシリーズ第1作」のような位置づけと言っても過言ではない。

 

■魅力3 格上の敵ともテクニック次第で渡り合えるステルスアクション!

 

「アサシンクリード」のアクションゲームとしての魅力といえば、何はなくともステルスアクションからの暗殺アクションである。敵の行動ルートを把握し、周囲を索敵し、一瞬の隙をついて暗殺! その後は追手を振り切り、一般市民に紛れてやり過ごし、敵の警戒が解かれたタイミングで再び天下の往来に足を踏み入れる……。

この抑圧と解放の絶妙なバランスこそが、本来持っていた「アサシンクリード」シリーズの肝である(と断言しよう!)。

 

 

しかし、第10作「アサシンクリードオリジンズ」から前作「ヴァルハラ」までは、経験値の蓄積でステータスが上昇していくRPG的なレベル制を取り入れたことで、指先のテクニックや戦略に頼らずともキャラクターを鍛えていけばある程度は敵を倒していけるようになった。そのため、「アサシンクリード」シリーズでは基本的に推奨されなかった多人数の敵との大立ち回りも、キャラクターを鍛えまくれば可能となってしまっていたのである。

そうなると反比例して減っていくのが、アサシンらしい隠密行動である。前作「ヴァルハラ」にいたっては、血気盛んなバイキングが主人公となったことで、むしろ隠密行動を取ることのほうが少なくなってしまうという事態になってしまった。

 

 

そこで本作である。「ミラージュ」は「原点回帰」をうたっているだけあって、「オリジンズ」以前のスタイルに回帰。武器のグレードアップとスキルの追加で主人公・バシムを強化していく成長システムを採用している。

また、戦闘も基本的に物陰に潜み、敵の死角から攻撃するステルスアクションが主体。シリーズ恒例の草陰や物置、干し草の山などに身を潜め、近づいてきた敵を引きずり込んで抹殺したリ、高い位置から飛び降りて暗殺するエアアサシンは、今回もいたるところで大活躍する。暗殺が成功すると、ほとんどの敵を一撃で殺すことができるのは、シリーズ初期を思い起こさせる。

 

そのほか、遠くの標的にダメージを与えたりオブジェクトを破壊できる投げナイフや睡眠、毒効果などを付与できる吹き矢、爆音を鳴らして敵の気を引き付ける騒音爆弾や、目くらまし効果のある煙幕などのサブウェポンも豊富。バシムのスキルが上がっていくとサブウェポンの改造もできるようになり、騒音爆弾に発火能力を付与して攻撃武器に転用したり、煙幕に体力回復能力を付与させたりと細かいカスタマイズができるようになる。

組み合わせによっては、敵に気づかれることなく一方的にダメージを与え続けることができるバランスブレイカーぶりを発揮するものもある。

各プレイヤーのスタイルに合わせて、使いやすい組み合わせを探していただきたい。

 

 

反対に、どれだけ武器のグレードが上がり、スキルが充実しても体力の最大値が増えるようなことはないし、劇的に攻撃力や防御力が上がることはない。戦闘時のアクションやステルスアクションが有利になる程度で、ゲームの基本はやはり暗殺である。

時には敵と真正面から戦闘に及ぶこともあるが、どんなにこちらが装備を充実させたとしても4人以上相手にすると、わりとあっさり取り囲まれて袋叩きにあってしまう。でもこれでいいのだ。アサシンは、大立ち回りを演じるべきじゃないのだ。

 

 

ゲームシステム的には、「アサシンクリード」シリーズ初期のスタイルに立ち返りつつ、より遊びやすくブラッシュアップしているという点で「原点回帰」でありながら「最新バージョン」とも言える仕上がりとなっている。

 

■魅力4 あっという間に敵を皆殺し! 最高に気持ちいい新システム「暗殺の極意」

 

本作最大の魅力と言ってもいいのが、新たな戦闘システム「暗殺の極意」だ。

「暗殺の極意」は、R3ボタンを長押しして発動。一度発動すると時間の流れが遅くなり、視界に入っている敵を一掃できてしまうという必殺アクションである。

またかなり離れた距離も一気に詰めて暗殺してくれるので、状況によっては高速移動手段としても使えてしまう。これはかなり便利な機能である。

これがうまいこと決まると、めちゃくちゃ気持ちいいし、カッコイイ。きっと皆さんの中二心を刺激すること必至だ。

 

 

 

「暗殺の極意」があることで、ひたすら敵の隙をうかがう「待ち」のプレイスタイルから、一気呵成(いっきかせい)にアクションを起こす「攻め」のプレイスタイルにシームレスに移行することができる。このメリハリは「ミラージュ」ならではの魅力だ。ここぞというタイミングで発動させて、必殺仕事人的なカタルシスを味わっていただきたい。

 

もともと「カッコよくターゲットを葬るアサシンの活躍」を描いていた「アサシンクリード」シリーズだけあって、この新たなシステムの登場はうれしいところ。「これこれ、こういうのが見たかったんだよ!」とニヤニヤしてしまうこと必至だ。

