遊ぶこと、つながること。多くの思いが込められた傑作「DEATH STRANDING」をレビュー

2019年11月14日 14:200

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2019年11月8日(金)に、PS4(R)向けタイトル「DEATH STRANDING(デス・ストランディング)」が発売された。「メタルギア」シリーズで知られる小島秀夫監督の独立後初の作品ということ、ノーマン・リーダスやマッツ・ミケルセンを始めとする名優たちを起用していることなどから、かねてより注目を集めていた。今回は、そんな本作のレビューをお届け。物語に直接関わるネタバレはないが、掲載している画像には物語後半のものもあるので、そこは注意してほしい。

崩壊した北米大陸をつなぎ直し、分断された人々に物を届ける



本作の舞台は、「デス・ストランディング」現象により壊滅的な被害を受けた北米大陸。以降の世界は「あの世」とつながってしまい、各地には触れたものの時間を奪う「時雨(ときう)」が降り、「BT」と呼ばれる、死の世界の存在が徘徊している。人々は建物にたてこもり、外の脅威におびえていた。主人公のサム・ポーター・ブリッジズは、アメリカ合衆国再建を掲げる組織ブリッジズの要請を受け、大陸西部にある「エッジ・ノット・シティ」に捕らわれた次期大統領候補、サマンサ・アメリカ・ストランド(アメリ)の奪還と、分断された北米大陸をつなぎ直すための旅に出る。


そんな本作の軸となるのが、「配達」。託された何かを、どこかの、誰かに届けるのが、基本的な流れになる。食料や薬品を始め、雑貨、資源など、サムは頼まれればあらゆる荷物を運ぶ。本作には重心の概念が存在しているため、背負ったり、腕や脚のハンガーに装着したり、あるいは手に持ったりと、運び方も重要になる。荷物が偏れば、歩いている最中にバランスを崩しやすくなり、最悪、転んでしまう。そうなれば荷物も落としてしまい、ケースや中身が傷つく。荷物の状態は、配達完了時の評価に影響する。届けた荷物がボロボロであれば、低評価になってしまう。


ただ、荷物の装備画面で△ボタンを長押しすれば自動で配置を最適化してくれるため、プレイしていて面倒くさいと感じたことはなかった。かりにバランスを崩しても、R2やL2を押すことで持ち直せる(つまり、R2とL2を押し続けていれば、安全に移動できる)。また、荷物自体は、転んだときや、敵に攻撃されたときにしか落ちないため、移動中は荷物の位置に気を使う必要はない。荷物を落としたことで発生するダメージも基本的に梱包ケースが吸収してくれるため、中身が直接傷つくこともほとんどない。スピードを重視するミッションなどもあるが、重心にさえ気を付ければ、受取人からの評価も大抵はSランクになる。所持重量が重いほど移動は遅くなり、体勢を崩しやすくなってしまうが、物語を進めていくとバイクやトラックも使えるようになるため、数百キロはあるような荷物も一度に運べる。


配達ルートの開拓も重要だ。本作の北米大陸は荒廃しており、断崖や岩場、水深の深い川など、多彩な地形が待ち受ける。梯子やロープといった装備を使い、危険だが目的地までの最短ルートを通るもよし。あるいは、ちょっと遠回りになっても、安全な場所を通ってもいい。装備の開発には、「カイラル結晶」や金属、樹脂にセラミックといった各種資源が必要になるが、求められる量はどれもそこまで多くはなく、各拠点で得られるものだけで十分足りるため、配達のためのルートづくりに集中できる。マップはいつでも確認できるうえ、目印となるマーカーを置くことも可能。サムの重心や荷物の配達ルートの開拓など、考えることは多いが、同時に広大なマップで迷わないための要素もしっかり用意されている。


つながりを断とうとする存在、ミュールとBT



「ミュール」や「BT」といった存在もまた、荷物を届けるうえで大きな障害となる。ミュールは、「配達依存症」と呼ばれる病気にかかった者たちで、サムを含めた配達人を無差別に襲い、所持している荷物を狙ってくる。本作の目的は荷物の配達であって、戦闘ではない。配達ルート上では、なるべく避けるのが得策。その気になれば、1度も戦わずにエンディングまで到達することも可能だ。


ただ、殴ったり、縄の武器である「ストランド」や、ワイヤーを射出する「ボーラガン」を使えば、彼らを無力化することもできる。筆者もプレイ中、拠点にいるミュールたちを何度か全滅させた。全員を無力化すれば一時的に一帯のミュールが活動しなくなるため、安全に荷物を運べる。腕に自信があれば、試してみるといいだろう。


時雨が降る場所には、BTが現れる。いくつか種類があり、人型の「ゲイザー」は周囲を徘徊し、呼吸や足音から、サムを探そうとする。このゲイザーが近くにいると、サムの左肩に備わった「オドラデク」が起動し、ゲイザーとサムの距離などを教えてくれる。基本的には不可視だが、近くで立ち止まることで、黒いもやとなって視認できる。非常に厄介だが、オドラデクの動きに注意すれば、発見されることはあまりない。見つかっても、息を止めてゆっくり歩けば逃げ切れる。


