YOU44さんの評価レビュー

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アイデンティティとポジショナリティ

観賞手段:テレビ
「同棲時代」「タクシードライバー」
「あさってダンス」「高校教師」
「恋は雨上がりのように」「万引き家族」
そんな作品を思い出す

「神待ちJKの居座りご奉仕生活 
家出少女は何でもしてくれる」
そんなアダルト書籍もあるらしい。
詐欺師なんてみんな「いい人」だ。
悪い大人がJKをクイモノにする

さてこの先入観をどう翻すか。
それがこのアニメの第一義だ。
番組のCMにこうある
「あなたに会えてよかった
さえないサラリーマンと家出女子高生がつぐむ
ほのぼのとして、もどかしくて、あたたかい日常」
ほんとにそうなのだろうか。
主人公の吉田は決してさえなくはない。
どちらかというと福山イメージのイケメンだ。
巷にある未成年の誘拐、拉致、監禁犯罪って
男側の一方的な勘違いが原因のように思う。
吉田が沙優(さゆ)に携帯を買い与えた時
「優しい」は違うだろうと思う。
沙優の「吉田さん専用だね」の言葉に
顔を赤らめるのもやはり違うと思う。
「出会った」のはロマンチックな恋愛からではなく
女性側の急場をしのぐ「誰でもよかった」だ。
相手は立場の弱い、未熟な未成年。
そこに選択肢の余地はなく、既に政治的だった。
現実を擦り替えてはいけない

「あんた、あの子を救った気になって
気持ちよくなってるってわけか」
「言っておくけど、僕もあんたも
保護者の同意がない時点で犯罪者だからね」
「正義感オナニー野郎」
そう恭弥は言う

余談だが番組の合間に
角川スニーカー文庫
『飛び降りようとしている女子高生を
助けたらどうなるのか?』のCMが流れる。
「#とびじょ」だそうだ。
キャッチフレーズはこう
「失意の底に落ちた女子高生との
幸せな同居生活が始まる」
「生きてる意味ないですから」
「死ぬくらいならさ 俺の彼女になってくれ」
「お願いしますね 私の彼氏さん」
この二作は似ている。五十歩百歩のロジック。
「まだまし」という悪魔の選択。
「優しさ」で隠した巧妙な権力。
闇を隠してバラ色に描くのは
大人の、男社会のズルさだ

「ひげを剃る」「女子高生」「拾う」
どう考えても怪しく思えてしょうがない。
「いままでの人は…」と沙優(さゆ)が言うと
悲しくなる。対価として体を提供してきたのだ。
心が凍る。
「金がない 住む場所もない
じゃあ男を誘惑しようとかいう
ばか極まりないお前の思考をたたき直してやる」
「どうしてこいつは
まっとうな青春をして
まっとうに恋をして
そういう風に生きられなかったんだ」
「どうしてこいつは
こうも残念な大人たちにばかり
価値観を作り込まれちまったんだ」
吉田は間違っていない。
でも家出女子高生を部屋にお持ち帰りする
独身男性って多分皆同じ穴のムジナだろう。
ヤバい妄想という底なしのドロ沼。
家出の裏には貧困だの格差だのDVだの
虐待だの手に負えない分厚いリアルがある。
「思い出したくない過去がある」
と沙優は言う。
そこをフィクションで楽園にするのは
安易だろう。
『彼女、お借りします』はレンタル彼女が題材で
もやもやを超越する内容を期待したが
ちょっと難しかった。
軽微な風俗でさえそうなのだ

ただ今作に希望があるとしたら
小説が原作だということ。
ドジっ子だと思ってた三島は
意外と「得るものがある」が口癖で
映画の後「運命の出会いは後で分かる」と言う。
第3話で吉田は「フェアじゃなかった」と認める。
「所有」ではなく「関係」。
センシティブでシュッとした展開だ。
絵もきれいで可愛い。
題名もセンスがある。
ヤバさとピュア。リアルとロマン。
その境界線上に面白さと楽しみと美しさはある。
そして多分救いも。
夢物語、綺麗事で済ませてはいけない。

「星空に比べたらうちらなんてちっちゃ過ぎて
誰の目にも止まらない位だろうけど」
「ちゃんと一人ひとり歴史があって未来があって
精一杯やれる範囲で生きている」
「ぜったい生きはあるよ、大丈夫」
アサミが沙優に言う。
OP空から沙優がスエットで降りてくる所と
ED二人が大きな木の下で空を見上げるシーン
が好きだ
YOU44
YOU44
ストーリー
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作画
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キャラクター
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音楽
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オリジナリティ
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演出
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声優
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満足度 4.0
いいね(0) 2021-06-03 04:41:25

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