 

■魅力5 ちょっとがんばれば達成率100%に! ちょうどいいサイズのフィールドとストーリー

 

今回の舞台となるのは、先述の通り大都市バグダッドとその周辺地域だ。同心円状に建物が配置されるバグダッドの街は、外周部の3つのエリアと、中央部分に位置する円形都市の4エリアで構成。そこにバグダッドの北側、西側にある砂漠地帯、南東側の湿地帯をひっくるめた荒野の、計5エリアが今回のフィールドとなる。

北アメリカ大陸、カリブ海、北欧の海域、エジプト一帯と、タイトルを追うごとにフィールドのスケールが大きくなってきた「アサシンクリード」シリーズからすると、拍子抜けするほどコンパクトな舞台である。

 

 

 

しかし、このサイズ感がちょうどいいのである。従来の「アサシンクリード」シリーズで宝箱などの探索要素をコンプリートしようとすると、広大すぎるフィールドゆえに探索要素が膨大な量になり、マップの隅から隅まで恐ろしいほどの時間をかけしらみつぶしにせねばならなかった。それが「ミラージュ」だと、ちょっと根気よくフィールドを歩き回り、数々のミッションで体得したテクニックを駆使すれば、結構簡単に探索要素を埋めていくことができる。

 

 

実際に、筆者もそう苦労することなく探索要素をコンプリートできたことからも、仕事や学業で忙しい現代人的にはまさしくちょうどいい広さとボリュームのフィールドと言える。探索要素が全て埋まった時の達成感は、なかなかのものだった。

やりこみ要素のボリュームをただ増やすのではなく、大多数のプレイヤーがちょっとがんばれば達成できる量に設定する設計は、近年のコンシューマゲームの傾向である。トレンドを敏感に取り入れていることがうかがえる。

 

 

また、「うまい」と思わせられたのが、こうやってゲーム内の街を行ったり来たりさせることで徐々に舞台となるフィールドに愛着がわいてきて、「もっとこの街で戯れたい」「もっといろんなイベントを見てみたい」という気持ちになってしまった点だ。

そのおかげで、全てのイベントを消化し、全サブクエストをコンプした後でも、毎日必ずゲームを起ち上げ、目的もなく街を散策する日々である。

こうなってくると、DLCの追加エピソードを期待したいところだが、「ミラージュ」ではその予定はないそうで、それについてはただ残念なばかり。

 

フィールドがコンパクトになったことで、必然的にストーリーもこれまでのシリーズのように重厚長大なものから、ある程度小ぢんまりとまとまった仕上がりとなっている。

もともと発売前より、本作はそれまでのような100時間オーバーの大作ではなく20時間程度でクリアできるボリュームとアナウンスされていたが、これを「時間のない現代人のライフスタイルに合わせた仕様」と見るか、「単なるボリュームダウン」と見るかは人次第。個人的にはお手軽に歴史観光をして、カッコよく立ち回るアサシンを操作して……という「アサシンクリード」の持ち味をライトに楽しめるという点ではよかったのではないかと思っている。

願わくば、次回作は今回の結果をフィードバックした大作を期待したいところではある。

 

というわけで、「アサシンクリード」シリーズを愛してやまない筆者が、5つの魅力にポイントを絞って最新作「アサシンクリード ミラージュ」について語ったわけだが、ひとまず言えることは、シリーズのファンはもちろん、「アサシンクリード」シリーズ未経験の方もぜひプレイしていただきたい一本ということだ。

 

 

ステルスアクションゲームとしてシリーズを重ねる中で、集団戦や海戦、コミュニティ構築など、さまざまな要素が足されていき、ついにはステルスしなくてもクリアに支障のないRPGスタイルへと変貌していった「アサシンクリード」シリーズ。それは、シリーズとして存続していくための生存戦略であったのと同時に、「アサシンクリード」らしさを徐々に喪失していく過程でもあったと言える。個人的には、前作「ヴァルハラ」はその局地ともいえるタイトルで、「アサシンクリード」らしさとは何か、が問われる問題作だったと思っている。

そんな模索と迷走の果てにたどり着いた最新作「アサシンクリード ミラージュ」は、再び「アサシンクリード」らしさとは何かを見つめ直し、いま一度シンプルなステルスアクションゲームとしてシリーズを再定義した一本と言える。本作を経た「アサシンクリード」シリーズは、今後どのような展開を見せるのだろうか。

 

「新たな世界へ」という、エピローグの最後にバシムが語ったモノローグを噛み締めつつ、そんなことを考えさせられた。

 
【ゲーム情報】
アサシンクリードミラージュ

対応プラットフォーム:PS5/PS4/Xbox Series X|S/Xbox One/PC(Epic Games/Ubisoft Store)
発売日:2023/10/5
ジャンル:アクション
価格:6,600円(税込)
メーカー:ユービーアイソフト

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