ゲイザーと接触してしまうと、周囲に黒い液体が湧き出るとともに「ハンター」が出現。ハンターは、サムを引きずり込もうとする。黒い液体から離れることができれば振り切れるが、引き倒されると、「キャッチャー」がいる場所までさらわれてしまう。キャッチャーは強敵で、サムの血液を使った「血液グレネード」などの特殊な武器でないと、ダメージすら与えられない。また、戦闘中はつねに時雨が降っているため、キャッチャーを倒しても、そのあいだに野ざらしにされていた荷物は劣化している。報酬として大量のカイラル結晶は手に入るが、それ以上にリスクが大きいので、戦うのはあまりオススメできない。キャッチャーと戦闘になっても、一定の範囲から抜ければ逃げることができるため、個人的には、そちらをオススメしたいところ。




ソーシャル・ストランド・システムで世界とつながる



各拠点で、サムは「Qpid」という装備を使い、通信インフラである「カイラル通信」を繋いでいく。このカイラル通信が繋がっているエリアでは、本作の肝「ソーシャル・ストランド・システム」が適用される。「DEATH STRANDING」を遊んでいる人たちのプレイ状況が、自分やほかの世界にも反映されるのだ。それまで何もなかった場所に、通信が繋がると同時に出現する大量の設備は驚きのひと言に尽きる。


かけた覚えのない場所に橋がかかっていたり、立てた覚えのない看板が立っていたりと、どのような変化があるかは、目の当たりにした本人しかわからない。設備を共有すれば、配達が楽になるのはもちろん、どこかの誰かがリアルタイムで遊んでいて、その人もひとりで大陸を横断しているのだとわかり、勇気づけられる。


共有している設備には、「いいね」を送ることができる。いいねを送られた人は、嬉しくなる。それだけだ。だが、嬉しくなれば、見えない誰かのためにまた設備を建てようと思える。そうしたつながりが強くなり、互いに助け合っていけば、配達もさらに楽になるし、楽しくもなる。私は、利用した設備には可能な限りのいいねを送るようにしている。「1いいね」より、「100いいね」のほうが嬉しいはずだ。本作を遊ぶ際は、できるだけオンラインにつないでほしい。「PS Plus」への加入は不要なので、誰でも恩恵を受けられる。


なお、このシステムはすでに説明した通り「カイラル通信が繋がっている」ことが前提なので、初めて行く土地は、まず自力で踏破する必要がある。逆をいえば、行くところすべてほかのプレイヤーの設備で道が整えられているということにはならないので安心してほしい。

当たり前を考える、やさしいゲーム



本作は、ほかのゲームでは真っ先に効率化されるであろう「移動」という要素を突き詰めた作品だ。私のクリア時間は50時間弱ほどだったが、そのほとんどは配達のための移動が占めている。本作は荷物を運ぶうえでのシステムは非常に作り込まれている反面、配達自体の効率は悪い。大半が歩きで、バイクやトラックを使うにしても、悪路の走破には時間がかかるからだ(物語の途中でファストトラベル機能も開放されるが、移動時に荷物は持っていけない)。

反面、時間と手間をかけるほど、待っている人に荷物を届けたときの達成感も大きくなるし、お礼をいわれれば嬉しくもなる。だが、ゲーム内通貨や、貴重な武器・防具が手に入るわけではない。ソーシャル・ストランド・システムのいいねと同じく、無償の奉仕だ。そこに、いかに意味を見出せるかが本作の評価の分かれ目になる。快適さを第1に考えるなら、ひたすら大陸を移動する本作は冗長的で、テンポも遅く、ゲーム性が希薄で退屈な作品ととらえられるだろう。


インターネットで世界と24時間繋がり、頼めば明日にも物が届く現代では、ひとりで断崖や渓谷、雪山を乗り越え、孤立した人々に荷物を届けることは考えられない。「デス・ストランディング」では、あらゆるつながりが断たれていて、そのおかげで、つながっていることの大切さに気づくことができる。ソーシャル・ストランド・システムでプレイヤーと助け合い、いいねを送って、互いに賞賛することもできる。ゲームでは半ば常識となった「人殺し」もする必要はない。筆者にとって本作は、現実世界やゲームの当たり前を見直し、その在り方を考えさせてくれた、やさしいゲームだった。


(文・夏無内好)

【商品概要】
■DEATH STRANDING(デス・ストランディング)
ジャンル:アクション
対応機種:PlayStation(R)4 、PlayStation 4(R)Pro
発売日:現在発売中
価格:
・Blu-ray Disc版
通常版 希望小売価格:6,900 円(税別)
スペシャルエディション 希望小売価格:7,900円(税別)※数量限定
コレクターズエディション 希望小売価格:20,900円(税別)※数量限定
ダウンロード版
通常版 販売価格:7,590 円(税込)
デジタルデラックスエディション:販売価格 9,790円(税込)
CERO:D
発売元:株式会社ソニー・インタラクティブエンタテインメント
開発:株式会社コジマプロダクション

(C)2019 Sony Interactive Entertainment Inc. Created and developed by KOJIMA PRODUCTIONS.

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