ライター 箭本 進一さんの評価レビュー

»一覧へ

和と洋がせめぎ合う、戦国時代のバットマン

観賞手段:ビデオ/DVD
ネタバレ
バットマンと仲間はヴィラン(敵、悪役)の実験に巻き込まれて、戦国時代の日本へタイムスリップ。そこではバットマンの宿敵である、ジョーカーにハーレイ・クイン、ポイズン・アイビー、デスストローク、ペンギン、トゥーフェイスらが戦国大名となって戦いに明け暮れていた。遅れて到着したバットマンは彼らと戦うもあえなく敗れ、頼みのハイテク装備を失ってしまう。巨大ロボに変形する城を駆るヴィランどもに、バットマンはどう立ち向かうのか?
アメコミのバットマンを日本のアニメスタジオが手がける上で、武器としたのは日本的な要素だった。日本を舞台とした上で、バットマンやヴィランたちのデザインも戦国時代を思わせるものとし、さらには日本の城がロボットに変形・合体するのだから、思いつく限りの日本をブチ込んだ感がある。
「世界で戦うためにどうすべきか」というのはアニメやゲームなど現代の日本エンターテイメントが取り組むべき大きなテーマ。海外へ過剰に寄り添ってピンぼけになる作品も多い中、本作はアメコミの代名詞であり80年以上の歴史を持つ「バットマン」に日本的な要素を入れまくったわけで、まさに英断といえる。単にデザインを日本的にしただけでなく、「バットマン」をリスペクトした姿勢もポイント。バットマンとジョーカーのディープな関係性や、気ままに力を振るうヴィランとヒーローの義務や不殺主義に縛られるバットマンといった「バットマン」らしさは本作でも踏襲されている。日本アニメっぽいと同時にちゃんと「バットマン」であるというわけで、ファンも納得できるだろう。
中でも圧巻は、ヴィラン大名が操る城ロボと、無数のサルが合体した巨大バットマンのバトルだ。城ロボは日本の城が合体して一体の巨大ロボになる、二重の意味で日本的な敵。これと戦うのは、「バットマン」の生みの親であるボブ・ケイン氏が創造したオリジナル版の姿をした巨大バットマン。映像のワンダーが素晴らしいのに加え、和と洋がせめぎ合うわけで、様々な意味で本作を象徴するシーンといえる。また、記憶を失ったジョーカーとハーレイ・クインが農民になり、二人が土と暮らす喜びと苦悩、日本的な農村の美しさを情念たっぷりの手描きアニメで表現したセクションも凄まじい。アメコミ原作のアクションCG映画を見ていたはずが、いつの間にか日本的な情念と日本的な作画力の渦中に呑み込まれていたというわけで、海外のファンたちも良い意味で唖然としたのではないだろうか。本作は、神風動画らしい過剰なパワーから生み出される映像の魔術を楽しむ作品といえる。見る側はただただカッコ良い映像に見惚れていればいいし、それは観客を素に返らせないだけの力に満ちているということ。「バットマン」でありつつも日本的で、とにかく熱いのが本作「ニンジャバットマン」なのだ。
プロレビュアー
ライター 箭本 進一
ライター 箭本 進一
ストーリー
4.0
作画
5.0
キャラクター
4.0
音楽
4.0
オリジナリティ
4.5
演出
4.5
声優
4.5
4.5
満足度 4.5
いいね(0) 2023-12-31 14:16:53

ログイン/会員登録をしてコメントしよう!