後に少女革命ウテナで独特の世界を築く幾原監督の、初劇場作品。
既にTVにおいては、女児向け作品としては大ヒット作として少女戦士物の元祖となった「セーラームーン」ではあったが、よもやここまでの傑作が生み出されるとは予測できず、軽い気分で話のネタに覗いてみたらガチ泣きせざるを得なかった。
TVシリーズ2期前半に当たる「魔界樹編」(原作に無いアニメオリジナル)をベースに凝縮した、新規の物語でありながらTVシリーズ2年分の集大成でもある。
物語は月野うさぎを中心とした仲間達との絆を中心に描かれる。孤高の天才であったり、強い霊感の巫女であったり、武闘派のアウトローであったり、セーラーVであるが故の孤独であったり、そんな各々の事情で世間から孤立していたのを、うさぎとの関わりで救いを見いだしたセーラー戦士達。幼き頃に交通事故で両親を失った孤独を、当時まだ幼いうさぎと出会うことで癒された地場衛。
前世からの役目ではなく、今結ばれたこの絆を守るために互いに命懸けで庇い合う。その想いが終盤最高潮に達しクライマックスを迎える。
5人のセーラー戦士CVが歌う主題歌「Moon Revenge」は数あるセーラームーン楽曲の中でも最高峰の一作だが、クライマックスシーンに流れるこの歌と画像の相乗効果は極めて高度な演出の賜物と言える。
また、細部においても第1シリーズ時代のセーラー戦士達の技を状況に応じて使いこなしたり(しかもバンクではなく新規作画で)、日常のコメディ部分も小気味よく躍動感ある動きで描かれたり、ストーリーの展開もテンポ良く、極めて完成度の高い映画である。